第二十九話 暴走気味なゼス(ゼス視点)
ブックマークをありがとうございます。
今回は、暴走モードなゼスです(笑)
それでは、どうぞ!
ネリアさんの目を治すことは、恐らく、成功した。ちゃんと、俺達の姿を認識してそちらを向いて話してくれるので、それは確かだ。しかし……。
「ネリアさんが、俺を見てくれない……」
なぜか、ネリアさんは、俺からは視線を逸らす。もしや、何かしてしまったのだろうかと問いかけても、謙虚なネリアさんが馬鹿正直に答えてくれるわけもなく、首を横に振られるのみ。ならば、せめてしっかりと尽くそうとするものの、それはそれで、何故か逃げられている気がしないでもない。
「なぜだっ」
「叔母上、私、まさか殿下があそこまで鈍いとは思いませんでした」
「本当に、どうしてこうなったのでしょうね?」
背後でゴソゴソとアルスとアルマの二人が話していることは分かっているが、その内容は全く頭に入ってこない。半身に捨てられるかもしれないという危機を前に、そんなものに構ってはいられないのだ。
「プレゼントが足りないのか? それとも、俺の愛情表現がまだ足りない? いや、もしかしたら、ネリアさんが求めているものが別にあるのか?」
「暴走、してますね」
「そうですね。姫君が気の毒ではありますが、しばらくは問題ないでしょう」
現在の時刻は、ちょうど晩餐を終えた後。書類仕事は全て片付き、ネリアさんのところに向かおうとしたところ、すでにネリアさんは眠ってしまったという報告を受けて引き返したところだった。ただ、やはり、ネリアさん不足は深刻だ。せめて寝顔を見たいと思った俺をアルマが引っ張って引き離さなければ、きっと、俺はネリアさんの横でずっと、その寝顔を見ていられたはずだ。
「注意くらいはすべきでは?」
「言って聞くと思いますか? こういう時は、しばらく暴走させて、失敗したところで叩きのめすのがちょうど良いのです」
「……いつもながらに、スパルタですね」
ウォルフ王国で、半身のことを番と呼ぶこともあるのは、実は、こういった本能に支配される者が多く居たため、その様が獣のようだと揶揄された結果だったりする。しかし、昔はそうであっても、今は普通にどちらの言葉も違和感なく使われるようになっており、俺も、半身と言ってみたり、番と言ってみたりして、とにかく大切なのだと宣言し続けている気がする。
「失礼します。国王陛下がお呼びです」
だが、そんな風に幸せに半身のことを考えていられるのはそんな言葉が届くまでのことだった。
何の用事だろうかと向かった先で、俺は、ネリアさんの寝顔を見れなかったことを後悔することとなった。
暴走したら、きっと、ネリアちゃんの心臓か保ちませんよねぇ?
と、いうわけで、引き剥がしにかかろうかなぁと♪
え?
カップルを引き裂くな?
いやいや、これは、恋の試練ですよ!
それでは、また!




