第47話 非対称
◇◇◇ヴェネ◇◇◇
自室の隣にある指揮所に移動した私は、その場に居る全員の敬礼を受けてから司令官席に着席した。
モニターには刻一刻と移り変わる現況が表示され、現在の状況が手に取る様に分かる。
そしてこの指揮所に居るメンバーは皆優秀だ。
さっきミューアちゃんが顔選び人事と言ったけど、顔だけでここに居る娘は1人も居ない。
なぜなら、私は可愛くても無能な娘は嫌いだら・・・
それでは、真面目にお仕事致しましょうかね・・・
敵はジマラ山脈の拠点に立て籠り、防備を固めた兵力約2000人規模の人が戦う時代遅れの軍隊・・・
それに対し、こちらはエアレールシステムで飛行する。戦闘列車1500編制で安全な場所から無人機やミサイルで攻撃するつもりなので、恐らく人的な被害は出ない、いや出さない!
私の可愛い娘達の危険は作戦の段階で可能な限り排除するのが私の仕事だからね。
それじゃ、魔法兵や魔法兵器の防空網を打ち砕きますかね。
ヴェネ
「ベルゼブ空対空兵装で発進、300機位で割り当ては任せるわ。」
ミューア
「了解!第4・第5航空列車隊に全機発進命令伝達!」
オペレーター
「第4・第5航空列車隊、全機発進せよ!」
私の大雑把な命令をミューアちゃんが的確に必要な命令に変換して必要な部署に伝達する指示を出す。
可愛くて優秀な娘は大好きよ♪
ちなみにベルゼブと言うのは、空対空と空対地の戦闘をこなせる無人戦闘機で、列車に積めるように小型化したのが特長で、色々な場面で使える便利な子です。しかも無人機なので撃ち落とされても人的な被害が一切出ず、更に人が乗ってないので無茶な機動が平気でできるという優れもので、今回は飛び回る厄介な魔法兵を蹴散らして制空権を取ってもらいます。
オペレーター
「ベルゼブ発進完了!」
航空母列車から次々と射出されたベルゼブが、フォーメーションを組んで待機状態となった。
ヴェネ
「全機攻撃目標へ、あとグングニルを何時でも撃てるように着弾地点を魔法兵器の場所に設定しておいて!」
ミューア
「了解!第6ミサイル列車隊、巡航ミサイルグングニル発車準備、目標ポイントは・・・」
私の作戦は単純、まずベルゼブが飛行する魔法兵を引きずり出しつつ殲滅し、グングニルで防空用の魔法兵器を破壊する。その後、無防備になった拠点をクラスター爆弾を抱いたベルゼブで攻撃しつつ接近し、最後は戦闘列車の主砲を撃ち込んで還付なきまでに粉砕する。
実際、あの程度の敵相手に多すぎる位の戦力で、明らかなオーバーキルになると思うが、勇者の存在を憂慮しての編制である。
まぁ、勇者が到着する頃には私達は作戦を終了させているでしょうけど・・・用心するに越したことはない。
幸いな事に、SKBEは戦力を多めに投入する余裕のある組織ですからね。
◇◇◇勇輝◇◇◇
ジマラ山脈に差し掛かった所で、上空を無数の飛行機が僕達が向かっている方角に飛んで行くのが見えた。
ジャミル神父
「不味いですからね・・・SKBEがジマラ山脈の拠点に攻撃を開始したようです。」
勇輝
「じゃあ、あの飛行機は・・・」
ジャミル神父
「拠点攻撃に向かうSKBEの戦闘機でしょう。」
何て事だ!このままじゃ目指す拠点が無くなってしまう。
とにかく、止めさせなきゃ!
でも、どうすれば・・・そうだ!
勇輝
「美樹!飛行魔法を僕に!」
美樹
「どうするつもり?」
勇輝
「何機か落とせば怯んで・・・」
ジャミル神父
「あれは無人機なので、無意味です。」
無人機?人が乗ってないって事なのか?
その時、僕達が目指していた拠点から来たであろう杖を持った法衣姿の人達が、無人の戦闘機と戦い始めた。
戦闘機を何機か落としたが、それ以上の人達が戦闘機の銃撃で次々と空中でバラバラにされていく。
あの人達は、次々と殺されているのに、相手はいくら倒しても死人の出ない無人の戦闘機・・・不公平すぎる。
その光景を見て、怒りが沸き上がってきた。
そして、何とかあの人達を助けたいという思いが僕を突き動かす。
勇輝
「でも!あの人達が!」
美樹
「分かったわよ、ただし私も一緒に行くから。」
美樹が了承してくれた。
前なら、〃はぁ?バカじゃないの?〃って言って、全否定されたのに・・・
この前、泣き止んでから事情を聞いたら〃どれが正しい事なのか解らなくなった〃って言ってたから、〃僕は、この教会の人達の期待に応える事だと思う〃って言ってあげたからかな・・・それから美樹はずっと僕に寄り添うように一緒に居てくれる様になったし、何故か僕に協力的というか献身的になった。正直なところとても心強く感じている。
術式を展開させた美樹はそれを起動させた。
僕の体がふわりと浮かび上がり、自分の意思で自由に飛べるようになった。
勇輝
「ジャミル神父達は、拠点の人達と一刻も早く合流してあげて下さい。僕達は可能な限りここで敵を食い止めます!」
ジャミル神父
「分かりました。お気をつけ下さい。」
僕は頷き、空に舞い上がっり、空中戦の現場を目指す。
美樹も少し遅れて付いてきている。
どこまで戦えるか、解らないけど何もしないよりマシだから・・・それにこんな卑怯なやり方は許せない!