第十四話 温もりに包まれるネリア(ネリア視点)
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今回は、ひとつまみくらいのお砂糖を投入(笑)
それでは、どうぞ!
ここは、どこかの宿屋であり、私が居た国に近い場所に存在するのだと教わりながら、私は、ゼス様の手をしっかり握る。
何も見えない私は、誰かが側に居てくれるという実感がどうしてもほしくて、ゼス様に手に触れていても良いか尋ねたのだ。
「ネリアさんは、オチ国の中でも特殊な存在だったのではないか?」
「っ……」
今居る場所にどうやって来たのかを話してもらっている途中に挟まれた疑問。それは、落ちこぼれの剣姫であったことを指摘する内容に思えて、思わずビクリと震えてしまう。
「す、すまない。言いたくないことなら良いんだ」
私はいったい、どんな表情をしていたのだろう。ゼス様の慌てた様子に、ただただ、申し訳なさだけが募る。けれど、私の境遇を話すには、まだ、勇気が足りない。それに、ゼス様が信頼できる相手なのかも分からない。
(もし、落ちこぼれだと知られたら、また、殺されそうになる、のかな……?)
家族に蔑まれたことも、婚約を破棄させられたことも、平民にすら殺されそうになったことも、全てが、私にとって消してしまいたいほどに辛い記憶。
その上、もしも、ゼス様にまで嫌われたら……。そう考えるだけで、死にたくなってしまう。
「あ、あぁっ、本当に、すまない! 言わなくて良い! 俺も、聞かないからっ、だから、ほらっ、そんな、絶望したような目で泣かないでくれっ」
(私……泣いて、る……?)
涙を流している自覚はなかった。そして、私などよりも、ゼス様の方が涙声になっている気がする。
「すまない。ごめん。何も、聞かないから。大丈夫。ここには、ネリアさんを傷つけるものは、何もないからっ」
遠慮がちに、私の涙を拭うような感覚に、きっとそれは、ハンカチではないだろうかと予想を立てる。ただ、泣いている自覚がないせいで、涙の止め方が分からない。
「くっ……こういう時は、アルスが側に居てほしかったが……その……抱き締めるぞ」
「ぇ……?」
分からないままに何もできないでいると、なぜか、温かいものに包まれる感触に陥る。しかも、何の匂いかは分からないが、とても、いい匂いがする。
ドクドクと少し早く脈打つ鼓動を感じたところで、私は、ぼんやりと聞いていた言葉を頭の中で再生することに成功する。
『抱き締めるぞ』
「…………っ!???!?」
先ほどとは別の意味で混乱に陥った私は、アワアワとしながらも、どこに何があるか分からないせいで、抵抗することさえできない。
「ゼ、ゼス、様!?」
「ん? 何だ?」
しかも、なぜか、ゼス様の声が甘く聞こえる。
(不味い。耳がおかしくなっちゃった……)
ゼス様の声に、何かを伝えようとしていたはずが、それすらも分からなくなってしまう。
ゼス様の腕から解放されたのは、それからしばらくして、アルスさんが来てからだった。
まだまだ恋愛に発展してはいないネリアちゃんですが、時間の問題ですねっ。
それでは、また!




