第十二話 知りたいゼス(ゼス視点)
ブックマークをありがとうございます。
今回は、ネリアちゃんが目覚めた後のお話です。
それでは、どうぞ!
半身を街に連れて行き、医師の診察を受けたのは深夜といっても差し支えのない時間帯。突然呼び出してしまった医師に申し訳ないという気持ちを抱きつつも、それでも半身を診察してほしいと頼み、診てもらった結果……。
「栄養失調に過労、後は外傷が多々見受けられるとのことでしたが、彼女の看病は誰か人を雇いますか?」
「いや、本来は女性をつけるべきだろうが、選別の時間もない。ここは、俺がどうにかする」
「……獣にならないでくださいよ?」
「なるかっ!!」
そうして二日ほど街の宿で、ただひたすら甲斐甲斐しく半身の世話をして……彼女が目を覚ました瞬間、その美しいオレンジの瞳に感動を覚えた。悔やまれるのは、ここまで追い込まれた半身を、俺がずっと見つけられなかったということだ。もっと早くに見つけることができていれば、彼女はこんなにも弱ることはなかった。そして……。
「目が、見えない、か……」
原因は、やはり精神的なものらしい。そして、警戒をしているのか、彼女は一言も声を出そうとはしなかった。だから、彼女の名前も、結局聞けず仕舞いだ。
「殿下、観測者様がお見えです」
「あぁ、今行く」
半身を探している間は全く見つけられなかった観測者。しかし、その観測者は、彼女を保護した翌日、自ら訪ねてきた。彼女が目覚めれば、話さなければならないことがあるとだけ告げて、目覚めた頃に、また来ると言い置いて去っていった。
宿は、一応二部屋借りており、その内の一部屋に、俺は一人で向かう。アルスは当然、半身の護衛だ。アルス自身は、俺が一人で向かうことを渋っていたが、俺自身よりも半身の方が大事なのだから、どうにか聞き分けてもらったところだ。
「大したもてなしもできず、申し訳ない。改めて、ご挨拶させていただきます。私は、ゼス・ウォルフ。ウォルフ王国の第一王子です」
半身が居ない方の部屋に先に案内してもらっていた彼に向かって、俺は頭を下げる。観測者は、王族などよりも上位の立場に位置する存在なのだから、それは当然のことだった。
黒の地面に付きそうなほどに長い髪を三つ編みにして、光の加減で七色に輝く瞳を持つ存在。顔立ちは整っているが、中性的で、男なのか女なのかも分からない。
アルスが出したであろうお茶や菓子に手をつけた様子もなく、感情を映さない瞳が俺を捉える。
「よい。我は観測者。ただ、真実を告げるのみ。ただ、あるべき姿へ戻すのみ」
男女の声が二重に聞こえるような観測者の声を聞いて、俺は本能的に鳥肌を立てる。しかし、それでも事は半身に関してだ。怯むわけにはいかない。
「それでは、私に告げる内容を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
俺達の常識が通用しない異質な存在。ソレに対して、俺は問いかけ、半身の真実の欠片を掴むこととなった。
観測者……ちょいと謎な存在ですよね。
それでは、また!




