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第四話 異質なネリア

ブックマークをありがとうございます。


今回で、つらいパートは終わりです。


それでは、どうぞ!

「はっ、はぁっ、はっ、はっ」



 走って、走って、走り続けた少女は、暗い暗い、岩だらけの場所で足を縺れさせて倒れ込む。



「うぐっ」



 こければ当然、痛い。しかし、それよりも、ネリアは心の方がボロボロだった。

 貴族でさえなくなれば、平民に生まれてさえいれば、ネリアはもっと幸せに暮らせたのではないかと、少しだけ……いや、とても、期待していたのだ。突然の婚約破棄に傷つかなかったわけではない。しかし、それでもすぐに行動に移せたのは、帰れば殺されるということだけでなく、ネリアが平民としての暮らしに強く希望を抱いていたからだ。

 儚い希望が崩れ去ったネリアは、その場に倒れて、起き上がる気力など、持ち合わせてはいなかった。街の中とは違い、毒に満ちた世界。ひんやりとした石だらけの地面の上で、ネリアは、瞳から溢れるものを堪えることもできず、ポロポロとその雫を落としていく。



「ど、して……?」



 その言葉は、何に向けられたものなのか……ただ、ネリアの表情はあまりにも悲壮だ。

 誰も訪れることのない外の世界。魔物に喰われるのが先か、毒に蝕まれて死ぬのが先かは分からないが、ネリアの運命は決まっているように思えた。



「……あ、れ……?」



 外の世界に満ちた毒は、急速に人間の体を蝕み、苦しみ悶えて死に絶える。それが、ネリアの知る常識であり、ネリアが居た国の常識だ。しかし、ネリアは外の世界に出て随分と長い時間を過ごしているものの、未だに、毒の影響を受けている様子はない。



「……死ねない、の……?」



 すでにどん底に居るネリアは、苦しもうがなんだろうが、全てを終わりにするつもりだったのかもしれない。しかし、ネリアの体は、転んだ際に負った傷以外、どこにも異常はない。……いや、一つだけ、異常はあった。



「どうして……」



 そう呟くネリアは、その瞳に何も映していない。絶望の闇は、ネリアの光を奪い取り、その瞳に何も残せぬようにしてしまっていた。しかし、それをネリアが自覚しているかどうかは怪しい。



「…………もう、疲れた、な……」



 苦しみ、傷つき、絶望したネリアには、もはや、この場所から動くという選択肢は残されていなかった。

 硬く冷たい地面に横たわるネリアは、そのまま、何も映さない瞳を閉じる。何も見たくない、聞きたくないとでもいうかのように、ネリアは深い、深い眠りに就いた。

次回から、ネリアちゃんの幸せの序章、かな?


それでは、また!

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