痛みで目が覚めました。
新しい"私"の始まりは強烈な「痛み」からだった。
目の前に居る化け物に何度も叩かれたのか身体のあちこちの骨が折られ逃げられないようにされている。
泣こうが呻こうがお構い無しに化け物は私の右眼を抉り、二の腕の中頃辺りで折れた左腕を雑巾しぼりをするように捻り……そのまま千切った……
「ーーッッ!!」
私は叫んだ……言葉とは言えない、只の金切り声だけが響いた。
そして化け物は私の叫ぶ姿を眺めながら右眼と左腕を美味しそうに口にした。
正直、そんな光景と痛みで狂ってしまいそうだった。
このまま苦しむよりは一思いに死なせて欲しいのに胴体のダメージがあえて軽くされているため致命傷になっていない。
恐らく私が苦しむ様を肴にでもしているのだろう……
いつの間にか骨だけとなった左腕を乱雑に投げ捨てた。
……今度は何処を食べられるのだろうか……
痛みと出血で意識が遠退いてきた時、目の前の化け物の首が急に切り落とされた。
「こいつ何か喰ってると思ったら人間の子供を喰っていたのか、惨い事を……」
「ねえ、お嬢ちゃん生きてる!?」
聞こえてきたのは大人の男女の声、しかし話している内容が解らない……
そんなことよりも、私は早くこの苦しみから解放されたかった。
『うっ……ぐぅぅっ、……お願い……死なせ……て』
「この娘、まだ生きているわ!『死なせて』?、わかったわ今助けるから、ヒール!」
私の身体を心地よい光が包み込む、さっきまであんなに痛かったのに。
このまま逝けたら幸せだ……
「この子、ロイと同じ歳くらいかしら?、どうしてこんな所に……」
「村では見かけない子だな、近くに保護者が居ないか調べてくる、洞窟の入り口に魔物避けの香を焚いておくぞ」
「ええ、お願い」
何か話し声が聞こえるが、外国語なのか全く意味が解らなかった。
そして段々と薄れていく感覚に私は眠るように意識を手放した……
………………
…………
……
……ここは、何処だろう?
気付いた時、私はベッドの上だった。
天井と壁は木で出来ていた。
ガチャッ
ふと右側から扉の開く音が聞こえたが身体が鉛のようで上手く動かせず右側を向けない。
目線を向けようとしても自分の鼻しか見えない…………そうか右眼が無いからか……。
入室者が解らない不安で左眼から涙が出そうになる、左手で涙を拭おうとした時に左腕も無い事に気付く……
『うっ……うわぁぁぁぁん、あぁぁぁぁん』
「ど……どうしたの!?」
『ひっぐ……えっぐ…………』
「良かった、目覚めたのね……大丈夫よ、もう何も怖くないからね……」
その声は意識が無くなる前に聞いた女性のものだった。
女性は私の身体を抱き起こし抱きしめながら優しく頭を撫でてくれた。
「大丈夫よ……大丈夫だから泣かないで……」
女の人が何か囁いてくれるが、言葉が聞き取れない、しかし声色から『大丈夫だよ』と言っているように思えた……。