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19.エピローグ

「今日は一般公開だー!楽しめよー!」


 昨日と同じような始まりをみせた文化祭だが、今日は昨日と違って一般の人もたくさん来るだろう。しかし、今日は実行委員会の仕事が多いため俺と咲良はほとんどクラスのほうに顔は出さない。


「まずはミスコンミスターコンか。咲良、手分けして写真を貼ろうぜ」

「そうだね!私は最初に投票箱を用意しておくよ!」


 これに応募するだけあってどの学年の人も可愛かったり格好良かったりする。見たところクラスの出し物と同じ衣装で撮影をしている人が多いようだ。

 あれ?これはうちのクラスと同じメイド服のミスター…晃かよ!


「咲良、晃がメイド服でミスターに応募しているぞ」

「え?本当だ!って、あれ?これは楓ちゃん?」

「ん?次は咲良も入っているぞ?応募したのか?」

「ええ!?してないしてない!私は応募してないよ!」

「そうなのか?なら外しておくか?」

「うーん…まぁ入れておいてもいいかな…」

「良いのか?」

「うん。…今日で変わるし…」

「ん?…まぁそういうことなら、そのまま貼り付けておくぞ」


 咲良が後半に言っていたことはよくわからなかったが見るからに悪いことではないだろう。投票待ちをしている人もいるみたいだから早いところ終わらせてしまおう。


「次は伝えたいことの準備か。咲良、向かおうぜ」

「う、うん。用事が入っているから先に行っていてくれる?」

「そうか?じゃあ先に行っているぞ」


 そう言って俺は先に移動したが、咲良と合流することはなかった。その理由が分かったのは午後だった。伝えたいことで暴露話など、色々な話を終えて最後の人物になった時、彼女は現れた。


「そして、最後の人物は…おおっと!なんと!この方です!1年A組!東雲咲良さん!」

「「「おおおーー!」」」


 各地で歓声が上がる。今日着ていたメイド服のままの咲良が居た。姿が見えた途端、辺りは静かになり次第にまたざわざわし始めた。


「今回のテーマって伝えたいことだよな…?まさか好きなやつが…?」

「いやまて、さっきも教頭がズラだって告白したやつもいただろ…?」

「んなこと咲良さんが言うわけないじゃないか!」

「静かにしてください!東雲咲良さん、お願いします!」


 再び辺りは静寂に包まれる。そして、咲良は喋りはじめた。


「1年A組の東雲咲良です。今日は皆さんに知ってもらいたい事があってここに立ちました。」


 そう言って咲良は自然な動作で被っていた帽子を外した。


「「「なっ…。」」」


 はらりと肩を流れて行く美しいシルバーブロンドの髪。そこには色を抜いたり染めたような不自然さは無く、色白で碧眼の咲良には似合っていて…いや、似合いすぎていてまるで女神が降臨したかのような神々しさがあった。

 辺りを包む静寂、この一瞬が何時間もあるように感じた。ところどころで「綺麗…」という声が聞こえてくる。


「私のこの髪は、このシルバーブロンドの髪は地毛です。イギリス人の母と同じ色です。つまり、私はハーフです。」

「私は、母と同じ色のこの髪色と眼の色が好きでした。幼馴染の男の子も、綺麗だって褒めてくれて私の自慢の一つでした。でも…中学生の時に染めました。」

「なんでだろう…。」

「「「幼馴染…。」」」


 幼馴染に反応して、クラスの大半がこっちを見てきた。頷いておこう…。


「私は、中学生の時に髪色で魔女と呼ばれていじめられました。転校してきたばかりの頃は綺麗な髪と褒めてくれた友達…いえ、友達だと思っていた人もみんな魔女だと言いました。そしてついに、学校に行こうとすると胸が苦しくなって…転校しました。」

「「「……。」」」


 思っていたより暗い話に皆、固唾を飲んで見守っている。


「転校して髪を染めても、大丈夫だと思っても、また言われるのではないかと考えてしまい、人と関わるのが怖くなって1人で過ごしていました。でも、1人だけ…1人だけ友達が、今では親友ができました。楓ちゃんです」


 俺に向いていた注目も纏めて楓に向かった。少し恥ずかしそうにしている。


「最初は、1人になってるのになんで関わってくるんだろう。邪魔したいのかな?もしかして全員と友達になるみたいな目標の痛い子なの?って、思ってました。」

「咲良ちゃんそんなこと思ってたの!?知らなかったよ!」


 ところどころで笑い声が聞こえる。暗い雰囲気も消えてきて、でも咲良は注目を集めて離さない。


「うん。でも、今では大切な親友。」

「えへへ~。」

「「「~~~!」」」


 あ、楓の緩んだ表情を見て周りにいたやつらが気持ち悪いことになってる…。あ、連行されていった。


「そして、この学校に入学して1カ月経った頃、転入生がやってきました。外国からの帰国子女って聞いて違和感を覚えて、名前を聞いて疑惑になって、顔を見て確信しました。私の幼馴染の工藤琉人くんだって。」


