第15話 キハ283系気動車
◇◇◇夢◇◇◇
車内放送
「本日は特別列車"Super Ciel"をご利用いただきありがとうございます。目的地のヴェリロスカ連邦鉄道、ロラマノフ駅まで担当TCAIのIFD、シエル=コンフィアンスがご案内させて頂きます。
列車は先頭1号車、2号車が3等座席車、3号車、4号車が2等座席車、5号車から11号車が3等座席車となっております。また、各種車内サービスにつきましては各車両におりますサブIFDにお申し付けください。続きまして、運行経路及び所要時間をご案内させて頂きます。この列車は神京駅を出発後、帝都口駅から名鉄帝都口線を経由し大日ノ本帝国口より次元軌道に入り、ラマノフ駅を目指します。所要時間は8時間27分を予定しております。その他何かございましたら、IFDのシエルまでお申し付けください。目的地までの列車の旅をお楽しみください。」
私と夢華は、神京駅から特別列車に乗り、ヴェリロスカ連邦領内にあるロラマノフ駅を目指しています。
本当は乗り慣れた"Snow Express"を利用したかったのですが、残念ながら改修工事中なんだそうです・・・
んで、代わりに私達を迎えに来たのが、キハ283系気動車・・・
確か、キハ283気動車って車体強度不足が原因の異常振動で色々不具合出してる車両だよね?
そう思い、列車のIFD・・・シエルさんに聞いてみたら"この車両は設計変更で重量増加を覚悟で車体を強化した仕様です。"って答えてくれました。
確かに、車両の妻面がドきつい末期色(黄色)に塗られてるし、窓周りにもシャーマングレーが追加されてるみたいです。・・・トンネル目前でシャフトが外れてそれが燃料タンクに直撃して漏れ出した燃料に引火して炎上しない事を願うばかりです。
今回の計画は、ロラマノフ駅近郊にあるヴェリロスカ聖教中央教会に殴りこみ天叢雲剣を奪還するという非常にシンプルなものです。
・・・というか、そんな事してヴェリロスカ連邦政府が黙って無いんじゃないかと思ったら、既にSKBEの総帥が手を回し、ヴェリロスカ連邦政府は今回の件を黙認する約束を取り付けてるだとか・・・
というのも、ヴェリロスカ連邦政府としても、ヴェリロスカ聖教の政治介入には頭を抱えていて、今回を機に政界から一掃する方向で動きたいと思ってるみたいで、その支援も兼ねるみたいです。
まぁ、宗教が政治に関わるとロクな事にならないからね・・・
・・・て事なので、中央教会に居るであろう天使達は全部ぬっ殺せって事みたいです。
一番の障害が天使達だしね・・・私と夢華なら簡単に倒せるけど・・・問題は誠也(糞教師)だよね・・・
下手すると夢華がトラウマ原因で戦闘不能になるかもしれないし・・・
そう思いながら隣の席に座る夢華をみる・・・って何か顔面蒼白だよ!どうしたの?
夢
「どうしたの?」
夢華
「す・・・すまない・・・この列車の変な揺れのせいで・・・」
どうやら、振子列車特有の不自然な揺れが原因で酔ってたみたいです・・・
確かにカーブの時にスコンと下の方が外に抜ける様な不自然な揺れ方は、慣れない人にはキツイらしいですからね・・・しかもこのキハ283系気動車の装備するN-DT283台車は最大6度車体が傾き、自己操舵するのでカーブへの突入速度が速い・・・
更にこの列車160Km/h出してやがるし・・・頭オカシイよこれ・・・
帝都口線の線形の良さが原因なんだろうけどさ・・・
夢華が限界そうなので、トイレに連れて行き出す物を出させて被害を最小限にしますが・・・それでもつらそうです・・・いやはや、乗り物酔いって大変だね・・・
夢
「すいません・・・酔い止めあります?」
シエル
「はい、ありますよ。揺れがきつ過ぎましたか?」
たまたま通りかかったIFDのシエルを呼びとめて酔い止めを貰いました。
ついでに、揺れがきつ過ぎるかと聞いてきたので・・・
夢
「私は平気・・・だけどこっちが・・・」
シエル
「わかりました。振子を体感して頂く為に鋭く傾けてましたが、ちょっと滑らかに動かすように致します。」
ちょwなにカマしてくれてんのこの娘!
見た感じスノウ君より少し年上っぽいけどさ・・・
んで、その後列車が傾く挙動が滑らかになりました・・・詳しく話を聞いてみたら、わざと制御を使わずに振り遅れと振り返しを発生させて振子感を出してたそうな・・・殴って良い?
酔い止めを飲んで、更にちゃんと車体傾斜の制御が行われるようになった事で、夢華の乗り物酔いは元に戻りました。
・・・まったく、SKBEの職員ってなんで変なのばっかりなんだろう・・・
私も人の事言えないけどさ・・・
キハ283は、車体強度に問題があり、現在110Km/hでの減速運転を余儀なくされていますが、本当は根室本線で140Km/hでの走行が可能な設計だったりします。
更に道東地区の軟弱地盤での走行を考え自己操舵が可能なボルスタ台車になってる関係で、重量が増加し、その帳尻を合わせる為車体の強度を落とし軽量化しました。そしてそれが原因で今の減速運転とは皮肉な話です。
そして今回登場したSuper Cielは車体を強化した設計に変更し増加した重量はエンジンの出力アップで帳尻を合わせるアメリカンスタイルです。
そして、それをイメージする塗装として、妻面が末期色になっています。