3.常識的な転入生
本日3話目です。
「ねえ咲良!聞いた?今日転入生が来るんだって!!なんか帰国子女?ってやつで入学式とかに間に合わなかったとか!」
「そうなの?帰国子女ってことは女の子なのかな?」
「いんや、男の子って聞いたよ~。咲良のガードを崩すかもよ?」
朝から騒がしい、天真爛漫な茶髪の少女は西宮楓。咲良と中学校から仲がいい、親友と言っても過言ではない少女だ。あまり話さなかった咲良に根気よく話しかけ、仲良くなった。
「みんな席につけ!ホームルームを始めるぞ!と行きたいところだが、今日は転入生がいる。家の都合で入学式に間に合わずに一か月遅れになったそうだ。」
教室に入ってきた担任である石井聡がそういった瞬間、教室が歓声であふれた。
「先生!女の子ですか!!可愛いですか!?」
「何を期待しているのかしらんが、男だ。」
「ほら、男の子だって咲良!情報通りでしょ!」
「静かにしろ、紹介できないだろうが。質問タイムがなくなるぞ~?」
「「「はーい」」」
「よし。入ってこい。」
「失礼します。」
「「「おぉ……」」」
「今日から転入してきた工藤琉人です。小学校までここの近くに通っていましたが、家の都合で中学校生活3年間をイギリスで過ごしていました。本当は入学式から来るつもりでしたが、少し遅れました。これからよろしくお願いします。」
「はい、琉人はいわゆる帰国子女ってやつだ。男だけど。仲良くしろよ~?」
その瞬間、笑いが広がった。そして、質問タイムに入る。
「はいはい!工藤くんは彼女とかいますか!」
「彼女はいないぞ。もしいたら国を超えた遠距離恋愛だけどな。」
「た、たしかに!!」
「はいはーい!趣味は何ですか!!」
「ん~、あっちで親が夜いないことが多かったから、晩飯作っていたらいつの間にかはまってそれが趣味になっているかな。」
「えー!料理できるんだ!すごい!」
「日本に戻ったのは俺一人で、今は一人暮らしだから基本的に作ってるぞ。」
「はい!工藤って小学校のころ竜人って呼ばれていましたか!」
「……あぁっ?ってお前晃か!?お前ここの高校だったのかよ!」
「やっぱり琉人か!いっや~、三年で戻ってくるって言ってたけどここに入ってくるとは思っていなかったぞ?」
そこにいたのは、小学校の頃よく遊んだ瀬乃晃だった。つい話し込みそうになるが、先生から待ったがかかる。
「はい、感動の再会は後にしとけ。そろそろホームルーム終わるぞ~。琉人は窓側の………………晃の後ろだな……はぁ……。」
「ちょ!先生!なんでため息つくんですか!」
そういわれて琉人は席に移動する。晃の後ろだが、ここしかないのなら仕方がないだろう。甘んじて受け入れよう……。
「へぇ、ここの空席ってこのためにあったんだ~。隣の席の西宮楓だよ!気軽に楓でもにっしーとでも呼んでね!」
「じゃあ普通に楓って呼ぶね。よろしくな。」
「おっ、やるね~。そう思わない?咲良?…………咲良~?ありゃ、なんか固まってるわ。ま、よろしくね~。」
咲良は突然の出来事に動揺していた。楓の呼びかけに気づかないほどに。
(え、りゅうくんの高校ってここだったの?!しかも同じクラスじゃん!!え、気づいたかな?いや気づかないよね!どうしよう。え、どうしよう。っていうかこの前すれ違ったの、りゅうくんであたってたじゃん!)
そう、この前琉人がすれ違った茶髪の少女は咲良だ。咲良は、「あれ?りゅうくん?」と思ったが、居るとしたら自分と同じ高校なはずであり、その名前がないことはすでに確認していた。だから、途中から来るだなんて考えてもみなかったのである。
☆★☆
「おい琉人!一緒に飯食おうぜ!この学校のこと教えてやるよ!ってことで食堂行くぞ!」
休み時間の度に起きた、怒涛の質問タイムが過ぎ去った後である昼休みに、晃に連れられて食堂にやってきた。
「うわっ、弁当自作かよ。っと、この学校についてだったな。まず、この学校には二大派閥がある。天真爛漫な美少女である西宮楓を太陽の女神と擁する太陽の派閥。ここまではいいか?」
「あ……あぁ…………。」
この学校のこととか言うからどんな話かと思えば…………まぁ、あの容姿と性格なら派閥ができても納得……なのか……?しかし、直後晃が真剣な表情へと変わる。次が本命なのだろうか?
「そして問題がもう一つの派閥なんだが、基本無表情で時々見られる笑みで魅了しているといわれている東雲咲良だ。」
「咲良もこの学校だったのかよ!って、はぁ?咲良が無表情?冗談だろ?花が咲くような笑顔で魅了しているってなら分かるかもしれないが……。」
「いや、まじだ。咲良もお前と同じように県外の中学に行っただろ?そこで何があったかは分からないが…………今の咲良はあまり表情を変えることがない……。」
あの咲良が笑っていないとはな……。
「なるほど……。で、咲良はどこのクラスにいるんだ?」
「いや、俺たちと同じクラスだ。」
咲良がクラスにいたか……?いや、いたとしたら琉人は自分があのシルバーブロンドの髪を見逃すはずがないと考える。
「休みだったわけじゃないぞ?お前の席の二つ隣だ。気づかなかったのもしょうがないとおもうぞ?咲良は髪を染めている。俺も名前を聞くまでは気づかなかったからな。」
…………髪を染めているってことはまさか……髪色をバカにされたのか!?琉人は、自分が留学中に何があったのかと気になっていた。
「そして、昔の咲良を知っているからわかるが咲良は愛想笑いだ。」
「おいおい、あの笑顔が見れないっていうのかよ……。」
あの咲良が笑わないとなるとよっぽどのことがあったんだろうと推測できる。…………何とかしてやりたいと考えるが、一体どんな手を使えばいいのだろうか……。
「そうなんだよ……。そこでだ!琉人、お前は咲良の笑顔を取り戻してこい!今の印象のせいで月の女神って呼ばれていて、月の派閥ってのができているんだよ……。あいつは月じゃなく太陽って感じだろ?まぁ、もしあの笑顔をばらまきだしたら太陽の女神が二人になるがな。」
「咲良は俺の幼馴染だからな。とりあえず話してみるよ。」
「頼んだぞ?」
あの咲良に何があったのかはわからないし、何とかしたいが…………咲良と話してみないことには始まらない。琉人は、咲良に接触して話を聞くことに決めた。
晃はお助けキャラです。ゲームでどこでそんな情報を知ったんだ!って感じの助言をしてくるポジションです。
書き次第更新したいと思います。
もう1作品もよろしくお願いします。