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騎士はイケメンって相場が決まってる

「へぇ、その子旅人なんだ。通りで私の事を知らない筈だ。」

この無神経男はマーリンと言って私を唯一元の世界に返す事が出来る人らしい。ーーーが、


「ちょっと待って。白雪ちゃんが貴方の事を話さなかったら私、帰るチャンス逃していたってこと?なんで話してくれなかったの?」

取り敢えず白雪ちゃんの家に着いて、汗まみれのアーサーさんの体を軽く拭くための準備をしながらマーリンに言ったがマーリンは


「君だって自己紹介してないだろ?なんでそんな子に名前と自分の職業を言わなくちゃいけないんだ?」

と、返されて反論出来なかった。

「えぇ、そうね。自分でも言ってて何言ってんだろ?ってなったよ、さっき……。」

出会いが最悪過ぎて、未だに私はマーリンに自己紹介が出来ていなかった。流石に帰して貰うのにいつまでもこの態度はダメだと言い聞かせて彼に向き合う。



「改めて、私の名前はサラです。帰る時はよろしくお願いします。」

自己紹介をしたので用は済んだとばかりにさっさと階段を上がった。態度は悪かったと自覚してはいるがマーリンの怪訝な顔を見て余り長居はしたくなかったのだ。







白雪side

「あんたにしては珍しいね、あそこまで女に優しくないの初めて見た。」

目の前の男はいつだって女には優しかった。だからこそ、サラに攻撃的な言葉を向けているのが不思議だった。


「だって、彼女は私に何の利益を生まないからね。私の為に権力を使ってくれるわけでも快楽を与えてくれるわけでもない。優しくしないといけない理由が見つからないな。」

その言葉を聞いて納得してしまった。こいつは魔術は天才的でも人としては最悪だ。ーーーまぁ、こいつに至っては人ではないが。

「で?話を聞かせてもらえるよね?約束したんだし守ってもらえないなら叩き出すけど。」

出来ればあいつが戻って来る前に確認したい事があった。それはここ数日からアーサーやマーリンの住む騎士の国の王の噂。今回のアーサーの怪我だってドラゴンで無く、この噂が絡んでいると見て助ける事にしたのだ。……別にあのお人好しのヒス女の為では絶対ない。

「そうだね、だけどこの件についてはアーサーから直接聞いた方が良い。私よりも詳しいからね。」


「話が違う。お前の口から話してと言ったんだけど聞こえなかったみたいだね。ーーーさっさと話せよ、クズが。」

僕の考えが当たってたら、おそらく




「サラをこの世界に連れてきたのはお前だろ?」

そう言うと男はとても楽しそうに笑った。








サラside

二階に上がってアーサーさんのいる部屋に入り、汗を拭いていくが男性の裸を上半身とは言え見慣れていないので拭き終わるのに結構時間がかかってしまった。

「本当に綺麗に治ってる……。性格はともかく本物の魔法使いって凄いなぁ。」

何やかんやであまり実感が湧かなかったのが今回の件で改めて異世界に来たんだと思い知らされた。

「傷は治ってるけど、アーサーさん全然目が覚める気配ないなぁ……。それにーーー」

見てるこっちが辛くなるくらいに苦しそうだ。

マーリン曰く、人間の傷の治るスピードを上げただけなので身体の負担が凄まじく、痛みで意識が暫く戻らないらしい。だからそこ絶対安静が出来、看病が出来るところを求めたのだ。

『アーサーが目覚めるまで私共々よろしく頼むよ。』

と、言っていたのでマーリンの世話とかふざけんなと思いながらも仕方がないので引き受けた。ーーーそれにしても……

「……綺麗な顔してるなぁ。」

と、独り言をこぼした。流石に皆んながいる前で怪我人の顔見てうわぁ、カッコイイ!なんて言える神経は持ち合わせていなかった。

「マーリンといい、アーサーさんといい何でここの男性は顔面偏差値がこんなに高いの?そう言えば白雪ちゃんも美人さんだし、ここに住んでる人男女問わず顔がいいの?」

あり得ない話ではない。だって異世界だもん。

って、そんな事考えている場合ではない。この人が早く元気になる事だけ今は考えよう。

「早く、良くなりますように。」


私は魔法は使えない。早く良くなるように祈るくらいしか出来ない事が歯痒かった。





看病を始めて数日が経った。未だに意識は戻らないが痛みが引いたのか今は呼吸が落ち着いている。

白雪ちゃんの家にお世話になると言った日からマーリンの世話も増えた。初めて食事を出した時は文句でも言ってくるかと身構えたが美味しいと言って普通に食べてた。悪い人ではないとは思う(そもそもそんな人を白雪ちゃんは家に入れたりしないと思う)が、良い人でもないと至ったのが今の現状である。理由は、日に日に白雪ちゃんの機嫌が悪くなっている事である。怒っている理由は分かっているのだがその問題の元凶は涼しい顔をしている。

「いい加減に、僕の質問に答えてくれるかな?それとも答えるべき質問の内容を忘れちゃったの?」

とても可憐な顔で微笑んでいてまるで天使みたいだが目が全く笑っていない。


「勿論、覚えているよ!白雪が毎日同じことを言うから忘れるわけないだろう?」


「じゃあ、質問に答えろ。此処にいる為の対価だって言ったよね?あいつが目覚め次第さっさと出てって貰いたいから。」


だいぶ前に同じ様な事を言われたが言葉の圧が違った。

そこには優しさは感じなくて本当にアーサーさんが目覚めたら追い出すつもりだと分かってしまった。

私は気まずくなってアーサーさんの所に行くまでが最近のサイクルになりつつあった。

アーサーさんのいる部屋に着き、様子を見る。


やっぱり、まだ目は覚める気配は無かった。

「白雪ちゃん……絶対さっきよりもマーリンに詰め寄ってるよね。どれくらいで話が終わるかなぁ?」

いや、私が降りていかないと白雪ちゃんの尋問は終わらないだろうと思う。

多分だけど、白雪ちゃんは話の内容は私には聞かれたくないのだろうがマーリンは私にも聞いてほしいと言っていた。ーーーマーリンからでは無くアーサーさんから直接。



「いや、私が聞いても意味ないんじゃ……?」

話してもらうのは別に良いけど私その後すぐに元の世界に帰るんだよね?国のドロドロした内部事情を聞かされてモヤモヤしたまま帰れって?へぇ、大変だねって言って帰れって事?

「いや、マーリンに限ってそんな事するかな?」



マーリンなら、『君には関係無いから外に出ててよ。』くらいは言いそうなのに何でーーー今、何か頭に引っかかる事があった気がする。

「私に聞かさないといけない理由がある?何だろう?」

私を賢者として連れて帰るとか?いや、それだったら白雪ちゃんが気づいているはずだし……駄目だ、全く心当たりが無い。


うーんと唸っているとシーツの擦れる音がした。

アーサーさんの意識が戻った?!私は勢いよくアーサーさんに駆け寄った。顔を見ると顔をしかめながら彼は目を覚ましていたが、ぼーっとしており目の焦点が合っているのか怪しかった。


「しっかりしてください!自分の事が分かりますか!?」


声をかけると顔をこちらにゆっくりと向けた。

寝ている姿を見てカッコいいとは思ってたけども目を覚ました彼は本当に絵本に出てくる王子様みたいな顔立ちをしていた。思わず見惚れてしまっていたが目が覚めたのなら白雪ちゃん達を呼んでこないと、と思い部屋を出た。




彼が王子様みたい、ではなくて本物の王子様だと知るのは後数分の事である。













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