 あちゃー…名前が出た瞬間めちゃくちゃこっち見てるよ…やばい睨んでるやつもいるし…おい!今フラグだとかテンプレだとか言ったやつ誰だよ!とりあえず手を振って…あっごめんて、そんな睨まないで…。


「最初は話をするのが怖かった、もしかしたら覚えているのは私だけで忘れられているかも…。もし覚えていても、綺麗だって言ってくれた髪は染まっている…。そんな不安がいっぱいで、私は彼から逃げました。」


 咲良のやつ、そんなこと思っていたのか…。忘れるわけも、そんなこと思うはずも無いってのに…。


「でも!そんなの、ただの私の想像でした。せっかく逃げたのに偶然スーパーで会って、彼の家に行って全部話して…彼はただの私の味方で…昔から何一つ変わっていませんでした」


  家の部分ですげえ睨んでたやつがやべえ顔になってるよ…ハロー…ヒッ!睨みで人殺せるんとちゃう…?あ、周りに気づかれた。お、スリッパで叩かれたってかスリッパどこから出てきた…?あー、連れていかれたぞ…こっちにめっちゃお辞儀してきてる…。


「その時私は決意しました。また元のシルバーブロンドの髪が好きになれたら、この髪に戻せたら…また、自然に笑えるようになったら…その時は彼に昔から変わらないこの気持ちを伝えようと。」

「…え?」


 一瞬何言っているのかわからなくなった。いや、でも…。


「それからの日々は劇的に変わりました。突然楓ちゃん達を巻き込んで遊園地に行ったり、髪色は個性だと言いながら秋葉原を連れ回されたりメイド喫茶に行ったり…。そこで、気づいたんです。髪の色なんて髪の色なんて、些細なことだったんだなって。」


 あ、敵だらけだったけど良くやったみたいな目線が増えてきた…良くやったこの前までの俺…!


「そして私は今日、染めていた色を落として学校に来ました。やっと決心がついたから…やっと、自分に自信が持てたから、これは私の武器だって誇れるようになったから!だから伝えます!」

「くるか…?」

「絶対告白よ…これ…!」

「工藤琉人くん…違う…りゅうくん!ずっと、昔から!留学しちゃう前からずっと好きです!付き合ってください!」

「「「キャーーー!!」」」

「「「ぎゃああああ……」」」


 周りが一気に騒がしくなる。


「静かに!工藤琉人くん!返事をお願いします!」


 あ、司会さん居たんだ…完全に空気だったよね…俺と変わらないかな?

 いや、まあそうだよね…うん。よし!


「咲良!俺は、初めて会ってから留学する時まではただの妹みたいなものだと思っていた。いつもちょこちょこと俺についてきてるただの妹だと。」


 ただ家が違うだけの妹。そう思っていた。だから昔は何を言われてもただただ流していた。でも——

「——でも、3年間離れて、再会して分かった。髪は染めていたけれど、昔より女っぽくなっていて、可愛くなっていて、妹みたいなものだと思っていたのに…。不安そうな顔、安心した顔、昔はいつも見せていたけど今ではレアになった時々見せる花が咲いたような笑顔。色々な咲良を見ていたら次第に気持ちは変わっていったんだ!」


 色々な咲良を見て、気持ちは揺らいでいった。友達の、家族への好きから…恋愛の好きに。ここまで言ったんだ。言っちまおう。


「咲良!俺も咲良が好きだ!答えはイエスだ!本当は、この文化祭が終わったら言うつもりだったんだ!」

「「「きゃーーー!」」」

「終わった……。」

「俺たちの咲良さんが…」


 はっ!死屍累々って感じがする…。司会…司会仕事しろ!はやく!届け!この思い!


「…はっ!素晴らしい告白と返事ありがとうございました!おめでとうございます!咲良ちゃん!」

「…うん!これからもよろしくね!」

「わぁ…」


 最後に見せた咲良の笑顔は、今まで以上に…満開の花が咲いたような笑顔を見せ、全ての人を魅了した。


これにて完結です!恋愛ジャンルで初めて書いたにしては中々の評価をもらえたのではないかと思っています!

 Twitterで言った通りこの作品はプロローグとエピローグだけ書き上げており、全20話にする予定でした。3日目の様子が19話で20話が「咲良さんです!」からスタートする予定で書いていたので、更新速度以外はよかったのではないかと思っています。


次回作かローファンタジーの作品のほうで機会がありましたらよろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
[一言] 思ってた以上に完成度が高くてビックリしたw
[一言] 最後まで、ほのぼのとした、気分で 拝読さてて貰いました(^ω^) 他の作品でも頑張って下さいね! 還暦のおじさんより(⌒▽⌒)
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