第三十話 寝耳に水なゼス(ゼス視点)
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今回は、波乱の予感?
それでは、どうぞ!
父上からの呼び出しとのことで向かってみれば、その父上は、何とも疲れたような表情を浮かべていた。傍らに居る母上は、そんな父上を困ったように見つめている。
「ゼス・ウォルフ、ただいま参りました」
「あぁ、すまない。楽にしてくれ。今は少し……いや、かなり頭の痛い問題が発生してな。お前に知らせないわけにはいかなくなった」
そんな父上の言葉に、俺は嫌な予感がした。しかし、それを表に出すわけにもいかない。
「どのようなことでしょうか?」
「……ルキウスと、ジェスが、行方知れずだ」
「…………」
しかし、さすがにその答えは予想していなかった。そして、確かに頭の痛い問題だとも思ってしまう。
「二人のどちらかを王位に担ぎ上げたい勢力か、王家を滅ぼそうとする勢力か……どちらにせよ、ろくなことにはなりませんね」
ルキウスもジェスも、それなりに武術の心得はある。だから、簡単に誘拐されるということはあり得ない。
「二人は、今日、牢屋に移される予定だった。とうぜん、万全の体制を整えての護送だったが、その途中で襲撃があったようだ」
「内通者に関しては、目処はついていますか?」
「あぁ、そいつは捕えている。だが、そいつの証言がどうにも要領を得なくてな。ゼスの意見が聞きたい」
そうして語られたのは、半身という概念がないはずの近衛の一人が、自らの半身のために行動したのだと告げているという話しだった。ウォルフ王家の傍系には決して受け継がれない半身という概念。それも、その近衛は昨年まで男爵という地位であり、今年に入って子爵になったばかりの、王家とは血の繋がりなどほとんどあり得ないはずの存在だ。
「…………父上は、いや、陛下はこうおっしゃりたいのですか? 半身を、番を偽ることのできる者が居るのではないかと」
そして、その偽りの半身によって、ルキウスやジェスも騙されているのではないかと。そこまで告げれば、父上は疲れたように肯定をする。
「やはり、その結論に至るであろうな。……では、ゼス。お前にもそれが当てはまるかもしれないということも分かるな?」
あくまでも、ルキウス達の問題、近衛の問題と思って意見を告げた俺は、そんな父上の言葉を信じられない思いで聞く。
「っ、彼女は本物ですっ! 偽物と疑うことはあり得ませんっ!!」
「しかし、それはルキウスやジェスとて同じだろう。よって、お前には半身への接触をしばし禁じる。期間は、この件が解決するまでだ」
「そんなっ!」
国王の決定となれば、王子でしかない俺が覆すことはできない。
「無論、手紙などのやり取りも禁止だ。ただ、アルスやアルマから報告を聞くくらいならば、問題なかろう」
そんな言葉を、俺は絶望的な気持ちで聞いていた。
よしよし、ゼスは絶望してますなっ。
え?
性格が悪い?
いやいや、絶望があるからこそ、希望は輝くものなんですよっ。
と、いうわけで、バリバリ働いてもらいましょうかね〜♪
それでは、また!




