第二十話 説明を受けるネリア(ネリア視点)
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今回は、ネリアちゃんが大人しく色々と説明を受ける回。
それでは、どうぞ!
ウォルフ王国の王都、マビアに続く道は、たとえ辺境であろうとも整地されている。森の中であろうと、山の中であろうと、それなりに道は用意されている。
それというのも、古来より半身を求めるウォルフ王家にとって、移動する時間の短縮というのは何よりも重要なことだったからだ。早く移動できれば、早く半身を見つけられるかもしれない。ただそれだけのために、彼らは街道整備はもちろん、街と街を繋ぐ道を整地して、様々な場所への行き来を容易にすべく、尽力してきた。
「ですから、基本的にウォルフ王国において馬車で行けない場所というものは存在しません」
そう教えてくれるのは、アルマさん。旅を始める時、アルマさんが世話係としてついてくれるという言葉に、私はとても安心したことを覚えている。何せ、目が見えない私は、自分のことさえまともにできない。それなのに、ゼス様もアルスさんも男の人で、着替えなどで頼るわけにはいかないという状況だったのだ。宿屋に居る間は、宿の女性に頼んで着替えやら何やらをしてもらったものの、きっと、見苦しい体を見せてしまったであろうことを思えば、この目さえ見えていれば、と思ってしまう。
「それは、すごいですね。じゃあ、皆、旅がし放題です?」
「旅……えぇ、それもありますが、観光を楽しむものは旅行というのですよ?」
「『かんこう』? 『りょこう』? それは、どういうものなんですか?」
ずっと閉じこもっていた私は、世間知らずだ。しかし、それは悲しいことではなく、むしろ、新たなことに触れられる喜びとなっていた。
「なるほど、そちらは移動だけでも大変なことだと伺っていましたが、そもそも観光や旅行という概念すらないのですね」
興味深そうにしながらも、アルマさんは様々なことを教えてくれる。私を気遣ってなのか、馬車は度々止まって、休憩の時間が入る。その時、ゼス様が居ればゼス様と一緒に居ることになるものの、ゼス様もアルスさんもどちらも居ないことも多く、そういった時は、アルマさんに様々なことを教えてもらっている。
「姫君は、オチ国ではどのような生活を?」
ただ、時々、こういった答えにくい質問が来る時、どうしたら良いのか分からなくなってしまう。
「えっ、と……」
アルマさんの問いに答えるなら、閉じ込められて、虐待されて、時々出されては嘲笑の的にされていました、と言うのが正しいのだろうが、それを言う勇気は全くない。
旅の初日、私の着替えを手伝うと言ったアルマさんに、私はあまり見られたくないなと思いながらも、目が見えなくて、自分で着替えることすらできないせいで、傷だらけの体を晒さざるを得なかった。その時、目が見えないながらも、アルマさんが恐ろしい気配を漂わせているのを感じたので、もう一度、あれを味わうのは嫌だったのだ。
(だって、汚いって、思われただろうから……)
もしかしたら、今も、イヤイヤ私の世話をしてくれているのかもしれないアルマさんに、そういったことを話すつもりはない。
「出過ぎたことを申しましたね。では、ウォルフ王国について、もっと説明して参りましょうか」
「……お願いします」
イヤイヤだろうと、私を気遣うアルマさんの言葉に甘える私は、とても、嫌な人間だ。
(ゼス様にも、嫌われちゃう、かなぁ?)
それを思えば、ズキッと胸に痛みが走る。けれど、元々、これ以上期待してはいけないのだから、我慢しなくてはならない。それが、私に許された行動なのだから……。
そう、落ち込む私の姿に、アルマさんが険しい視線を向けていたことなど、目の見えない私は、気づきもしなかった。
うーん、次回もまだ、色々な説明を受ける回かも?
それでは、また!