第25話 二人で・・・
◇◇◇夢◇◇◇
私は今、Snow Expressの自分の部屋のベッドの上に座り絶賛凹み中でございます。
気分は最悪で、部屋から一歩も出たくない心境です。
一応あの後、夢華の提案で速やかに私達は帰還する事となり、ロマラノフ駅にこの列車が迎えに来てくれました。
ダーク元帥達は、今回の作戦で捕虜になった天使達や最低教師の誠也を収容施設まで護送する準備のためもう少し残るとの事でした。
サウロ
「夢・・・元気だして・・・」
膝の上に居るサウロ君が心配そうに見つめて来ます。
はいそうです、私はこの子を抱き枕にして絶賛癒し成分を充電中です。
しかし、この素晴らしい抱き心地を持ってしても充電が上手くいっていない感じがします。
今私の自信は完膚無きまでに打ち砕かれました・・・
誠也にボロボロにされた事で、私の力や自信は全部この剣の形をしたペンダント(ゾディークV3)に完全に依存したものだという事に気付かされました・・・
そう、これを失った瞬間に元のヘタレな私に戻ってしまうんです・・・
そして私は、その事を忘れて私最強とか思い込んで調子に乗ってました。
その結果、油断して夢華の危険に気付く事が出来ず、窮地に陥ってしまった・・・
でも夢華は、私のせいじゃ無いと言ってくれる・・・それが逆に辛い・・・いっそボロカスに文句を言ってくれた方が楽だったかもしれません。
そうすれば、どんな顔して会えば良いのかって悩む事も無いでしょう。
もう吹っ切れたって思ってた事さえ、実はこれのお陰で、実は何一つ自分は変われていないんじゃないのか・・・そんな気さえしてきます。
うう・・・どんどん思考がネガティブな方向に向かっていく・・・
そんな時・・・
コンコン
夢華
「入って良いか?」
夢華が来てくれました。
ちょっとどんな顔下良いのか分らないですが、この前の件をもう一度謝りたかったので、入ってもらいました・・・本当は私が夢華の部屋に行かなきゃいけないんだけどね。
残念ながら今の私にそんな勇気も気力も残ってないさ・・・
そして夢華もベッドに座ったが・・・会話が無い・・・何だろうこの微妙な空気・・・
夢
「あ・・・あの・・・ごめん・・・私のせい・・・」
沈黙に耐えかねて、私が口を開いた。
夢華
「それは違うと何度も言っているだろう。それより、さっきの戦いで聞きたい事があるんだが・・・」
私に聞きたい事?何だろう・・・
気になるので"なに?"と聞いてみる。
夢華
「あの気色悪い人形との戦闘の際、私はあの戦闘がいつ終わるか見当が付かず、不安だったんだが・・・何故かお前はそんなに悲壮感を感じている様には見えなかったんだ・・・なぜだ?」
え?夢華・・・気付いてなかったの?
ちょっと考えれば分る事だと思ったから気付いてると思ってたよ・・・
そして、その理由を教えて、誠也がへばるのをラッセルラッセルしながら待ってた事を伝えたら"やはりお前は凄いよ"って言われた。
そうなのかな・・・でも夢華にそう言われるとちょっと自信が復活してきた気がする。
夢華
「あの時私は、打開策が一切思い当らなかった・・・それに対してお前は柔軟に相手の能力を想像して状況を分析して弱点を見抜いた・・・」
夢
「でも・・・私は今回も楽勝だって・・・油断してた・・・相手が作戦を変更してくるかもしれないのに・・・」
夢華
「いや、あの時私は一瞬異変に気付いたんだ・・・だが余裕が無かったので無視してしまったんだ・・・だから私のせいだと思う・・・すまなかった・・・私があんな事にならなければ夢が怪我をする事も無かった・・・」
夢
「大丈夫・・・もう傷は治した・・・」
大丈夫だよ・・・魔法で治したら痕とか残らなかったし・・・
夢華が人質にされちゃった件は全く気にしてないしね・・・
と、私自身が自信を喪失しちゃってる事は伏せておこう・・・気にされると嫌だしね。
