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第三話 追われるネリア

ブックマークをありがとうございます!


今回は、まだまだ暗いお話ですが、あと一回、暗いお話が続いた後、ちゃんと幸せへ向けて動き出すので、もうちょっとお待ちくださいね?


それでは、どうぞ!

「おいっ、居たか?」


「いや、こっちには居ないっ」


「さっさと探すぞっ」



 男達は走り回り、たった一人の少女を探そうと血走った目で辺りを見回す。とても友好的には思えない彼らの目的は、貴族として生まれながら、力を持たない落ちこぼれを殺すこと。そして、そんな落ちこぼれことネリアは、どうしてこうなったのかと泣きそうになりながら、路地裏に積み上げられたゴミの中に紛れて必死に息を潜める。


 遡ること一時間前、城から追い出されたネリアは、常日頃からその顔を隠すために使っていたローブを御者から受け取り、そのまま、とにかく城下町まで走った。そして、ようやく辿り着いたその場所で、ネリアは何をするべきか必死に考えた末に、売り物になりそうな物を売って、ひとまずお金を得ることにした。純粋な貴族の令嬢であれば、そういったことまで考えられないものだが、ネリアは、万が一追い出された時のためにと、必死に知識を仕入れていたのだ。だから、大切なのはお金だと、そして、貴族の令嬢が纏うドレスや宝石はお金になるのだということも知っていたのだ。

 近くにあった服飾店らしき場所へ向かったネリアは、そこで、自らの服や靴を売りたいと申し出る。そして、代わりに動きやすい服や靴がほしいと。ただ、悲劇は、そこから始まった。



「ん? あんた、もしかして、落ちこぼれの剣姫ってやつか?」



 実を言うと、ネリアのようなモスグリーンの髪を持つ人間は、この国には一人として存在しない。そして、落ちこぼれの剣姫の名前は、平民の間でも有名だった。……力を持たない癖に、貴族として優遇されている我儘女として。


 当然、ネリアはそんな人間ではない。むしろ、力を持たないがゆえに差別され、虐待されてきた。食事だって、平民の方がよほど良いものを食べている。しかし、彼ら平民は、彼女の境遇など知るはずもなく。むしろ、嫌悪の象徴でしかなかった。だから……。



(どう、して……? 私、どうして、殺されかけなきゃ、いけないの?)



 ネリアは、店員の言葉に肯定も否定もしていない。しかし、あまりに目立つその髪は、ネリアが落ちこぼれの剣姫であることの証明であり、それを確認するや否や、刃物を向けられ、『お前に売るものなんかないっ』と追い出された。ただ、刃物を向けられたことで動転していたネリアは、その髪を、店の外で晒してしまい、他の人間達にすら追われるようになってしまっていた。



「はっ、はぁっ、はぁっ……」



 ただ、力を持たずに生まれただけ、そして、それがたまたま貴族の家だっただけで、なぜ、これほど迫害されなければならないのか。ネリアの瞳にはうっすらと涙が滲むが、泣いている暇などないことくらい、ネリア自身、理解できていた。しかし……。



(もう、私に残された道なんて、とっくに存在してなかった、のね……)



 街に滞在できない以上、ネリアは外に行くしかない。そして、その外は、毒に満ち、魔物が溢れる世界。本来であれば、守王の力で毒を退け、剣姫の力で魔物を切り裂かねば通行は不可能だ。当然、剣姫の能力を持たないネリアが生きていける空間ではなかった。



(でも、人に殺されるのは、嫌……)



 人に虐げられ、人に殺される人生など、ネリアは望んでいなかった。せめて、自分の力で未来を切り開こうとして、志半ばで死ぬというのであれば諦めもつくということだろうか。男達の声が聞こえなくなった途端、ネリアは、街の外に向けて走り出す。

 ネリアを見つけた誰かが、何かを叫んでいたが、ネリアにはもう聞こえない。守王の力で守られた街。貴族でもない限り、誰も外に出ることなどできないため、門に配置されるのは魔物の監視を担う者のみ。ネリアが向かう先は、それだけ、人間にとってはあり得ない世界。

 無骨な石造りの門。その先にあるかもしれない自由を目指した少女は、背後の有象無象の声を無視したまま……毒に満ち、魔物に満ちた世界へと飛び出した。

国中の人間に嫌われたネリアちゃんの命運やいかに!?


それでは、また!

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