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其の2
「ふぅー、まだまだ寒いなぁ」
いずれ出そうと思って、そのままにしてある新聞紙と雑誌の束をくぐりぬけて玄関をあけると四月の肌寒い風が彼をなでていく。
カンカンカンと音をたてて階段を降りると一階に住む中年の男性が車をピカピカに磨いていた。
「おはよーさん」
「ども、おはよーございます」
そんな軽い挨拶をかわしてすぐ近くのコンビニにはいる。
"いらっしゃいませー"女性の店員がお決まりの挨拶をなげかける。
彼はその挨拶を気にもかけず惣菜売り場に足をはこぶ。
どれにしようか悩んでいると、大盛りのミートパスタが目にはいる。
「お、大盛りいいねー、やっぱり大盛りだわ」
つい先ほどテレビのタレントに向かって言った言葉をきれいさっぱりに忘れて彼は大盛りミートパスタを購入して部屋に戻るのであった。