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第二十二話 聞きたいゼス(ゼス視点)

ブックマークや評価をありがとうございます。


ゼス視点へと戻って、ネリアちゃんを見守ってもらいましょうかね?


それでは、どうぞ!

 刺客達を撃退した後に馬車へ戻ると、ネリアさんが馬車の扉が開く音にビクッと肩を鳴らしたところだった。



「すまない、ネリアさん。先に声をかければ良かったな」


「い、いえ、大丈夫、です」



 目が見えないということは、音に敏感になるということなのだと、俺はちゃんと知識としてあるはずなのに、中々、ネリアさんへの気遣いが足りないと思い知らされる。



「殿下、そもそも、レディが居る部屋へはノックをするものですよ?」


「部屋……あぁ、そうか。言われてみれば、馬車であっても例外ではないな」



 馬車で他の者と移動することはあれど、だいたいが同時に乗ったり降りたりを繰り返す。そして、そもそも、女性が乗る馬車に用があって声をかける際は、アルス達が取り次ぎをしてくれていた。だから、馬車の扉をノックする、というのが一瞬、浮かばなかったが、馬車の中を部屋と考えるのであれば当然だ。



「失礼します。殿下は戻られていますか?」


「えぇ、戻っていますよ。姫君、アルスも戻ったようです」


「はい」



 コクリとうなずくネリアさんはとても可愛らしく……いや、こんなことを考えている場合ではない。



「すまないが、少し、急がなければならない用事ができたらしくてな。ネリアさん、揺れが大きくなるが、もし、辛ければいつでも言ってほしい」


「はい、分かりました」



 俺の言葉に、アルマは何があったのかを問いたげにするものの、ネリアさんの前で問うことはしない。



「それでは、殿下。姫君をよろしくお願いします。私は、アルスと交代しますので」



 そう言って、アルマはアルスが居る外へと出る。アルマとアルスが交互に……しかし、時には魔法による自動操縦を行いながら、俺達の馬車は進んでいた。ただ、今回は、アルスに話を聞くためなのだろう。アルマが降りた後は、しばらく、アルスも戻らないはずだ。



「何も、変わりはないか?」


「はい、アルマさんのお話は、とても楽しかったです」



 愛しい愛しい半身が喜んでくれるのはとても嬉しい。しかし、次の瞬間には、ネリアさんの表情が曇る。



「ネリアさん?」


「? 何ですか?」



 ただ、どうやらそれは無意識のものらしく、ネリアさんは俺の声にキョトンとするだけだ。



(ネリアさんが虐待されていたのは、色々な情報を統合すれば明らかだ。本来なら、虐待した奴ら全員を処断したいところではあるが……オチ国なら、難しいだろうな)



 そもそも、オチ国には足を踏み入れることすら困難なほどの強い瘴気が満ちている。健常な人間がそこへ向かえば、瘴気に呑まれ、理性を蝕まれ、犯罪行為に手を出すこととなる。



(アルマが、何か聞き出せていると良いが……)



 異性よりも同性の方が話しやすいこともある。もちろん、俺自身が聞き出せるものなら聞きたいところだが、まだ、それは難しそうだ。



「……いつか、だな」


「??」



 疑問符を浮かべているネリアさんに、俺は何でもないと告げて、ウォルフ王国の話を始めた。

虐待されただろうとは掴んでいても、それ以上は不明……。


ネリアちゃんの口から、全てが語られる日は、まだまだ遠そうです。


それでは、また!

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