第4話 帰れるのがデフォルトじゃないの?
◇◇◇?◇◇◇
私の名前は"白崎 陽菜"と言います。
ごく普通の高校生だったのですが、1年ほど前にこの異世界に勇者として召喚された。
当時、この世界は魔王軍の圧倒的な力を成す術が無かった。
そこで、秘術である召喚の魔法陣を使い勇者を召喚した。
そして不幸にもその召喚の対象になってしまったのが私だったのだ。
私を召喚した神官は私にこう言った。
"魔王を倒せば元の世界戻れるはずです"と・・・
私はその言葉を信じて言われるがまま、勇者として仲間の3人と魔王を倒した。
しかし、帰る事はできなかった・・・私が神官に騙されていた事に気付くのに大して時間はかからなかった。
私を召喚した魔法陣は、勇者をこちらの世界に呼び出す事はできますが、帰還させる様にはできていないと問い詰める私に神官は答えた。
神官は初めから知っていたのだ、私が帰れない事を・・・
私は逆上しその神官に斬りかかった所を取り押さえられた。
それを機に神官は私を危険視し処刑を国王に進言した。
しかし国王は、魔王を倒した英雄の処刑を良しとせず、私は適当な金を渡され国外追放となった、表向きは行方不明という事になっているが・・・
もうどうでも良かった・・・元の世界に帰れないのならば何をしたって意味がない・・・
中央王国と呼ばれる最大の国フィーロスから追い出された私は何処の国へ行っても厄介者扱いされ結局追い出され、最終的に魔の領域と呼ばれるかつて魔王が支配していた地域に行き着いた。
当然そこは魔族の領域、人間である私が受け入れられる筈がない・・・
しかし、私にはもう行く場所が無い・・・そしてかつての宿敵魔王ブリアデスの居城があった街、魔都ブリアデスの一角に部屋を何とか借りそこで暮らしている・・・
皮肉な話だ・・・かつての宿敵が作った街にしか私の居場所が無いとは・・・いやここにも私の居場所なんて無いが・・・
そんなある日、私はある魔族の商人から、街の外れにある結界に覆われた宮殿付近にある市場で買ったという者を見せてもらった。
保存が利いてしかも美味しいとその商人は自慢していたがそれは紛れも無い缶詰だった。
私の居た世界に帰る手がかりがあるかもしれない!
そう思った私は、急いでその市場に向かって走り出した。
急がなければ手がかりが逃げて行ってしまう!そんな気持ちだった・・・
宮殿付近の市場にたどり着くとそこは活気に満ち溢れていた。
しかし、そこの人々・・・魔族なのだが、人間の私に気付くと険悪な表情でこちらを見てくる。
やはり、これはいつまでも慣れる事はできない・・・悲しくなってくる。
そこでふと私はある露天にいる二人の少女に気が付いた。
一人は猫耳フードのパーカーワンピース、もう一人は女性用の軍服を思わせる格好をしている。
どう見てもこの世界の服装からは浮いている異様な格好だ。
もしかしたら・・・私は一瞬そう思った。
そして次の瞬間、猫耳フードの少女がポケットから黒い手のひらサイズの薄い板を取り出しその画面と思わしき部分を指でなぞった・・・
スマートフォン!間違いない、あれはスマートフォンだ!!
その証拠に、彼女は隣の軍服少女にくっつきその板をカメラの様に扱っている。
この世界に召還された時には私も持っていた。しかし、それを充電する方法がこの世界には無い事は既に確認済みだ。
しかし、あの猫耳フードの少女はスマホを躊躇する事無く使用している。
そこから導き出されるのは、充電を心配する必要のない環境・・・つまり私の元居た世界との繋がりがある事になる。
陽菜
「すまない!ちょっと聞きたい事があるんだが・・・」
帰れるかもしれない、そんな希望に縋るのに必死だったのかもしれない・・・
私は何の躊躇も無く声をかけた。
◇◇◇夢◇◇◇
双子達の計画では、Snow Expressで主要な街に移動しながら冒険する感じになるそうな・・・
それって完全に"Snow Expressで行くフローセリアの旅"とか"そうだ!フローセリアに行こう!"的なノリの鉄道旅行だよね・・・思わず最後に"JR○海"とか言っちゃうよ?
まぁ、空中軌道装置で普通に飛べる列車だから問題ないけどさ・・・
それは置いといて、列車の点検やら準備やらに時間がかかるので、私と夢華は駅周辺にある市場を見物しております。
そうそう、夢華って一緒に写メ撮ろうとするとめっちゃ顔真っ赤になって恥ずかしがるんよ♪
身体が密着するのが恥ずかしいとの事・・・でも耳まで真っ赤にしてる可愛い姿を写真に収めない訳にはいきません。
という訳で、"私のスマホが火を吹くぜ!"と言わんばかりに写メ撮りまくってます。
そいえば、今気付いたけど写メって写真メールの略だよね・・・写メ撮るってなんか変な言葉だよね。
・・・と、恥かしがる夢華を愛でてたら、
???
「すまない!ちょっと聞きたい事があるんだが・・・」
と黒髪のロングヘアーにスカートタイプの軽装型の鎧来た少女(年上)に声をかけられました。
ええい!今良い所なんだ!邪魔スンナ!!
夢
「新聞なら間に合ってます・・・」
黒髪の少女
「い・・・いやその」
夢
「えーと、セールスお断り・・・」
黒髪の少女
「いや・・・だから・・・」
夢
「なら、空気清浄機は要らないよ・・・」
黒髪の少女
「だから、そうじゃ・・・」
夢
「宗教の勧誘は・・・」
"お断りします"と言おうとしたらアイアンクローかけられて、"いいから話を聞け!"と半ギレで言われました。
何キレてんのこの人・・・怖いわぁ・・・沸点低過ぎない?てか地味に痛いんですが・・・
黒髪の少女
「君の出身は?」
夢
「えーと、確か地球から250万光年の位置にあるアンドロメダ銀河の・・・」
ギリギリギリ(握)
ギャァァァ!!痛い痛い痛い!指めり込むから!!それめり込むから!!!
黒髪の少女
「出身は?(笑顔)」
笑顔が本気で怖いよお姉さん・・・次ボケたらマジで殺られそうなので・・・
夢
「愛知県の名古屋市だよ・・・」
普通に答えた・・・
うん、私の名鉄愛を見れば、直ぐに分るっしょ!普通すぎて面白くないです。
黒髪の少女
「帰れる・・・」
え?
黒髪の少女
「これでやっと帰れるぞ!!」
ちょっと何?そのやっとこれで帰れる的な空気・・・意味が分からないんですが・・・
だってさ、この街には普通に駅あるでしょ?そこの駅の係員にお願いすれば普通に帰らせてくれるはずだよ?
?マークいっぱいの私を他所に、黒髪少女は独り歓喜しております。
ホントにどういう事なの?誰か教えてぷりーず!!
夢ちゃんの何時でも帰れる異世界旅行と違い、陽菜さんはガチの帰れない異世界トリップなのです。
そんな、二人が出会ったらどうなるんだろうって思ったのが今回のお話の中核になります。
後は双子達がどう面白くプロデュースしてくれるのか非常に楽しみです。
一体だれが餌食になり玩具にされてしまうのか・・・