12.星を見上げて
お待たせしました
「懐かしいなぁ、ここ昔来た事覚えているか?」
「覚えているよ!…昔も一緒に眺めたっけなぁ。前は二人きりじゃなかったけれどね!」
そう、この高台には俺と咲良と家族できたことがあったのだ。
「昔はこんなに満点の星空は見えなかったけれどな?」
「そうだよね。確か、曇り空であの時は全く空なんか見えなかったけれど…今日は天の川まで見えるよ!…天の川だよね?…りゅうとくん?」
「あぁ、悪い。イギリスから見た空もこことそんなに変わらないもんなんだって思ってな…」
イギリスで空を見上げた時も天の川があったし北斗七星も見えた。なんとなく、同じ空を見ているみたいなキザなセリフが頭の中に浮かんできた。
「いやぁ、昔は曇り空で星が見えなくて咲良が泣いていたもんなぁ…」
「そ、それは空が見えなかったからじゃなくてりゅうくんと見たかったからで…」
「…ん?なんて言ったんだ?」
「なんでそんな昔のことを覚えているのって言ったの!」
「いやぁ、だって咲良との思い出だろ?」
「…え?」
…ん?咲良との思い出だから覚えていた…?いやそれじゃあまるで遠回しに告白しているもんじゃないか!?
「い、いや!あれだ!咲良が泣いていたことを覚えていることが多くてな!ほら、この場所とか、転んだときとか、俺が先に帰ったときとかさ!」
「そ、そうだよね!…って、なんでそんなことばっかり覚えているの!」
「「……あはははは!」」
「ねぇりゅうとくん」
「なんだ?」
「まだ言ってなかった。日本におかえり」
「…あぁ。ただいま」
咲良にお帰りと言われて、やっと日本に帰ってきたという感じがした。物心ついた時から一緒だった幼馴染の咲良が近くにいることが俺の日本での日常だったのかもしれない。
「そろそろ戻るか?」
「そうだね、二人も今お仕事中だから手伝おっか!」
「早く来いよ!おいてくぞ!」
「まってよりゅうとくん!」
こちらに駆けてくる咲良の姿は、小さい頃の明るく表情豊かだった姿に重なって見えて、記憶の中の星が見えなくて鳴いている咲良が笑顔に上書きされたように感じた。
☆★☆
「よし!片付けも終わりか?」
「晃くんの持っているやつで洗い物も終了よ」
「俺めっちゃ働いた!MVP貰えるくらい働いたぞ!」
「楓がもしかしたら普段はならないけれど、肌荒れする可能性があったんだろ?」
「そうそう!だから洗い物はほとんど俺がしたぞ!」
「楓ちゃんって肌荒れするの?」
「普段洗い物しているときは特に肌が荒れたこととかないけれど…え、晃くんが全部洗っていたのって私のため?」
「あれ?俺無駄なことしてた?」
きっと女子同士で話していたことを小耳にはさんでいいところを見せようとしたのだろう。楓は家でも家事を行っているし、肌が荒れたことなど無いのだが。…もちろん、ハンドクリームなどでのケアは行っているのだが。
「ま、まぁみんな揃っているし先生に報告して部屋に向かおうぜ!」
「そ、そうね!一応他の班よりは速いみたいだし流石晃くんね!」
「っそうか!じゃあ俺が報告に行ってくるよ!」
「…晃くんってあんなに単純な人だっけ…」
先生に終了したことを報告し、荷物や新井残しなどの不備が無いかのチェックを受けた後にそれぞれの部屋に向かう。男女別に分けられており、二人部屋なため琉人は晃と同じ部屋に必然的になる。
もちろん楓と咲良も同じ部屋だ。
「琉人、咲良ちゃんとの関係はどうだ?」
「バスで見ていて分かったと思うが少し笑うようにはなったぞ」
「……そ、そうだな…」
「え?晃が失敗するたびに笑っていただろ?」
「…俺には変わっているようには見えなかったぞ…」
まさか咲良の表情の変化が分かっていなかったとは…。楓はからかって表情の変化を楽しむくらいだから気づいていたとは思うが、やっぱりまだ元の咲良までは遠いのかもしれない。
琉人は、星を見上げた場所で見えた昔の咲良のような表情を絶対にに取り戻して見せると改めて心に決めた。
「そういえば健康チェック的な奴は?」
「あ!いっけね!…まじか」
「…どうした?まさか二人に!?」
「遅いから先に連絡したって…。合法的に女子部屋計画がああ!」
「そっちかよ!」
その後は何の事件も起きることなく林間学校は無事終了した。
とても遅くなりました。
…いや、ちゃんと更新速度に期待しないでくださいって書いてるんで?書いてますから?
…はいすみませんでした。完結までは持っていくので許してください!