第一章:いい男たち
読むと苦痛なだけの箇所もありので
ご注意ください。
里が見えてきた。
直感的に里についたらこの幸せなひとときが終わることを、俺は予知した。
願わくはこの広い背中の上で暮らしたい。
美少女ではなく甲羅として生まれ変わっても良かったかもしれない。
里に近づくに連れ、その住民と思わしきが次々と駆け寄ってきた。やはり白人が多い。
金、銀の長くて真っ直ぐな髪に青や緑の瞳。目は大きくてやや彫が深い。鼻は少し低めだけど長い。耳もなぜか異様に長い。縦ではなく、横に。人とは思えない。唇はやや薄めでやや小さい。顎は広いが顔は小さい。肩幅が広くて風を切るように歩く。胸を常に張っている。身長は目測で、平均して175cmはありそう。体はスタイリッシュだけど、勇ましさもあって筋肉質。ローマ彫刻のような。胴より足のほうが比率的に長くて、手足も胴と比べて長め。指は決して綺麗ではなく、器用には見えないが、腕は太くて筋肉隆々。昔ジムで知り合っていた人たちを思い出す。撫で回したい。撫で回したいといえばあの胸板。ここの住民たちはどうしてこんなに厚い胸板を持っているのだろう。鋼板。まさに鋼板。進む姿はまるで戦車。貧相なチハとかじゃなくて重厚なエレファントのような。俺の主砲では貫けない鉄壁の装甲……
あらやだ目がいつの間に男性しか見てなかったわ。
顔が小さいというあたりまでは女性も共通かな。
いま集まっているのはほとんど男性だから女性はまだよくわからない。
とりあえず雰囲気ゲルマン系に近い。
違いを上げるならこっちの住民は、鼻がやや低いのと耳が横に長い。
さてイケメンマッチョの竜宮城にナイスガイにホイホイ連れられて漂着した俺は、四方八方から言葉攻めにあった。
「⬜●⬜○▼⚫★◐▼◇」
「▽⚪▷⚪★⚫⬛◇◆▷⚪★」
「⬛⚪⬜⚪★▲▼◆◐◀◆★」
「⬛⚪⬛⚪▷▲⬜⚫▶⚪★⚪」
それらに対して俺はとりあえず頷いてイエスイエスと応えた。
イエス……イエス……じゃぱにーず……いえすいえすいえす……いんぐりっしゅノー………
こんな不毛なコミュニケーションはいつまで続いたんだっけ。
さすがに疲れてきた頃に、長老と思しきが、白き海を二つに割って間の道を威風堂々たる姿勢で歩いてきた。
なんというか、ジョーンズ、という感じの人だ。
「⬜◇⬜◇⬛△⬜★◇⚫▼◐★」
「▽◇▼⬜△▼●」
「⬜▲⬜▲★◇⬜⚪⬛⚪⬜△▼●………」
ジョーンズ(仮)は俺をおぶってくれた人と一言二言交わしたのち、俺の方へ向き直った。
顔をこちらへ近づけ、まるでそのまま脳みそまで覗き込もうとするかのように、じっとこちらを見つめた。
恥ずかしい。
「あのぉ……」
バチィッ!
顔を思いっきり殴られた。
バチィッ!!
もう一発くらった。
おかげで頬がヒリヒリする。
俺が何をしたっていうんですか、おっちゃん。
「▼⚪▼◇⬜△●★⚪⬛◆⬜! ⚫⚫◇◀◆▼⚪○▶★! ◀⬛◇⬛◀⚪◇ ◇⬛△⬛◀⬛ ◐◀◐◀◆◇◆▼◆◀⬛⬛」
えらい剣幕で怒鳴られてますナウ。
ジョーンズ(仮)が怒ってます。
本物のジョーンズはたぶんもっと優しいです。
「⬛●●⬜ ▼⚪▼●⬜⚪」
モウ ハナシハ オワッタ
コイツヲ ツレテユケ
とでもいうかのように唐突に鎮まって、里の方を指差して踵を返した。
直後、俺は抱え上げられた。
さっきの男性ではなく、今度は長身で腕が人一倍太い男性だ。
小脇に抱えられた状態で運ばれた。背中のほうがよかった。
背中にチクチクと相手の脇毛が当たる。
ほんのり湿っている。
長身男の脇汗が俺の背中を伝って、お腹を滑り下り、ヘソの窪みに潜ってのち、滴り落ちた。
いまので妊娠した気がする。
安心してください
女の子も出ます。