第56話 ロリババトリオ
◇◇◇勇輝◇◇◇
ベッドの上で目が覚めた。
どうやらここは医務室の様だが、乱雑に置かれた医療器具や洞窟内のような壁から戦争映画に出てくる様な野戦病院にみえる。
ハッキリしない頭で、今までの記憶を頼りに現在の状況を把握しようと思考を巡らせる。
そうだ、確か僕は敵の無人戦闘機に蜂の巣にされたんだ・・・
もうダメだと思って諦めて意識を手放したが、生きているみたいだ・・・
ふと、周囲を確認すると、枕元で椅子に腰掛けたまま眠っている美樹の姿があった。
美樹が助けてくれたのだろか?
とりあえず、美樹を起こして確認してみよう。
勇輝
「美樹、起きて・・・美樹・・・」
美樹
「ゆう・・・き・・・勇輝!」
肩を軽く叩いて起こしたら、突然涙目になり抱きつかれた。
そういえば、気を失う時に美樹は泣いてたっけ・・・
心配してくれてたんだ・・・
勇輝
「美樹が助けくれたんだよね?ありがとう。」
とにかくお礼を言っておかないとね。
でも、あの傷の状態から考えると、助かりそうになかった感じなんだけど・・・
美樹
「勇輝を助ける為に、列車を襲ってマナルを奪ったの・・・マナルがあれば魔力の心配がなくなるから・・・」
勇輝
「無茶しちゃダメだよ!」
美樹
「お前にだけは言われたくない。不安だったんだぞ!お前が居なくなって一人になってしまうんじゃないかって・・・」
勇輝
「えっと・・・それって・・・」
美樹
「私は、お前と離れたくない。」
美樹が抱き付く手の力を強めた。
どうすればいいのか解らない、僕には幼馴染みの紗綾が居る・・・だけど、美樹の想いも無下にしたくないというか、ここ最近の美樹に対する僕の認識が変わっていた。
最初は近付きづらい苦手な相手だった筈なのに、最近の献身的で本気で僕の事を心配してくれるその姿がいとおしく思えて仕方ない。
かといって、幼馴染みの紗綾を捨てる事もできない・・・どうすればいい?
美樹
「どうした?勇輝?」
勇輝
「いや、何でもない。もう少しこのままで・・・」
美樹
「・・・うん」
美樹を抱きしめた。
今は考えるのをよそう。
問題を先送りにして、美樹の優しさに甘えているだけだが、今は深く考えても仕方ない。
◇◇◇夢◇◇◇
謁見の間に入ると、露出を多目にしたペルシャ風の衣服を着た猫耳の少女が祭壇の真ん中に座っていた。獣人と異なり、毛に覆われている部分が少なく人間に近い外観で、白銀の髪と褐色の肌が対照的で凄く神秘的というか、ランプの精の女の子版って感じです。
ファラ
「ラズとリズ、そしてその他1名、よう来た歓迎するのじゃ♪」
うん、どうやら私はその他1名の扱いらしいです。
しょうがないよね、だって神様同士のお話だもん、人間の私なんてその他1名ですよね。
悔しいから部屋の隅っこで体育座りしていじけてやる!ついでに床に〃の〃の字書いてやる!
ラズロット
「夢たんいじけちゃったです・・・」
ファラ
「まったく、最近の若い者はメンタルが弱くていかんのぉ・・・」
リズロット
「豆腐メンタルなのだ♪」
ええい黙れ!私の豆腐メンタルは生まれつきだから仕方ないの!
いいもんいいもん、そうやってイジるんならここでふて寝してやるから!寝ころがって行儀悪いぞ!どうだ参ったか!
ファラ
「やれやれじゃな・・・ほれ、いい加減機嫌を直すのじゃ。」
突然背後から、ファラに抱き上げられた。
って、祭壇から私の居る部屋の隅っこまでかなりあるよ?
今の私の認識が正しければ、瞬間移動した?
というか、お姫様抱っこ状態が恥ずかしいので降ろして頂きたいです。
夢
「機嫌直すから、降ろして・・・恥ずかしい・・・」
顔が熱い、絶対真っ赤になってるよこれ・・・
何で神様系の人達は皆意地悪なの?
まぁ、ラズとリズとファラしか知らないけどさ!
あんまり苛めると泣くぞ!泣いて困らせてやるぞ!
周りから、酷い神様って思われちゃうがいいさ!
リズロット
「そろそろ、やめてあげるのだ。」
ラズロット
「夢たんが本気でいじけて泣いちゃうのです。」
ファラ
「ウ~ム、仕方ないのう・・・にしても・・・イジりがいのある娘じゃのぉ♪」
とりあえず、ロリババトリオを睨み付けて威圧しときましょう。目に涙溜まってるけど構うもんか!
が、威圧した筈なのに全員笑ってるし・・・
もう知らない!何されても無視してやるんだから!
プイッとそっぽを向いた私を見て、〃やれやれ〃といった感じでロリババトリオが本題の話を始めました。
一応聞き耳はたてときますよ、情報収集ですから。
それにしても、何かやり返さないと気が済みません・・・が、神様相手にどうすれば良いのか解らないです。
今度スノウ君も巻き込んで、デザートに何か仕込んであげようかな?うん、それが良い、双子達の唯一の弱点っぽいしね♪