11.初めての(じゃない)共同作業
遅くなりました。
「おーい!薪はここでいいのか?」
「いや、その薪は濡れているから要らん」
「えー!やっと拾ってきたのに!」
林間学校では、夕飯は各自で製作だ。そして、メニューは全班共通で定番のカレーだ。俺は調理の係なため材料を咲良と切っていた。
「りゅうとくん、このくらいの大きさでいいかな?大体一口だと思うんだけど…」
「うーん、にんじんはそれくらいでいいけどジャガイモは崩れやすいからもう少し大きくかな?」
「わかった!」
咲良が料理を練習したというのは伊達ではないようで、かなりいい手つきで包丁を操っていた。しかし、まだ使い慣れてはいないようで切る大きさに違いが出ていた。晃は配布されるもの以外に薪を集めてきてくれているが、そのほとんどが濡れていてあまり燃えないものだった。
「ねぇ~私やることないんだけど、仕事与えてくれないかしら?」
「んー。楓は洗い物するんだからゆっくりしてていいんじゃないか?」
「そうだよ、私たちで作るから代わりに洗い物いっぱい頼むね!」
「ふーん、じゃあ料理期待しているわよ?…まるで夫婦みたいにしちゃって!」
「ななな、なにを言っているのかな!?」
楓が咲良をからかい始めたようだ。この前遊んだ時からほんの少しだけ咲良の表情は変化するようになった。それを楽しむためか、最近はことあるごとにからかっている。その姿は可愛いからいいんだが…。
「よし!あとは煮込んで、ご飯が炊けるのを待てばオッケーかな?」
「そうだね!本当にりゅうとくん料理上手になったんだね」
ご飯ももちろん土鍋だ。土鍋でやるといい感じにおこげができて、おいしくなるからかなり期待している。
「はぁはぁ、琉人!乾燥している薪持ってきたぞ!」
「え?あ、うん。もういらないぞ」
「…え?」
☆★☆
「はああ、美味しかった!」
「いやー、咲良ちゃん本当に料理できるようになったんだね!このお肉とか食べやすい大きさだし!」
「あ、それりゅうとくんが切ったよ」
「え?っっと、ジャガイモも煮崩れしてないしね!」
「それは煮崩れしてもいいように大きくってりゅうとくんが…」
「おま!どんだけ料理に関わってるんだよ! 全部お前をほめちまったじゃねぇか!」
「あははは!おなか痛い!褒めようとして失敗しすぎじゃないの!」
その言葉を皮きりに笑いが沸き上がり、楓はしばらくツボって戻ってこれなくなっていた。だが、咲良は昔に比べると確かに料理がうまくなっていた。そのことを言ってやるとほんの少しだけ笑みを浮かべ、少し恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「よし!そろそろ片付けに入ろうか!」
「そうね、他の班はもう片付けに入っているところが多いわね」
「楓ちゃん手伝おうか?私、まだ少し料理をしたくらいしか働いていないし…」
「いや、晃くんが手伝ってくれるって言ってたから大丈夫よ。それに、もう充分働いているわよ」
「…え?俺?」
そんなこと聞いていないぞ!?みたいな顔をしているが、多分きっと自分が言ったことを忘れてしまったのだろう。きっとそうに違いない。そして、楓が俺にアイコンタクトをしてくる。…わかったよ。
「咲良、どうせ暇になるからあっちの方に景色を見に行かないか?手すりもあるみたいで安全だし、まだ時間も余ってるからさ」
「景色?見に行こうかな!じゃあ楓ちゃんと晃くん、洗い物頑張って!」
「はーい。楽しんできてね?」
「え?あ…お、おう」
そして俺たちは、景色が良く見える高台まで移動した。
読んでくださりありがとうございます。