第20話 新しいお人形さん
◇◇◇夢華◇◇◇
倒しても倒してもキリが無い・・・これではこの前の二の舞いではないか・・・
しかも今度はこの前の夢が行った手段は無理そうだ・・・そもそもこの人形に心はあるのかさえ怪しい・・・しかも、倒すたびに嫌悪感を覚える叫びと共に腐った肉片を撒き散らす。
その度に吐き気を催してしまう・・・このままじゃ私のほうが精神的に参ってしまいそうだ。
夢の方を見てみると、全く意に介さず笑顔で敵を肉片に変えている。
何故彼女はそこまで強いのだ?最初に会ったとき私は彼女の事をヘタレだと思った・・・だが実際はどうだ?私の方がヘタレではないか・・・全く、情けない話だ。
その時、私の身体が何かが絡まる様な違和感を感じた・・・が、何も絡まった様子は無い・・・
変だ・・・だが詳しく確認する余裕は無い。
私は吐き気を堪えながら再び腐った肉の人形を倒す堂々巡りを開始しようとした。
・・・が、突然身体が動かせなくなった。
夢華
「な?!なんだこれは・・・」
動揺する私を他所に、私の身体は勝手に動き銃口を夢に向けた。
夢華
「ゆ・・・夢!!よけろ!!」
咄嗟に叫んだ。そうするしか無かった。
次の瞬間、ズドンという音と共に弾丸が発射された。
夢
「・・・っ!」
夢は私の声に反応し、避けようとしたが避け切れず右肩に弾丸がめり込んだ!
その瞬間、夢の服が血で染まる。
通常の弾丸ならこうはならない・・・夢の障壁で簡単に防がれるのが関の山だ。
しかし、そうはならなかった、おそらく闘気が込められていたのだろう。
夢華
「なんという事を・・・夢!!」
肩を押さえ、苦悶の表情で崩れ落ちる夢・・・
彼女の元に駆け寄りたい・・・しかし、身体が言う事を聞いてくれない。
それどころか、更に彼女の頭に狙いをつける。
夢華
「やめろぉぉぉぉぉ!!」
誠也
「いいねいいね、今の叫び声最高だよ!ヒャハハハハハ」
聞き覚えのある下品な笑い声・・・あいつしかいない・・・神埼 誠也!
私の自信とプライドを踏み躙った男!
誠也
「まぁ、やめないけどね♪」
誠也がそう言うと、私の身体は再び勝手に動き腰の短剣を抜き自らの喉元に突き付けた。
誠也
「さぁて夢、武器を捨てなさい。さもないと大切なお友達が大変だよ♪」
私を人質に・・・この下衆が!!
夢華
「夢!私に構うな!」
誠也
「・・・たってさ・・・どうする?」
誠也が下品に歪んだ顔で夢に訪ね、少し間を置き・・・彼女はゆっくりと立ち上がった。
夢
「条件がある・・・」
誠也
「条件を提示できる立場では無いと思うですけどね・・・まぁ良いでしょう。」
夢
「夢華は逃がす約束・・・」
な・・・何を言っているんだ!そんな約束こいつが守る訳・・・
誠也
「分りました・・・こちらの子には手を出しませんよ・・・」
嘘だ!こいつは天使達の手先なんだぞ!私を見逃すはずがない!!
騙されてはダメだ!!私の事など気にせずこいつをぶちのめすんだ!!
夢華
「夢!こいつを信用するんじゃない!」
夢
「大丈夫・・・夢華は友達・・・絶対に見捨てない・・・」
夢は私に笑顔でそう言うと、手に持っていた大剣を地面に捨てた。
なぜ・・・何故なんだ・・・何故助からないと分っていて・・・
夢華
「私もどの道助からない!分らないのか?」
夢
「そう思う・・・でも・・・後悔したくない・・・」
誠也
「それじゃ・・・始めましょう・・・公開処刑をね♪」
誠也が夢に向かってゆっくりと歩き出す。
覚悟をしているのか夢は全く動かない!
くそ!何でこんな時に私の身体は動かない!動く事さえできれば・・・
私は無力だ・・・