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いのちの穴

作者: さっちゃん

今回初めて投稿さして頂きました。字の間違いや表現の間違いなど多々あると思います。指摘などあればお願いします。最後まで読んで頂けたら幸いです。

(ぽつん、ぽとん)

水滴が地面に溜まった水たまりに落ちる音で目を覚ます。

辺り一面が真っ暗闇。

音も光もないこの場所。

今自分の頭の中にあるのはただ死ぬという事を受け入れるだけだった。



僕の名前は鮎川 悟史 28才 普通の会社員だ。毎日繰り返し訪れる日々に疲れきってしまい仕事辞め日本中を旅をする事にした。旅と言っても目的も行くあてもなくただ偶然通りかかったバスに乗っては降りひたすらに歩く。

だから今ここがどこかもわからない。ただわかるのはもう自分のいた世界には戻れないという事だけだ。



10日ぐらい前の事だっただろう。

あてもなくひたすらに歩き今は使われていない峠道を歩いていた。

ふと峠道から山に入る獣道らしきものを見つけた。

その場所だけ草の長さが短かいだけなのになぜか獣道と思ってしまった。無意識の内に何かに引き寄せられるようにその獣道に入って行った。今思えばただ入り口のようにガードレールが壊れていただけで獣道などとは到底言えないような道だった。歩くにつれて草が腰の辺りまで生えていて一歩先の地面すら見えない。どれぐらい歩いただろうか気がつくと目の前に大きな口を開いた洞窟が見えてきた。洞窟の入り口は縦長のコンクリートでできており人工的に造られたように見える。

中を見てみた、暗闇が続いて1m先ですら見えない。自然とその洞窟へ僕は足を進めていた。洞窟の中はじめじめしていて、足場はかなりぬかるんでいる。時より(ぽつん)と水滴の落ちる音がする。だんだん暗闇に目が慣れてきた。周りを見ると外観は人工的に造られた感じがするが中は壁も道も泥だらけで土を掘っただけといった感じがする。足場が悪い為歩く度に(ぐちゃぐちゃ)となんとも気持ち悪い音がする。

普通だったらこんなところに一人でいる事すら恐ろしいのに、今はなんとも思わない、というより感情すらなくなってしまったのだろうか。洞窟の奥は長く永遠に感じられた。前の方からとても心地よい風が吹いてくる。風が吹く方へ歩いた次の瞬間・・頭が真っ白になりなにが起こったのかがわからない。ドンっと凄い衝撃を受け気絶してしまった。

(ぽつん)

頬に水滴が落ちてきて意識がもどり始めた重たいまぶたをゆっくりと開けた。

真っ暗闇でなにも見えない。立ち上がろとしたが体が言うことを聞かない。だんだん暗闇に目が慣れ始めてきた。目の前におさげ髪の女の子の石蔵のようなお地蔵様みたいなものが見えた。自分がいるところだけ一つの空間のようになっていた。なぜこんなとこにと思い周りを見渡した。上をみる一部分穴が空いているたぶんあそこから落ちてしまったのだ。足を見ると両足とも見るも無惨な形になっていた。

右足は膝から下が曲がらないであろう横に曲がってしまっている。左足は力が入らず足は紫色に変色している。

周りを見渡しても四畳半ほどスペースに出口など見当たらず、外が見えるのは落ちたと思われる10m程上の天井だけだった。

僕はこの場所に閉じ込められた。

痛みは自然と感じなかった恐怖も・・・・どうせ自分の生きている意味すらわからなくなり、人として生きる事から逃げ出したのだからここで死ぬ事になにも感じなかった。いやもしかすると望んでいたのかもしれない。自殺などできるほど勇気もない、かといってこのままのうのうと生きて行ける程世の中は甘くない事ぐらいわかる。ちょうど死に場所を見つけれて逆に安心しているのかもしれない。気づくと深い眠りについていた。どれぐらい眠っていただろうか、ふと目を覚ました。静寂の真っ暗闇中無意識の中昔の思い出が蘇ってきた。


まず頭に浮かんできたのは小学時代の僕だった。小学時代の僕は何がそんなに楽しいのか田んぼ道を笑顔で走っている。

ただ走っているだけなのにあんなに笑顔になれるなんて・・・。

思わず僕は微笑んでしまった。

次に浮かんできたのは中学時代。中学時代の僕は野球部だった。真夏の太陽が照りつける中真っ黒に日焼けした僕が大きな声をだしながらノックを受けている。大量の汗を流し砂まみれになろうともボールに向かって全力でぶつかっている・・・あのか頃は諦めたりなんか絶対にしなかった。真っ直ぐ目標に向かっていた・・・。

