第三十三話 気遣うアルス(アルス視点)
ブックマークをありがとうございます。
んー、なんだか眠いですけど、どうにか更新。
それでは、どうぞ!
『殿下が、公務のため、しばらく姫様とお会いできないとのことです』と伝えた直後、姫様は、目で見て分かるほどに元気をなくしてしまった。
「そう、ですか……」
いつもは落ち着いた小さな声という印象のそれも、今は、悲しみに満ちているように思えてくる。
「姫様、きっと、殿下は何が何でも早くに公務を終わらせて、姫様に会いに来てくださいます。ですから、そう気を落とさないでください」
さり気なく殿下のハードルを上げながら、姫様を慰めれば、姫様はその顔をそっと上げて、小さく微笑む。
「大丈夫です。問題ありません」
……これまで、姫様と接してきて、姫様の『大丈夫』や『問題ない』といった言葉の類いが全く信用ならないことは、嫌という程に思い知った。姫様は、我慢をすることに慣れ過ぎていて、普通の人ならば問題があると判断することでも、じっと黙ったまま飲み込んでしまう。だから、私も叔母上も、姫様からそれを聞いたら、必ず現実と照らし合わせてどうなのかの確認を行ってきた。
(今回は、確認するまでもなく、大丈夫などではないですね)
いつもならば、問題があると分かった時点で、何かしらの対策をさり気なく行っていた。しかし、残念ながら、今回は殿下本人が居なければどうしようもないだろうと思われる。
(殿下の服でも……いや、それはさすがに違うな。では、殿下に似たぬいぐるみ……?)
本人が会えない代わりの代用品に思いを巡らせていれば、背後からポンと肩を叩かれる。
「叔母上?」
「今は、乳母のアルマです。さて、姫君におかれましては、いくつか、お尋ねしたいことがございます。無粋な男は排除いたしますので、どうか、話をさせてはいただけませんか?」
どういうつもりなのか、叔母上は、姫様と話がしたいとのたまう。とはいえ、叔母上と二人ならば、殿下が許さないということはない。私と姫様が二人などという状況であれば、私の首が物理的に飛ぶかもしれないが、同性であるということは、こういう時に強いものだと認識できる。
(叔母上が何かを感じているというのであれば、とりあえず、下がるべきか)
「え? いえ、あの……」
戸惑う姫様を前に、私はニコリと笑いかける。
「姫様、ちょうど、これから大切な用事がありますので、私はしばし席を外しますね? あぁ、その後にでも、護衛との顔合わせの時間を取っていただけたらと存じます」
姫様が私を除け者にするようで気に病んでいる可能性は高い。だからこそ、そんな理由で、私はその場を辞した。
アルマさんは、何を話すつもりでしょうかねぇ?
それでは、また!




