第42話 正義って何?
◇◇◇美樹◇◇◇
今起きたことを順を追って説明する。
1 時間が掛かるのを覚悟で大技準備・・・
2 神奈が余裕ぶっこいて発動まで待機・・・
3 準備完了!ぶっぱなした。
4 神奈が何のためらいもなく避けやがった・・・
5 王宮が9.11状態(今ここ)
神奈
「あらあら、見事なテロ攻撃炸裂ねぇ・・・」
美樹
「ちょっと待てよ!何で避けんだよ!!」
神奈
「だってー、私は〃待ってあげる〃とは言ったけど、〃受ける〃なんて一言も言ってないしぃ♪」
美樹
「ふざけてんじゃ無ぇぞ!このメガネ!!」
そう言い返しつつ、このメガネが言った一言を思い出す。
〃へぇー、頑張るわね。待っててあげるから撃ってきなさいな♪〃
〃待っててあげるから撃ってきなさいな♪〃
〃撃ってきなさいな♪〃
あのクソメガネ女!最初から避けるつもりで・・・
神奈
「不真面目、不誠実がモットーの神奈お姉さんですから♪」
美樹
「殺す!てめえ絶対ぇぶっ殺してやる!」
神奈
「あらあら、怖いわぁ・・・怒っちゃいやん♪」
ふざけてる!絶対に負けない!
こんなふざけた奴に負けたら、今まで真面目に魔法を修得してきた私の苦労はどうなるの?
何で一生懸命やってる私が報われなくて、へらへらとふざけた態度の奴等が報われてるの?
そんなの絶対におかしい!
神奈
「はいはーい♪美樹ちゃーん、かもーん♪」
手招きするポーズと共に、私を挑発するクソメガネ女・・・
私の中で何かがプチンと音を立てて切れた・・・
美樹
「人をバカにすんな!」
怒りに任せて大量の火弾を連続で撃ち込む。
激しい爆炎と煙が神奈を包み込み、その姿を覆い隠す。
だか、怒りの収まらない私は更に火弾を連続で撃ち込み続け、ある程度怒りが収まった所でそれを止めた。
火弾を撃ち込んでいた時には気付かなかったが、爆発により発生した煙で視界が利かなくなっていた。
しかし、あれだけの量の火弾を食らって無事な筈が無い、私をバカにしたからこうなるんだ・・・
美樹
「思い知ったかこのメガネ女!」
神奈
「何を思い知るのかしら?」
美樹
「う・・・嘘・・・でしょ?」
目の前の光景は、私の理解を越えていた。
煙が晴れたそこには、何事も無かったかのように無傷の神奈が浮いていた。
信じられない、あれだけの量の火弾の直撃を受けたはずなのに無傷だって言うの?
神奈
「そうねぇ・・・思い知ったのは貴女の火弾がショボすぎてお話にならない事ぐらいかな・・・それに、グミ撃ちは負けフラグなのよ♪」
美樹
「ちょっと待ちなさいよ!これで無傷で済むならさっきのも避ける必要無かったじゃない!何で避けたのよ!」
そうだ、あれだけの量の火弾を受けても平気なら、悔しいけど、さっきの私の渾身の一撃も全く効かないはず。
なら何で避けたのか全く理解できない。
神奈
「ああ・・・貴女達にテロリストになってもらうためよ。」
美樹
「テロリストですって?何で私達が?」
何で私達がテロリストにならなければならないの?
私達は勇者としてこの世界を救う目的で呼ばれたのよ!
神奈
「考えてみなさいな、貴女達が王宮を襲撃し、王宮の建物を破壊し大勢の死傷者が出た・・・これは勇者のやること?」
美樹
「それは、貴女が避けて・・・」
神奈
「経過なんてどうでも良いの、必要なのは結果。明日のニュースが楽しみね♪十字教会の召還した勇者を名乗る数名がカ・シャール王国王宮を襲撃爆破、死傷者多数。それに併せてSKBE総帥がテロとの戦いを掲げ十字教会との戦争に突入した事を宣言する。」
最悪だ・・・私のさっきの攻撃が戦争の引き金として利用されるなんて・・・
今まで気にしていなかった下の様子を見て、絶望した。
建物が破壊され、火災が発生している。
更に瓦礫の下敷きになったり閉じ込められ煙に巻かれている人達の悲鳴や叫び声、怒号が聞こえる。
美樹
「なんで・・・なんで私にこんなことさせたの?普通に戦争を仕掛ければ良かったじゃない!」
神奈
「ふふふ、懐かしい日本的な甘ったるい考えね・・・戦争を始めるためには大義名分が必要なのよ。特に今のSKBEは強すぎて一方的な戦いになってしまう・・・普通に戦争を仕掛ければ私達が悪者の様に見えてしまうの・・・それだと、十字教会に同情し私達に反旗を翻す者が生まれてしまう危険がある・・・だから貴女達にテロリストになってもらい、平和を脅かす十字教会と戦うSKBEという構図にさせてもらった訳よ♪」
なにそれ?そっちの都合で私達をうまく利用したって事?
私達に悪役になれって事?
ふざけないでよ!私達は勇者で貴女達SKBEの魔の手から世界を救う目的で召還されたのよ!
それに、私達には7大天使さんが・・・
美樹
「無駄よ!私達には7大天使が・・・」
神奈
「怪しげな天使さまのお告げと、メディアのニュース・・・貴女が一般人ならどちらを信じるかしら?」
反論できない・・・確かに私もニュースの方を信じてしまうと思う・・・どうすれば良いの?このままじゃ私達がテロリストにされてしまう・・・
神奈
「さてと、そちらのお迎えが来たようですし、今帰るなら特別に見逃してあげますよ♪」
神奈の指差す方向を見ると、ぼろぼろになった勇輝を担いだジャミル神父の姿があった。
神奈
「これはこれはジャミル神父様、ご機嫌麗しゅう♪」
ジャミル神父
「お黙りなさい!悪魔に魂を売った裏切者め!その勇者はこちらに返して頂きますよ。」
神奈
「あらあら、そうですか・・・もうこちらの用件は済みましたのでお連れ頂いて構いませんよ♪」
ジャミル神父
「その様ですね・・・美樹さん帰りましょう。」
帰る?でもこのままじゃ私達が悪者にされてしまうのよ!
嫌!絶対にそんなの嫌!!
美樹
「でも・・・」
ジャミル神父
「もう私達でどうにか出来る事ではありません!情報戦に私達は負けたんです!!諦めて一旦引きましょう。」
美樹
「私達・・・悪者にされてしまうの?」
ジャミル神父
「大丈夫です!主のお導きに従う限り正義は我々にあるのです!」
悔しいけど、今ここで何をやってもどうにもならないのは解ってる。
だけど、このまま悪者にされてしまうのは凄く嫌だ・・・
ジャミル神父
「今は耐えるのです!我々が正義貫く限りいつか・・・」
今は、ジャミル神父の言葉を信じて退くしかない・・・
私はゆっくりと頷いた。
ジャミル神父はそれをみて、飛び立つち私もそれに続いて飛び立った。
正義って何?・・・もう解らないよ!
誰か教えてよ!
私の心の叫びに答える者は居なかった。