三〇 海底2万ミクロン
豊洲沖。
しだいに、、、茜色と暗い水平線が交わり、やがて融合して輝ける炎を生み、その揺らぎがオレの網膜にさした。
オレの意識は激しく覚醒してある決断を下したのだ。
「海馬に潜航してコイツの記憶と会う。これより本艦のコードネームは『脳散らす号』となる。」
「了解、脳チラ見潜航開始。」
「ノウシン 5000ミクロン、10000、15000、、、」
チラ見よ、イヤデス・トヨス・コイツの心に回想と憂愁が満ちてきた。
そしてアミダの視界から彩度が失せてセピアに染まっていく、ああ、霧が満ちてゆく。
音が雑踏のようなノイズにかき消されてゆく。
脳散らす号は静かに意識の深層に沈んでゆく。
艦橋内にドロイドのパイロットランプとソナーの探査音が明滅している。
「ノウシン 20000ミクロン、カイバ ニ トウタツ シマシタ。」
忘却の川が流れていた、そのほとりにイヤデスの記憶がいた。
「5万年ぶりです、豊洲先生。」
「そうでしたね、お久しぶりです、アミダさん。」
「豊洲先生、毎日寒いですね。」
「ひとは夏が暑かったことを忘れてしまいます。」
「それが幸福の秘訣です、先生。」
「その点、私は幸福なほうです。アミダさん。」
「先生の場合、幸福だったことまで忘れてしまうのでしょう。」
「幸福な日々ですか、皆そんなものさ。」
「ところで先生、デラックスについて教えてください。」
「否デス!」
「まだ考えていないのですね?」
「それは言えないなー。」
そこでイヤデス・トヨス・コイツは目覚めた。
「あれっ、今のが初夢なの?アイツ誰だったかな、、、」




