第3話 Snow express
♪~しなやかな風(BGM)
合成音声
「本日はSnowExpressに御乗車頂きありがとうございます。乗客の夢を乗せにアラマフォル駅を発車致しました。」
(BGMが終わるまでの微妙な間)
~♪
♪~ワイドビューチャイム~♪
スノウ(車内放送)
「本日はSKBE(Schwarzes Kreuz Bewaffneten Eisenbahnverband)をご利用頂きありがとうございます。特別列車Snow Expressはフォーロム局地線を通りフォーロムターミナル駅から次元軌道に入りジュバルトメイジシュタット駅に向かいます。停車駅はフォーロムターミナル駅、到着は明日の5時24分、発車は14時47分、終着シュバルトメイジシュタット駅への到着は明後日の8時24分を予定しています。また、この放送の後、室内照明を夜間照明に切り換えさせて頂きます。座席及び通路が暗くなりますので足元にご注意下さい。各個室のお客様でルームサービスをご利用される場合は、備え付けの呼鈴をご利用下さい。目的地までの列車の旅をお楽しみください。」
♪~ワイドビューチャイム~♪
列車が走りだすと、〃トワイライトエクスプレスかよ!〃と思わずツッコミたくなるような車内案内の後、廊下の照明が少し暗くなった。
ちなみに、私が案内されたのは4号車の一等個室なので自由に明るさを調整できる。
部屋には、ベットに机そして壁にはPC内蔵の大型テレビにルームサービス用の呼鈴があり、ひきこもらーの私にとってこれ以上無い快適な空間となっている。更にトイレとシャワー室まで付いている・・・鮨詰め状態の通勤電車がデフォの一般ピープルの私が想像だにしなかった走る落園(誤字ではなく、堕落の園の略)がここにあったのである。感動で涙が出そう♪
ヒュンッ・・・キィィィィィィッ
私が感動のポーズを取っていると、ブレーキ装置の作動音と共に、非常ブレーキがかけられた。
その衝撃でお約束のごとく吹っ飛ばされた私は、見事に壁に頭から激突した。
なんばしょっとねん!
スノウ(車内放送)
「ただいま、野生動物と接触したため、緊急停車しております。点検のためしばらく停車致します。」
痛む頭を擦りながら、窓の外の様子をみてみると、スノウが先程撥ねたと思われる血濡れ大型の鹿の死骸をズリズリと引きずり歩いていく姿が見えた。
そして、線路脇の丁度良い場所(茂み)を見付けると、そこに鹿の死骸をポイッと投げ棄て、両手をパンパン・・・
手慣れてんなぁ、もしかしてしょっちゅう轢くのか?
そんな事を考えていると、棄てられた鹿の首がズルリと動きこっちを向いた・・・私は無言でカーテンを閉めた。
そういうの苦手なんだよしょうがないだろ!!
てか、14歳の少女の反応としては普通だと思う。うん、見なかった事にするのが一番、化けて出ると嫌だしね。
さて、気を取り直して、机の上に置いてあったパンフレットを手に取ってみた。
この列車の案内のようだ。
編成は前から・・・
1号車 キハ8501・・・・3等座席気動車
2号車 キハ8504・・・・3等座席気動車
3号車 キハ8503・・・・3等座席気動車
4号車 キイネ2509・・・1等個室寝台気動車
5号車 キハネフ2506・・3等個室寝台緩急気動車
6号車 キシ8555・・・・食堂気動車
7号車 キロネ8502・・・2等個室寝台気動車
なるほど、分からん・・・てか列車案内のパンフレットに必要な情報なのだろうか?
まぁ、一部のマニアックな方々への心遣いだと思っておきましょう。
トイレは、1号車、3号車、4号車の各個室、5号車、7号車・・・
シャワー室は、4号車の各個室、7号車で、座席車のお客様はご利用できません。
4号車にある浴場及び、6号車の食堂についても同様と・・・座席の貧乏人にはとことん冷たい仕様のようだ。世知辛い世の中ですね。
車輌の沿革・・・
この車輌は、エアール歴(西暦の事らしい)1991年にエアール第5並行世界の名古屋鉄道で老朽化したキハ8000系気動車の置き換え用として製造されたキハ8500系気動車である。
名古屋と高山を結ぶ名鉄特急〃北アルプス〃として2001年まで名古屋鉄道で使用された。
その後、会津鉄道に譲渡され、会津若松と鬼怒川温泉を結ぶ〃会津マウントエクスプレス〃としてエアール歴2010年まで使用された。
その後、廃車の危機に瀕していたところをSKBEが購入し車体鋼板張り替えや強制振り子フリーゲージ台車N-DT281改への換装、寝台車への改造等の徹底的な改修と新造の2500系気動車2輌を編成に加え特別列車〃Snow express〃となり現在に至る。
なお、2500系気動車の外観が24系客車に似せて作られている理由は、この列車を利用される〃双子の邪神様〃が「夜行特急まりもみたいな列車がいい!」と駄々こねられたためである。
・・・どこからツッコミを入れれば良い?
どっと疲れが出た気がする・・・少し寝よう。
そう思った私は、部屋に用意されていた浴衣に着替えベットに潜り込んだ。