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第十話 出会ったゼス(ゼス視点)

ブックマークをありがとうございます。


昨日、更新できなかった分、今日は二回更新する予定です(できるかどうか、まだ不明ですが……)


それでは、どうぞ!

 甘く、芳しい香り。この岩山に花など咲いていないと思っていたが、こんなにも強い香りはいったいどこからするのだろうかと、俺は周囲をキョロキョロと見渡してみる。



「殿下?」


「アルス、ここら辺に、花畑でもあるのか? それとも、香りの強い花があるとか……」


「花、ですか?」


「あぁ、今も、甘い香りがしているだろう?」


「香り……」



 怪訝な表情を浮かべているアルスは、クンクンと辺りの匂いを嗅いでいるものの、そのまま首をかしげる。



「申し訳ありません。私には、その香りが分からないので……」


「は? いや、かなり強い香りだぞ? ……風邪でも引いているのか?」


「強い香り……? っ、まさかっ! 殿下っ、急いで探しますよっ!」


「はっ?」



 そう言うや否や、アルスは普段とは違い、強引に俺の手を引いて、真剣な表情でどこから匂いが漂っているのか説明してくださいと脅し……いやいや、問いかけてくる。



「た、多分、あっちだと思うが……」


「分かりました。では、行きましょう!」



 いったい何があって、アルスがこんなにも取り乱しているのか分からなかった俺は、アルスの剣幕を前に言われるがまま匂いの方角へと進み始めて……どんどん強くなる香りに、ようやく、その正体に思い至る。



(まさか……半身の、番の、香り……?)



 そう、思考した瞬間、ドクリと全身の血が沸き立つような感覚に襲われる。



「半身、俺の……番……」



 全ての感覚が鋭敏になり、ただ、ひたすらに、まだ見ぬ半身を見つけるためだけに、身体がひとりでに動き出す。



「殿下!?」



 後方で、アルスが俺を呼んでいるが、それも全く気にならない。ただ、ただ、愛しい半身の手を掴むために、足場の悪い岩山を駆け抜ける。そして……。



「あ、あぁ……」



 モスグリーンの美しい髪を持つ少女が、そこに倒れていた。意識を失っている様子の彼女は、少し力を入れてしまえば折れてしまいそうなほどに細く、頼りない。



「見つけ、た……」



 彼女の姿を目に焼き付けた瞬間、ガチンっと何か大切なものが俺の中ではまった気がした。

二回目は23時予定です。


それでは、また!

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