第二十一話 聞くネリア(ネリア視点)
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回もまだ、アルマとネリアちゃんの掛け合いです。
それでは、どうぞ!
アルマさんに聞く話は、どれもこれも、興味深いものだった。
お祭りという、多くの人が楽しく騒ぐ習慣だとか、食べ物を外で売る屋台という存在。それに、歴史的建造物を説明されながら見ていくという観光の仕方。観劇、なんてものの存在も、私には全く縁のないものだった。
閉じ込められていたせいか、それとも、オチ国にはそれらがないのかの判断はできなかったものの、アルマさんが語るそれは、信じられないほどに素晴らしいものばかり。しかし、だからこそ、私は思う。
(そんな素敵なところに、私が居たらいけないのでは……?)
落ちこぼれで、存在自体が邪魔だとされてきた私は、そこに入り込むべきではない。そんな思考が、どうしても頭の中から離れてくれない。
「姫君……?」
「あ、なんでも、ないです」
アルマさんが声をかけてきたため、そんな返事をしたものの、今思えば、『姫』なんて呼び名も、私には分不相応だ。
「あ、あの、アルマさん」
「はい、何でしょうか?」
「えっと、その、『姫』というのは止めてほしいんですけど……」
一応は、身分が公爵令嬢だった私は、それに相応しい中身さえ伴っていれば、『姫』と呼ばれても不思議ではない立場だ。しかし、実際は、落ちこぼれの穀潰し。とてもじゃないが、キラキラと可愛らしいイメージの姫とは合わない。
「いいえ、我々は、姫君の名前を呼ぶことはできませんので、どうか、このままで」
「え……?」
ただ、アルマさんは、なぜか、私の名前を呼べないと言ってきた。
「ですが、ゼス様は、呼んでくれますよ……?」
「はい、殿下のみ、特別に呼ぶことができるのです。ですので、他の方に自らの名前を呼ばせてはいけませんよ」
そう言われても、私には意味が分からない。
(ゼス様は良くて、他の人はダメ……?)
どんなに考えても、その意味は分からない。ただ、わりと勇気を持って提案したり問いかけたりしただけあって、これ以上の問答は勇気が足りない。
「……分かり、ました……」
だから、私はすぐに引き下がる。期待してはいけないけれど、嫌われたくはない。しつこく質問すれば嫌われると考えた私は、そうする以外に方法はないのだ。
「……ふむ、姫君は、もう少し、主張することを覚えなければなりませんね」
必要以上に口を開くな。主張をするな。そんな風に言われ続けていた私は、それとは真逆のことを言ったアルマさんに驚く。そして、それは私には、新手の虐めではないかと構えさせるのに十分な言葉だった。ただ……。
「では、まず手始めに、姫君の疑問を私に投げかけてみてください」
しかし、そう問われれば、応えないのも怒られる要因となってしまう。だから、私は、纏まらない思考の中、必死に先程覚えた疑問を告げた。
自己主張、難しいですよねぇ?
でも、それができないとこの先が大変ですし、頑張らないとっ。
それでは、また!