生徒の贈り物
男子の提案で1カ月間、別々にバイトする事になった。
男子は身体を鍛えるために、鉱山での働き口を見つけて来た。
ユリは、メイドの仕事をするらしい。
「メイド服着るのか?」「ぱねえ」
「もう一人、空きがあるから先生も一緒にどう?」
「えっ。」正直。メイドやってみたい。
「あらっ。まんざらでも無いようね」
「男の娘属性はない」「んごっ」
どうやら、変態趣味だと確定されてるらしい。
みんながバイト中、私はギルドの薬草収集の依頼を受けまくった。近くの森に出かけ、野生の動物からは何度も逃げた。必死に逃げた。素早さ、俊足、逃亡のステータスが上がった。
ユリは料理、裁縫ステが付き、寝る前にヒールを自分に何度もかけているので、魔力ステが上がったらしい。
ヒロとカズ君はは、見た目にも逞しくなった。相当頑張ったんだろうな。さすが男の子は変化が激しい。
やっと、冒険者らしくなった訳だ。
バイトのお金を渡されたが返した。自分達のお小遣いにしてネ。
ヒロは槍。カズはレイピアを買ったらしい。
ユリは、ポーションを用意。ヒールが切れた時の補助なのだろう。出来た子だなぁ全く。
「先生!すみませんでした。迷惑をかけました。これから俺たちが頑張って戦います。」
「先生、ありがとう。私も先生の期待に応えられるようみんなをフォローするわ。このパーティの命運は握ったわ」
何かとてつもない誤解がある様だよ!君たち。
でも、素直な子達だね。真剣に生徒に向き合うってこういう事なんだろうな。
「その黒猫。ペットにしたんだね」
「違うよ。勝手についてきてるだけだよ」
「名前は?」
「黒いからクロでいいんじゃね」
「よし、命名。お前は今日からクロと名付ける。ぷっ。」
今、すごくイヤな悪寒が走った。気にしない様にしよう。
「じゃあさ、街で冒険に出る用意しよう」
ランプや松明等の灯り非常食。解毒剤全員分や麻痺等のも備えたい。
余裕があったので、防具も見てみた。耐火属性などの属性防具は全く手が出ない。耐毒のグッズもとても買えない。脛・肘・膝などの部位を守る防具を買うので精一杯だった。
ユリは、デザインだけ重視してローブをすでに持っている。そこは女の子だし口出せない。
私もつい、カッコいいチュニックを見つけた。安い。買える。
でもな。女性用だし。ウエストまでキュってしてて、下半身がヒラヒラしてる。スパッツ穿いてるから関係無いけど。いかにもっぽい感じがする。
いいなぁ。欲しいな。でも、今男性だし。
やめた!
ユリが後ろでピースサインしてた。ヒロがサムアップ。なんだろう。気にせず。支払いを済ませた。
ギルドに戻って依頼を確認。
「毒草採取か?」まずまずの値段。生活費1週間分だ。依頼報酬が生活費に換算される状況を早く打破したい。
「でも、その毒草どこに生えてるんだろう」
「ダンジョン一階にあるぞ!」
薬草収集でちょっと仲良くなった黒猫のクロが答える。
クロの言葉は、私にしか聞こえない様だ。
「図書館で調べた時、ダンジョン一階にあるらしいって」
「行こう。ダンジョン」「ワクワクする」
「じゃあ、決定。ダメそうだったらすぐ、逃げるけど」
「その前に私達から、先生にプレゼントがあるの」
「へっ」
「これよ開けて見て」
「なになに」
げっ。女性用のチュニック。よく見るとワンピースっぽい。
「嬉しい?」
「はい。とても」
したり顔の3人の生徒。
「えっ ここで?」3人はワクワクしてる。悪戯っ子だ。男の私にワンピースを着せようとしている。
「大事にとっておくよ。大切にするから」
「ダメよ。ここで着て!今すぐ」
仕方ない。着てみる事にした。
「なんか残念な感じだぜ」
「思ったより普通。つまらない」
「先生、明日からそれ着て冒険。もう先生を傷つけたりさせないから」
すごく複雑な気分だけど、なんだかとても嬉しい。
「ありがとう。大切にするよ」涙が出た。