第二章④:とりこもなす
虫とか出てきます。
前回までのあらすじ
とりあえずカンジダのせいにした。
ところでここまで完全にカンジダ菌のせいにしてきたわけだが、よく似た症状を起こす病原体は他にもいる。
例えば膣トリコモナス症のトリコモナス原虫。基本的に性行為による感染だが、水を媒介に感染することもあるので、風呂やトイレで感染することがある。
あの泥の中にトリコモナス原虫がいた可能性、ありえる。
「とりあえず、ベルト葉と泥はもうやめてね」
「え、でも祈祷師様が……」
「とにかくよ!……カルナ、おねがいだから」
「……わかった。でももし祈祷師さまに何か言われたら……」
彼女のこの態度は従順さからではない。
彼女は巫女というポジションにいるため、彼女の上司にあたるあの祈祷師とやらの味方でないといけない。
特にこの集落で渦巻いている闇のせいで。
「アグナちゃんは大女性派の人じゃないことは知ってるんだけどね」
派閥抗争。
数十年前からこの集落で問題となってきたそうな。
これまでは派閥といってもせいぜい2つだった。
しかし数十年前から続いている社会不安のせいか、いまでは中小含めて20以上だとか。
大女派も近年勢力を伸ばし始めた新興の派閥である。
内容はまあ、要するにフェミニズムだ。
俺たちの知っているフェミニストたちと変わらない。
女性の社会的権利を適度に訴える人もいれば、過激なフェミまんさんもいる点まで共通している。
あの祈祷師はなぜか大女性派の人々の目の敵とされている。
噂だと、立場を利用して女性に迫るんだとか。
一生を基本的に『聖なる淵』で過ごすあの祈祷師にそんなことができるかどうかが疑問だけど。
この小説、地味にエロくないよね