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其の10


 家について玄関を開けると積み方が悪かったのか雑誌が崩れていた。


 あちゃー、と少し呟くと倒れている雑誌を乗り越えて居間に辿り着きテーブルに座る。


 「さてと食べますか」


 タンドリーチキンの蓋を開け、食べようとすると隣から例の女性の声が聞こえてくる。


 "まさかこんなタイミングでケンカ!!"


 とも思ったがどうやらいつものケンカとは様子が違う、通常の音声で話しているようだ。


 「うん、ありがとね話聞いてくれてじゃあ・・・」


 途切れ途切れに聞こえていた声では、どうやら誰かになだめてもらっていたようだ、これで静かに食べれる、そう考えながら弁当をたいらげいつものように就寝につくのであった。



 

そして、朝になるとお約束のように入り込んで寝ていたテーブルに腰を打ち目を覚ます。


 「あてて、もう朝か」


 とりあえず、朝の新鮮な空気を吸おうと玄関に向かいノブに手をかけると雑誌に足をひっかけてドアを開けてしまう。


 しまったー、鍵開けたままだったかと思った瞬間勢いよくドアが開き通りすぎた女性が、きゃっと小さく驚く。


 聞いた事のある声と思いながら女性の方を見ると、なんとレンタル屋の彼女であった。


 2人はしばし見つめあうのであった。


 

 「驚いた、ここに住んでいたんだ」


 彼がダメもとで家に誘い、それに応じて上がり込んだ彼女が居間を見渡しながら呟く。


 彼女の話によると、隣の女性は友人で彼と別れだすと言い出したので、なんとかなだめて別れさせないようにしていたのだという。


 「そうね、お似合いのカップルだから別れてほしくなくって、まぁなんとか、大丈夫そう」


 そうなんだ、それはよかったねと呟くと彼女がいきなりこうきりだす。


 「ねぇ、次の日曜日スカイツリーにいかない?」


 期待していなかった訳ではないが、いきなりの提案に驚く彼、どうしてと返す。


 「まぁ、最近なにかと縁があるし、ああいうところって1人じゃいきにくいし、ね」


  彼女はそういうと、いつのまにやら書いたのか自分の番号のメモをテーブルにおいて、仕事があるからと外にでて、そして少し照れくさそうに微笑むと"じゃあね"とでかけていく。


 あまりにも急な展開で、ぽかーんとしている彼だったが状況を理解していくにつれ、じわじわと歓びがわきあがり、思わずガッツポーズをとる。


 "ガツン"


 その時テーブルに肘をうち、痛がるものの顔は笑顔のままで歓びに満ちており次の日曜日に思いをはせるのであった。


         ー完ー

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