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第1回 映画『地球防衛軍』

地球防衛軍(1957)



まず、この作品を見たいと思った切欠は私自身が特撮大好き、ゴジラシリーズ大好きという点が第一である。小学生の頃、ゴジラVSスペースゴジラでモゲラの勇姿に惚れ込んだのは懐かしい思い出だ。そんなモゲラのデビュー作?だというのだから、これは絶対に見ておくべき作品だと個人的に判断したわけである。


幾つか、感想として述べていこう。第一に、少し前に続編の作られたアメリカの超大作「インデペンデンスデイ」との比較である。

作品としてのフォーマットが非常に近しいと思われるのが個人的な感想でもある。因みに、続編のリサージェンスは見ていない。私自身、基本的に洋画を見ない人種なので。一応、インデペンデンスデイはテレビで放映されたものを見ていた記憶はある。個人的には、苦手な、嫌いな作品、作風である。

今回はインデペンデンスデイの感想ではないので語るのは避けよう。そして、おそらく二度と語ることはないだろう。

インデペンデンスデイ以前どころか、四十年前に同様の作品が作られていたという点にまずは驚くべきだろう。

作品としてのフォーマットは同じ。

しかし、あちらは地球に対する脅威としての存在に対し、対話を試みず、挙句、全滅させて「やったぜ」と喜んでいるのである。

一方でこの地球防衛軍はどうだろう。

全滅はさせていない。追撃こそしたが、いくつかは取り逃している。さらに、当初は対話による交渉から始まる(実際はミステリアンが暗躍し実力行使をしていた面はあるが)という点についても異なる。あちらは「やれ核だ、核を撃て」である。この辺はあの最低作と言われたバトルフィールドオブアースの方がマシである。

あの作品はサイクロ人が放射能に汚染された地域に行くと呼気が小規模な爆発を起こす描写があり、弱点であると判断されたが、同時にそれは地球人にとっても危険なものであるとの発言があった。

何より、ミステリアンが原水爆を用いた戦争で母星を破壊し、自らの肉体も汚染された存在であることに対し、「あれを教訓にする」「ミステリアンの二の舞になってはならない」などという台詞が存在する。最後にいたっては「彼らは永遠に宇宙の放浪者だ」という安達博士の台詞が示すように、自らがいくるべき場所を自ら破壊した者に、帰るべき場所など存在しない。辿り着くべき場所など存在しないのだ。


インデペンデンスデイに関してはBaseBallBearの小出氏が全力で批判をしているが、私もそのように思う。

ウルトラセブンのあの名台詞を忘れてはならないのだ。まして、今更この地球防衛軍を見るような者がウルトラセブンを、超兵器R-1号のエピソードと、モロボシダンの台詞「血を吐きながら続ける哀しいマラソン」を知らない、忘れた者などいるはずがないのだ。



作品内のあれこれ。

特撮面。

円谷監督による特撮は結構な数を見てきているが、相変わらずすごいの一言に尽きる。戦車などが溶けていく様などは見ていて感嘆する。よく考えてもらいたい。今から六十年前の作品で、まだCGなどない時代の作品だ。合成技術だって、はめ込んだものの回りに青いもやのように見えているくらいにはまだ技術的に弱い時期の作品である。そんな時代に、単純に爆破ではなく、熱によって飴のように溶けていく様を見事に表現しているのだ。これには最早脱帽するしかない。

他にも細かいところだと、車の中での会話シーンで、後ろの窓に映る景色が合成ではめ込まれた景色である、というところだろう。これに関しては、円谷監督がまだモノクロ映画全盛の頃に編み出した手法らしいが、所謂危険地帯での運転、航空機のコックピットシーン、車の前からではシートが邪魔で綺麗に写らないなどの際に使用できると画期的といわれた手法なのだそうだ。

私たちはよく、特撮と聞くと「着ぐるみでの子供だまし」「ヒーローもの」といったイメージをよく思い浮かべるのだろうが、実際には多くの映画などで使用されている。今回の合成のような例ではないが、新潟の地震を扱った「マリと子犬の物語」では、地震のシーンはミニチュア特撮である。意外と知らないだけで、ヒーローや、怪獣以外にも特撮は使用されているのである。


ストーリー。

やっぱり、本多監督らしい。それが素直な感想である。

白石という平田昭彦さん演じる青年が鍵になるのだが、彼を最後どう扱うかで、この作品が本多作品か、インデペンデンスデイかに分かれる。あと、安達博士の放浪者云々とか。

何より、タイトルの地球防衛軍は作中で誰も発言しない。強いて言えば国連軍くらいではなかろうか。一応、会議をしている施設に地球防衛軍司令部とか書かれていたように思う。実際、その程度で作中におけるタイトルなど誰も発言していない。それどころか、設定として存在しているモゲラが土木用であるとか、そもそもモゲラの名称であるとか。このあたりも誰一人として言わないのだ。これがウルトラシリーズくらいになると誰かが勝手に名前をつけ、すごい科学で解析して土木用であることを解明してくれるのだが。

加えて、東宝特撮シリーズは少なくとも地球陣営については「すごい科学」をしていない。などと思っていたが、思い返してみればそうでもない。しかし、今作の空中戦艦やマーカライトファープ、電子砲は何となく地続きの技術に見えてしまう。おそらく、滑走路に佇む空中戦艦や、降下後、自走するマーカライトファープなどが妙な現実感を与えてくれたからだろう。このあたりは、ゴジラでオキシジェンデストロイヤーを登場させたのが一つきっかけだったのではないかとも思う。

ストーリーから脱線しているようだ。

とはいえ、極端な話、当時の世相としての冷戦構造、原水爆の脅威といったものへの警鐘、科学の持つ危うい一面を示すといったテーマ性、メッセージ性の強さが垣間見える作品である。ゴジラほどには人間関係などは掘り下げられてはいないようにも感じられ、白石の葛藤や、佐原健二氏の演じる渥美の持つ一私人の真っ当さ、そこから科学や戦争についてもう少し考えてみることを勧めてきた、そのように感じた作品でもある。


しかし、単純に特撮ものとしても、宇宙人ものとしても出来がいいのは確かだろうし、細かいことや、思想的なものを全部抜きにして名作として楽しむのがまずはいいのかもしれない。

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