夢華
「大丈夫に見えないから言ってるんだ・・・」
やっぱり気付かれてる・・・まぁ、こんだけ部屋に引き籠ってカーテン閉め切ってたらそうなるわね・・・
仕方ない・・・今の心境を正直に話そう・・・あんまり話したくないけどね。
そして、自分の心境を隠さず正直に夢華に伝えた。過去の私の事もいっしょにね。
そう、一番の問題は自分の力を絶対的なもだって思ってて失敗した事なんだ。
後、ゾディークV3を失った時点で全てが無くなってしまう事・・・
そんなダメな自分に自信が持てなくなってしまった事・・・
夢華
「私はそうは思わなかったぞ・・・武器を捨てた後も逃げずに立ち向かってたじゃないか!それに比べ私は・・・」
夢華も私に今の心境を話してくれた・・・
今まで自分の弱さをひたすら隠して頑張ってきた事・・・
しかし、誠也にそれを全て壊され今は何も残っていない事・・・
そして、今まで自分がやってきた事って何なんだろうって思ってる事・・・
なんだ・・・夢華も同じだったんだ・・・実は私と同じでヘタレで、それを頑張って隠し続けて悩んで来たんだ・・・
そして、今まで積み上げて来た物を壊されてどうしようも無くなってる・・・
あんまり良い言い方じゃないけど、独りじゃ無くてなんだか心強い様な気がする・・・
私も、やっと積み上げ直したブロックをまた壊されて心が折れそうになってた・・・独りでもう一度積み上げ直すのってもう嫌だったんだ・・・でも夢華と二人ならもう一度頑張れる気がしてきた。
夢
「二人でがんばる?」
夢華
「そうだな・・・二人なら何とかなりそうな気がするな・・・」
夢華と話して少し元気が出て来た。
・・・と、上手くまとまりそうな所で一つの問題に私は気付いた。
夢
「でも、夢華ともうすぐお別れ・・・どうしよう・・・」
そう、夢華は大日ノ本帝国の軍人で私はSKBEの職員・・・所属する組織も勤務する場所も全く違います。遠距離相談とかしながらじゃなきゃ無理じゃんこれ・・・できなくは無いと思うけど・・・思うけどさ・・・厳しいよねこれ。
夢華
「そうでも無い・・・」
私の話を聞いて、夢華がそう言い衝撃の事実を私に告げた・・・
既に双子からこんな事を言われてたそうな・・・
①トラウマを克服して任務を成功させたらそのまま復職・・・
②ダメなら一時的にSKBEへの特別派遣要員に・・・
③残念ながら既に神皇の了承を得ているので拒否権は無い・・・
双子スゲェ・・・もしかして既にこうなる事知ってた?
まぁ、事前にあの変態仮面(ダーク元帥)を派遣してたし、その可能性も十分考えられる。
何だかなぁ・・・結局あの双子の手の平で踊ってた感が半端無いのは私だけだろうか?
夢華に聞いてみたら"全くその通りだな・・・"って言ってくれた。だよねぇ。
そんなこんなで、最初は暗かった会話が、いつの間にか明るくなってた・・・不思議だね♪
まぁ、昔に逆戻りじゃ無かったから良いかな・・・
そう言えば、さっきから膝の上のサウロ君が静かだと思ったら、私に抱きついたまま寝てしまっていた。
しかも胸に顔埋めてるし・・・本当に小さいうちだけだぞそんな事許されるの・・・いや、ビジュアルが良いから許されそうな気もし無くも無いけど・・・まぁ起こすのも可哀想なのでそのままにしておく事にしましょうかね。
その後、サウロ君が起きるまで、夢華と楽しく会話した。
◇◇◇リアン◇◇◇
私は今、夢の部屋の前に居る。
ボロクソにやられて、帰って来た後部屋に閉じ籠っているいると聞いて心配になって来てみた。
しかし、部屋からは楽しそうな会話と笑い声が聞こえて来た。
話相手は夢華だろう・・・どうやら私は必要無かった様だな。
せっかく見つけた親友だ・・・大切にしろよ。
何だか妹分が巣立って行ってしまった様な寂しさを感じつつ、私は部屋の前を後にした。