次に浮かんできたのは高校時代。高校時代は毎日なんやかんやバカやってほとんど勉強なんてしやしなかった初めて彼女が出来たのも高校時代だった。高校に入ってちょっと不良っぽくなりたくて親に反抗したりもした・・・。気づくと僕は笑いながら涙を流していた。思い出を思い出す度に涙が溢れ出てくる。にたくない・・・まだ死にたくない・・・。

急に死ぬ事が恐ろしくなってきた。

それと同時に今まで痛みを感じなかった足に激痛が走り僕は気絶した。

(ぽつん、ぽとん)

水滴が水たまりに落ちる音で目が覚める。

安心した・・まだ死んでない。

音も光もない。

空腹も限界、脱水症状のようで唇もカサカサだ。足の痛みで意識が揺らぐ。だが今度目を閉じてしまったらもう二度と起き上がれないと思った本能的に。穴から落ちどれくらい時間が立っただろう永遠に感じる程長い月日をここで過ごしているように感じられる。生きたいと思えば思うほど絶望感だけが僕を支配していく。

もう死を受け入れるしかない・・・このまま眠ってしまえば楽になれる・・・。

枯れはてた目から最後の一滴の涙がこぼれ落ちた。

ありがとう・・・そしてごめんなさい・・・。


急に眩しくなり一面の花畑が広がった。夢いやもしかしたらここは天国みたいなものなのだろうか僕は困惑した。現に僕は立っている自分の足で。一面に広がった花畑を見渡した。とても暖かくとてもいい香りがする。だが今までに見たことのない花だった。 僕はその光景に見とれていた。

(ガサッ)

後ろから花の倒れる音がした。バッと振り向くとそこには可愛らしいおさげ髪の女の子が花を持ってこちらを見上げている。女の子の目線と合うようにしゃがんだ。女の子は不安そうな顔で僕にこう訪ねた。

「おにぃちゃんなんでここにいるの?」

答えに戸惑っていると女の子はこう続けた。

「だめだよおにぃちゃん。おにぃちゃん はまだここにきちゃ」

僕には言ってる意味がわからなかった。僕がなんでだいと訪た。

「ここはとてもあたたかくって、いいにおいもするけどさびしいとこだもん。ままにもあえないだよ。おにぃちゃんはまだきちゃだめなの、」

僕は何となく理解した、生と死の間。

僕は女の子手を取りじゃあ一緒に行こうと言った。女の子は首を横に振った。

「おにぃちゃん、あたしねおにぃちゃんのおかげでままにあえたんだよ。」

満面の笑顔で女の子が笑った。

「おにぃちゃんありがとう。ばいばい」

女の子は大きく手を振り走って行った、その先に優しく微笑む母親らしき人が立っていた。女の子は母親の元にたどり着き寄り添い甘えた。母親がこちらに頭下げそのまま二人は微笑みながら光の中に消えて行った。とても暖かく、優しい気持ちになった。急に目の前が光に包まれた・・・・

「悟・・・史、悟・・・史」

意識ははっきりしてないが誰かが僕の名前を呼んでいる。目を少しずつ開いていく。

「悟史、悟史」

目を開けるとそこには涙を浮かべた母親と父親の姿がた。夢か現実か周りを見渡してみる。僕はベットに横たわっている・・・・病院?。泣きながら母親が僕にしがみついている。

生きてる・・・。

もう流せないと思った涙がとめどなく溢れ出てくる。父親は僕に泣き顔を見られたくないのか目頭を抑え病室をでていった。僕は年がらにもなく母親に寄り添い子供のように涙した。とても暖かく、優しかった。そのまま僕はまた眠ってしまった。


なぜ助かったのか母親に聞いた時僕は驚愕した。僕が穴に落ちた翌日母親は夢を見たらしい。

おさげ髪の女の子が母親に僕が死んじゃうよって手招きをし洞窟まで案内するのだと言う。最初変な夢と思ってただけらしいのだが3日間同じ夢を見続けるものだから、僕に連絡したが繋がらない為捜索願いを出したそうだ。今思うとあの女の子は石蔵のおさげ髪の女の子そっくりだった。僕が発見された時にはその石蔵なんてなかったらしい。穴のおかげで外に出れたのかもしれない。

僕は空に向かって独り言のようにつぶやいた。

(助けくれてありがとう僕はまだ行かないよ、お母さんと幸せにね)

一瞬あの親子の幸せそうな笑顔が空に浮かんだ気がした。



あれから一年。僕はあの事故の為両足を失った。不便だけど生きては行ける。生きる事は辛く悲しい事もたくさんある。だけどそれも生きてる証。楽しい事だってそれに負けないぐらいたくさんある。幸せとはって考えると難しくて僕にはわからないが笑顔になった時、人は幸せを感じると思う。あの親子の笑顔を一生忘れないだろう。今僕のできる事を1日1日がんばります。今僕は車椅子でボランティアの仕事しています。


私自身生きる事の難しさに悩む事があります。少しでも多くの方に生きるという事を考えて頂けたら幸いです。

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