14.遊園地に行こう!後編
本日二話目です。前編を見ていない方は前へボタンをどうぞ。
「ふう。飯も食ったし次は何に乗る?あ、絶叫系は断固拒否するからな?」
「いや、ここは先にお土産を選ぶといいらしい。飯どころに人が集まっているおかげでお土産屋がすいているから昼がねらい目って聞いたな」
「なるほど…」
「じゃあ私はぬいぐるみを見たいな!」
「さすが情報屋おじさん。俺は咲良と一緒にぬいぐるみとか見て回ろうかな?で、ぬいぐるみとかが売っている場所はどこか分かるか?情報屋おじさん」
「さっきと名称違うくね!?まぁ変わらないけれど…そこまっすぐ行って右だぞ」
さすが情報屋おじさんだ。大体のことなら知っている。最近思ったが、晃はどうやってここまで情報を手に入れているのだろうか?もしかして事前に全て調べているのか…?どちらにせよ、助かっていることには変わらないのだから礼を言っておこう。
「晃、ありがとな!」
「…は?」
☆★☆
「見て!この熊みたいなやつがここのマスコットキャラクターのベアリィくんだって!」
「へぇ、伊達に人気遊園地と呼ばれていないクオリティだな。…なんだろう、なんか無性に気になってきた…買おうかな…」
「りゅうとくんはそれ買うの?私は少し高いけれどもう一回り大きいこっちを買おうかな…」
「ん?それ、大きさと同じく値段も中々だけれど大丈夫か?」
「え?うわ!7800円もするの!?どうしよう…せっかくの思い出だし…」
小さい方と大きい方を見比べて迷っている。一回りで2倍近くの値段になることは予想していなかったのだろう。ここは俺が少しでもいいところを見せるところだ。幸い、咲良と遊びに行くと報告したら銀行にいつもよりかなり多めに振り込まれていた。
「咲良、折角だから買ってやるよ」
「え?…で、でも。かなり高いしりゅうとくんに悪いよ…」
「ならこれはお詫びだ。今更かもしれないけれど、高校入学と同時に帰ってくるって言ったのに2か月近く遅れた…な?」
「そ、そんなこと気にしていないのに…」
「良いからいいから。欲しいんだろ?ほら、俺からのプレゼントだと思って」
「りゅうくんからのプレゼント…ならお願いしようかな!プレゼントしてね!」
「よし!じゃあ会計に行くぞ!気が変わらないうちにな!」
プレゼントにしてはサプライズ要素もないしただ奢っただけのような気もするが、こういういつも来ない特殊な場所でしか買えないものだからきっといい思い出になるだろう。
「りゅうとくん」
「ん?」
「ありがとう!」
「お、おう…」
今のありがとうと言った時の表情は確かに昔みたいな笑顔だった。可愛くて花が咲いたような明るい笑顔、その魅力的な笑顔をいきなり向けられて少し言葉に詰まってしまった。
昔のような笑顔は見れる。そのことを確信して、それと同時にあまり周りの人には見せたくないと思ってしまった。
☆★☆
「最後はあれ乗ろうぜ!観覧車!いやぁ、遊園地と言ったらほのぼの系アトラクションだよな!」
「それは違うと思うけれど、観覧車が遊園地の醍醐味なのは分かるわよ」
「じゃあ俺と西宮さん、咲良ちゃんと琉人な?いやー、西宮さんとお土産選びしているときに良い雰囲気になっちゃってね~」
「…は?」
「そ、それは流石に嘘じゃないかなぁ…」
「あ、でも琉人くんと二人で乗ってきて良いよ」
「じゃあ楓と晃は一緒に乗るのか?」
「え?私は一人で乗るわよ?」
「…一人観覧車…」
結局、俺と咲良が二人で、晃と楓がそれぞれ一人で乗ることになった。
「うわぁ、綺麗…」
「そうだな。あっちが俺たちの住む地域か?」
「そうだね、子どもの頃はあんなに遠いと思っていたのに今では地下鉄で10分で着くんだもんね」
子どもの頃見ていた景色はやっぱりその時の尺度で、今だと遠いだなんて思わないような距離の小学校もあの頃は一日一日が冒険だった。小川が運河で畑は荒野。毎日が冒険で咲良という従者を引き連れて攻略を進めた。
子どもの世界は冒険の連続だ。だからこそ一つ一つの記憶が深く刻まれて、簡単に思い出にもトラウマにもなる。
それなのに、成長すると楽しかった思い出なんてすぐに消えてしまい、嫌な記憶や避けたいことばかり覚えていてしまう。だから咲良のトラウマは深かったし改善が見られなかったのだろう。
咲良もそうだったとは限らないけれど、俺が小さいころ経験した楽しいことはどれも隣に咲良が居た。だから母さんは咲良を笑顔にできるのは俺だけだといったし、実際今日一瞬だけ昔のような笑顔を見ることができた。
多分あと一歩、楽しい思い出が増えてきて友達に対するトラウマはもう大丈夫。あとは美しいシルバーブロンドに対する自信を取り戻させることができればきっと昔みたいに笑う。無邪気で、天真爛漫で、明るくてだけどちょっと泣き虫なあの頃見せていた笑顔を見ることができるだろう。
「なぁ咲良」
「どうしたの?」
「俺が思うに友達は、本当に信じられる人が数人片手で数えられる程度いればいいと思うんだ」
「…うん」
「俺、晃、楓。少し男子の比率が多いけれど最悪これだけいたら困らない」
「そう…だね」
「咲良と友達になりたい人は多分クラスにもいっぱいいる。もちろん下心があるやつもいるかもしれない。だけど、何があっても俺たちは、最低でも俺は絶対に離れないから…」
「…うん」
「一緒に文化祭の実行委員をしないか?」
「…うん?」
「いや、実行委員。多分他の人と多く関わるけれどいい機会だと思って…」
「…はぁ…。うん、りゅうとくんが一緒ならやってもいいよ」
「本当か!一緒に良い文化祭にしような!」
なぜかため息をつかれてしまったけれど、俺は文化祭までに咲良のトラウマを払しょくする。そう心に決めた。不貞腐れたように外を見る咲良は絵になって、つい言葉が漏れた。
「…きれいだな…」
「?そうだね!…また来ようね?」
そうしている間に観覧車は一周してしまい降りる時間が来てしまう。
「お二人さん、楽しめたか?」
「あぁ、いろいろと綺麗だったぞ」
からかうような声色で聞いてくる晃に思ったことを即答してやり閉館の時間が近づく。
「じゃあ帰ろうか」
「そうね。かなり楽しかったしお土産も充実したから良かったわ」
「また、みんなで来ようね?」
「地下鉄で10分なんだからいつでも来れるさ」
「そうだね!」
何事もなく帰宅し短い一日が終わる。琉人は、この楽しい思い出を忘れないように記憶に深く刻み付けた。
近くに遊園地というものが存在しないため、ユニバとかディズニーで体験した微かな記憶を頼りにしているんですよね。
次の更新は未定ですが、題名だけ。『ここはどこ?もしかして異世界?』
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