第二章⑦:休息1
微百合
「やになっちゃうわあ、巫女の仕事」
巫女業とはすなわち祈祷師のパシリをすることだというのなら、俺はよく働いた。
「しょうがないよ、巫女だもの」
カルナは6つ目のりんごにかじりついた。
透明の汁は口元から垂れ、光を反射しながらツーっと顎から首筋へと滴り落ちた。
嗚呼渇く。今この場で彼女の首もとに喰みつき、あのみだりがましい汁を舌で拭き取りたい。
「アグナちゃん?」
「……あ、ごめんなさい。えっと……なんだっけ」
「もおアグナちゃんったら!ほらおいで」
「えっ?」
彼女はいつの間にかベッドの上で正座になり、なにやらこちらを誘導しているようだった。
案内先は……ふともも!?
「アグナちゃん疲れているでしょ?おいで、膝枕してあげる」
天使だ。
「悪いわ、いつも愚痴きいてもらってるのに」
「ううん、いいの。アグナちゃん毎日わたしのところに来てくれてるし。それにアグナちゃんがこんなに毎日働かされてるの、私のせいでもあるし」
いま部族内でさまざまな感染症が蔓延している。
巫女たちの中でも体調を崩す者が相次いでいる。
10人いる巫女の内9人が出勤できない状態にいる。
カルナみたいにたいして自宅療養する必要がないのに、自宅療養を命じられている人々も含まれている。
気づいたかと思うが、現状として働いているのは俺だけだ。
俺は10人分の仕事をこなさないといけない。
だからこうしてヘトヘトになってしまうのだ。
「じゃあ遠慮なく使わせてもらうわ」
後頭部を温もり優しい雲が受け止めた。
下からの眺めだと、そびえる豊満な胸が立ちはだかってカルナのあいらしい顔が見えなかったが、それもまた一興。
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