第三十四話 ご用命を聞くアルマ(アルマ視点)
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今回は、アルマ視点をチラッと。
それでは、どうぞ!
私の勘が告げている。姫君は、恋をしているのだと。
「姫君、ひとまずは、紅茶をどうぞ」
姫君のためにと、殿下が急遽取り寄せた桃色のティーカップ。中には、甘い香りのロイヤルミルクティーを用意している。
「あ、ありがとう、ございます」
そっとティーカップに口をつけた姫君は、やはり気を張っていたのか、ミルクティーのおかげで少しばかりリラックスした表情になった。
「姫君。これからは、何かをしたいのであれば、まずは私やアルスに聞いてみてください。もしかしたら、姫君の居た国とこちらの国では、常識が大きく異なるやもしれませんので」
「そう、ですね。分かりました。できるだけ、話すようにしてみます」
そう約束してくれる姫君だが、きっと、それでも漏れるものはあるだろう。姫君の中で常識となっていることが非常識かもしれないと考えることは、それなりに難しいことなのだから。
「ところで姫君。もし、殿下に会えずとも、その服だけでもほしいとのことでしたら、私、力の限り剥ぎ取って参りますが、いかが致しましょう?」
「ごふっ」
チマチマとミルクティーを飲む小動物……いえ、姫君に前置きを振ってみれば、姫君は盛大にむせてしまった。
「タイミングを間違えましたかね?」
「けほっ、ア、アルマさん? 女性が服を剥ぎ取るとか、それを欲しがるとかは、その……普通のこと、ですか?」
ただ、素晴らしいことに、姫君は自身の常識と私の発言を早速照らし合わせてくれたようで……こうなれば、私も全力でお答えしないといけないだろう。
「好きな異性の服を剥ぎ取るということと、好きな異性の服を欲しがることは普通のことですが……。ふむ、なるほど、姫君の懸念は、私が、殿下の服を剥ぎ取ることですね? ご心配なく、私は乳母ですので、そのような感情は一切存在いたしません」
「えっ、ふぇ?」
「いかがです? 何でしたら、殿下に頼んで殿下の下着なども持ってくるという手もございますが?」
「し、しし、下着!?」
「あぁ、やはり、殿下本人が居てほしいのですよね。ですが、今はどうしてもそれができない様子ですので……やはり、難しいでしょうか?」
顔を青くしたり赤くしたりする姫君に問いかけると、姫君は頭をユラユラさせながら『ひゃいっ』と返事をする。
「……承知いたしました。では、殿下の意識を一時的に奪って、姫君に捧げることと致しましょう」
「え? い、いや、しなくていいっ! しなくて良いですから!」
「大丈夫ですよ? 姫君が何をしようと、我々は見てみぬフリをしますので」
「何もしませんっ!!」
姫君にしては、珍しく必死に答える様子に、私は自分の表情が笑んでいることを自覚する。
(やはり、姫君は殿下のことがお好きのようですね)
となれば、殿下の尻をひっぱたいて、さっさと姫君に会えるように場を整えなければならない。それにはきっと、アルスの協力も必要なので、何としてでも姫君を安心させるべく行動させる所存だ。
「……では、妥協して、殿下の上着をお持ちいたしますね。それでは、失礼いたします」
「上着なら……ん? あれっ? ア、アルマさん?」
どうやら、上着でもおかしいということに姫君は気づいたようだが、こういう時はさっさと退散するに限る。そうして、私は、アルスを呼ぶために部屋の外へ出た。
……いやぁ、コメディさんが楽しく踊っておりますなぁ(笑)
ネリアちゃん、頑張って否定しないと、どんどん大変なことに……?
それでは、また!




