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悪運は良いのかな?

………………


目覚めたら私はまだあの部屋に居た。


「ーー……、ーーッ?」


また、死ねなかったと言おうとしたのに、発せられたのは掠れた空気音そして痛みが走った。


そうか、多分ナイフが声帯あたりを傷付けたのか……。



「目は覚めた?」


傍らには、やっぱりあの女性。


多分私を救うためにかなりの負担を与えているだろう……。


私なんか救ってくれなくていい、私は何も返せない只の迷惑な存在なんだから……。


「あなた、何で私なんかを助けたんだって顔をしてるわね」


「……?」


「あなたに私達の言葉が伝わらないのはわかっているけど、これだけは言わせて、生きる事を諦めないで!」


女性は私を抱き締める、私の肩に温かい涙が流れてくる。


「独りぼっちが怖かったんだよね?、大丈夫だから…ね……、お願いだから……」



言葉がワカラナイ、わからない、解らないのに……気持ちが少し温かくなるのを感じた……



「ーーッ、ーーーッッ」


涙が止まらなかった、それは絶望からじゃない。


自分でもよく分からないけど、多分私はこの温かさの為に少しでも生きたいと思ったから泣いたんだと思う……



それからの私は治療を続ける中で絵本の読み聞かせをしてもらい、この世界の言葉や文字を少しずつ学んだ。


前世の記憶のせいで時間がかかったが、女性……リゼットさんや、旦那さんのノルベールさん、そして二人の息子のノエル……。


この一家が親身になってくれたおかげでなんとか頑張れた、そして治療により徐々に声帯が治ってくる頃には簡単な日常会話がたどたどしいものの、なんとか出来るようになっていた。



………………



ちなみに、住んでいる村の役所では魔力から年齢や能力が解るステータス確認のようなものがあったため、試しに確認してもらった結果、私の年齢は6歳だった。


しかしながらこのステータスには名前の記載はなく、名前の確認は産まれた時に左手に親が魔力で刻むスティグマ(聖痕)のようなもので確認するため、私の名前は解らなかった。


そんな私にリゼットさんはリリィという名前を付けてくれた、真っ白な髪の毛の私に合っているかもしれない。



この世界では自らの魔力を火や水などに変換する魔法を使うためには自分の本当の名前を媒介にする必要があったので、私に出来るのはただ魔力を放出するか他人の身体に魔力を流して、その人の魔力量を補充することだけだった。


試しに前世の名前で魔法を使おうとしたけど駄目だった。



ちなみに、ノエルは私と同じ6歳だった。



…………



「おい!、お化けが来たぞ!」


「お化けは早く退治されろよ!」


「お前ら!!、リリィをいじめるのはやめろッ!!」


私はノエルとおつかいがてら散歩をするため外に出ると村の子供達から"お化け"とからかわれた。


言葉の意味を理解する前は、ノエルと彼らのやり取りがよく分からなかったけど、最近になってようやく解ってきた。


この世界での"お化け"という言葉の意味をノエルは私に知られないようにしていたけど、村の役所に託児所のようなスペースの本棚にあった怪物を退治する内容の絵本を見付けた事で理解した私はノエルの頑張りを無駄にしてしまったなと申し訳なくなった。



実際、私は痩せた身体に幽霊のような白い髪、顔の右側を包帯でぐるぐる巻きにして左腕も無いという、見た目はお化けと呼ばれても仕方ない出で立ちをしているなと自ら思った。


反論しようとは思わないが、どのみち完治できていない声帯では大きな声は出せないし、片言な発音では不気味さを更に増してしまうだろう。



居たたまれないのは、ノエルが私を庇うことで周りと孤立してしまわないか心配な事だった……。


私はまだノエルが他の子達と遊んでいる姿を見ていない。

元々は居たのに私のせいで離れてしまったのだろうか……。

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