其の7
「もう、しらない!」
とうとつに隣からすごい声がきこえてきて、知らず知らずのうちに寝落ちしていた彼はビクッとなり、またもやもぐっていたテーブルに腰をうつ。
「あたたたた!」
今日何度目かの刺激にうめくと、画面がタイトル画面に戻っており時間もすっかり夕方になっていた。
「あー、うんどうしよう・・・」
彼の言うどうしようとは、すなわちレンタルしてきた映画をもう1度見直すか、それともこのまま返しに行こうかということであった。
寝落ちる程の内容だったが借りた以上キッチリみたいなという心と、寝落ちる程の内容をもう1回診るのは時間のムダであるという心の葛藤が彼の中に渦巻いていたが、隣の再燃したケンカの音量が大きくなってきたので返しにいくことに決めたのであった。
今度は玄関にある積み上げた雑誌を崩すことなく外にでて小さくガッツポーズを決めると下に降り自転車にまたぐ。
空は茜に染まっており学校がえりの子供達の声であふれかえっていた、その中をレンタル屋までいくとレジにさっきの彼女がいた。
「もうみたんだはやいねー、でどうだった?」
感想を求める彼女にまさか寝落ちであんまり覚えてないですとはいえず、まあまあと言葉を濁す。
「だよねー、最後主人公の人死んじゃうけど展開的に意味なかったもんねー」
彼女がそうつぶやくと、ほんとだよねーと調子を合わせるのであった。
「最後主人公はムダ死になんだ・・・」
心の中でそうつぶやくと、店をでて帰路につくのであった。