表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「流石に草」な訳がない  作者: ソーダ
2/2

2,草不可避

俺は雑草に転生してしまった。これは悪い夢ではない。本当のことだ。

少し時間が経って気持ちは落ち着いてきた。


どうしてこうなってしまったのか。あの時何があったのか。


急に風が吹き、苦しくなったことは覚えている。

しかし、あの風が直接俺の身体に影響を与えたとは考えにくい。


となると風に乗った「何か」が原因なのか。

一つだけ思い当たるものはある。それは紫色をした除草剤だ。

あの除草剤は見た目や雰囲気もあの世界のものとはまるで思えない。

あれが口や鼻から体に入り、毒的なものが全身に回ってしまったのか。

それであの苦しさが生まれたと考えると確かにそうかもしれない。


そう考えるとあのおじいさんも怪しくなってくる。

お金持ちだから10万円は簡単に出せるというのはあるのかもしれない。

だけど除草作業は普通なら業者とかに頼むようなことだ。

それに行った俺も俺だが、一般人に頼むようなものではない。

俺って10万円という文字に惹きつけられてしまうようなチョロい男なんだな。


それともこれが運命だったのか………



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



あれから長い時間が経った。

この世界について分かったことがいくつかある。


一つ目は、この世界には昼と夜が存在すること。

昼は太陽のようなものが出ていて、俺たち草々をギンギンと照らしている。しかし、夜は月のようなものは見当たらず、もちろん周りに明かりなんてものもないので夜は真っ暗だ。


二つ目は、虫や鳥がいること。

虫はそこら辺にいて、鳥も空を飛んでいる。見た目は地球とそんなに変わっている点はない。人間のときにはめちゃくちゃ嫌いだった虫も今では愛おしく感じる。


三つ目は、あくまでこれは俺の予想だが、「人間」がいるということ。

実際に見た訳じゃないが、なんとなくそんな気がする。虫や鳥がいるように生き物が存在しているので、普通にあり得ることだ。ただ、俺はなぜか「人間」という言葉が頭をよぎる時、とても嫌で不安な気持ちになる。

前世の人間としての悔いが残っているのか、それとも「人間」が怖いという草としての本能みたいなものから生まれたものなのかは分からないけど、嫌なんだ。


これらのことは地球とよく似ている。人間がいるかどうかは不確かだが、この世界は地球みたいな世界なのかな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



あれからまた時間が経った。

感じていることは一つだけある。それは何もすることがないこと、つまり「暇」だ。


前世では食っちゃ寝て、食っちゃ寝ての生活を繰り返していた。これでも十分暇しているのだが、今の俺には当然スマホがあるわけでもなく、ましてや何かを食べることや寝ることも出来ない。


やっている事といってもそこら中にいる虫をのほほんと観察しているくらいだ。

正直罰を受けているような感覚だ。俺、前世で何かやらかしてましたか?



そんな事を考えていた時、突然平和という文字は俺の中から姿を消していく。



突然ものすごく嫌な予感を感じる。太陽がギンギンと俺を照らすが、この不安は消える気配はない。

何が起こるのかは分からないが、草としての本能が嫌がっているものが近づいてきている気がする。


俺がそれに怯えながら周りを探すと、視界の奥に何かが映る。それはこちらへ近づいてくる。


来ないでと願っても、それは歩みを止めない。


近づいてくるにつれ、それが何なのかがはっきりしてくる。


それは、やはり「人間」だ。その人間は何かを持っているようだ。


その姿は鮮明なものへと変わっていく。


そしてはっとした。もしかしてと思っていたがその人間はあのおじいさんだったのだ。

おじいさんが持っていたのは見覚えのある紫色をした除草剤だ。


動きたくても動けない、逃げたくても逃げれない。どうすることも出来ない。


間もなくおじいさんは俺の前まで来た。そして、何のためらいもなく紫色の除草剤を俺に向かってふりまく。その顔には笑みが浮かんでいた。


とたんに苦しさが俺を襲う。あの時の苦しさと同じだ。


また俺は死ぬのか。死ぬなんて嫌だ。死にたくない!死んでたまるか!絶対に生きてやる!



「「「死にたくない!!!」」」



そう何度も心のなかで叫んだ。何度も何度も叫んだ。

しかし、俺の意識はもうろうとし始める。でも俺は叫び続けた。来るはずもない助けを求めて。どれだけ苦しくても叫び続けた。ついに俺の意識が途切れそうになったとき、




《 魂の叫びが一定値に到達しました。スキル「雑草魂」を入手しました。 》




「何か」が俺にそう伝えた。


第二話です。

感想やこういう表現の方がいい、などのアドバイスを頂けると嬉しいです。

また、評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】をタップして頂ければと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