第十一話 光を見つけるゼス(ゼス視点)
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よし、どうにか二回目の更新間に合いました。
それでは、どうぞ!
意識を失う半身を前に、しばし呆然としていた俺は、アルスの声で我に返る。
「で、殿下、見つかりましたか……?」
どうにか走ってきたアルスが息を切らせて問いかける。しかし、俺は、現状を確認して、それどころではないと気づく。
「っ、俺の半身が、倒れているんだっ。早くっ、医者にっ」
素早く脈や呼吸を確認して、抱き上げるべきか一瞬悩んで、そのままにする。万が一、頭を打っていた場合、動かすのは危険だ。
「っ、呼ぶには距離があります。ですので、私が軽く診察を致します」
「頼むっ」
言われてみれば、アルスには簡単な医療の心得があったと思い出し、それすらも思い出せないほどに動揺していた自分を自覚する。
「…………動かしても問題はなさそうです。詳しくは分かりませんが、意識を失っているというより、眠っているようでもありますね」
「こんな場所で、か……?」
よくよく見てみれば、彼女は、大きな怪我こそしていないものの、切り傷、擦り傷、打撲がいくつも見られる。涙の跡も見られ、確実に訳ありであることが窺えた。
「とにかく、街に行きましょう。医者を呼ぶにしても、ここでは無理です」
「分かった!」
残念ながら、馬車で来たわけではない俺達。とはいえ、女性一人をどうにか連れていくことは可能だ。
「先行して医者を頼む」
「はいっ!」
アルスが駆け戻るのを横目に、俺はまだ名前も知らない半身を抱きかかえて慎重に走り出す。馬が居るのは、岩山の麓だ。そこまで遠くはないはずなのに、半身の怪我が心配で、一歩一歩すらもが長く感じられてしまう。
「必ず、助ける。あなたを取り巻くものが何であろうとも……」
最後の一日、アルス以外はとうに見放した俺の元に現れた光。彼女を失うわけにはいかない。彼女のためであれば、俺はどんなことだってしてみせるだろう。
しかし、俺はまだ知らない。彼女が、オチ国から来た人間であることを。そして、彼女が居なくなったことによって、オチ国が滅びの一途を辿ることを。まだ、彼女の力を知らない俺は、ただただ、彼女のことだけを見ていた。
次回から、ネリアちゃんが起きている状態でのお話になります。
それでは、また!




