第34話 救出作戦
◇◇◇勇輝◇◇◇
ジャミル神父
「だから私は止めたんです!」
勇輝
「申し訳ないです・・・」
今僕達は、ジャミル神父にお説教されている最中だ。
原因は、紗綾が集合の時間になっても広場に現れず、行方不明になってしまった事である。
ジャミル神父の話では、カ・シャール王国軍に捕まった可能性があり、今回の計画が漏洩したと考えて行動するらしい。
良く分からないが、紗綾が捕まったのなら助けに行かないと・・・
勇輝
「えっと、捕まった紗綾はどうやって助けに・・・」
ジャミル神父
「何を言っているんですか?今からここを引き払ってジマラ山脈の拠点まで後退して体制を整えます。助けに行く余裕なんてありませんよ。」
僕が助けに行く話を切り出したらジャミル神父が、怒りの形相で紗綾を助けずここから撤退する事を告げた。
真理
「ちょっと待って下さい!紗綾さんを見捨てるって事ですか?」
間髪を入れずに真理がジャミル神父に抗議した。
そういえば、こっちの世界に来てから紗綾と真理は仲が良さそうな感じだったし、美樹に誘われなければ一緒に行動していただろう。
その辺で、負い目を感じているのかもしれない。
ジャミル神父
「ではお聞き致します。紗綾さんを王宮から助け出す為にどれだけの犠牲が出るかを考えておられますか?」
真理
「そ・・・それは・・・」
ジャミル神父
「そもそもこれは、貴方達が勝手な行動をした結果です。その為に貴重な兵力を犠牲にしたくはありません。」
何も言えない・・・確かにこれは僕達が無理を通した結果招いた事だ。僕達が押し黙っているとジャミル神父は最後にこう言い捨てて部屋を出ていった。
ジャミル神父
「出発は明日の朝です。どうしてもと言うのであれば、貴方達だけで助けに行って下さい。」
バタンいう音と共に、部屋の扉が閉じられた。
美樹
「何あの上から目線・・・本気でムカつくんだけど!」
「大体さぁ、こんな糞みたいな所に押し込んどいておとなしくしろだぁ?頭おかしんじゃない?」
さっきから黙り込んでいた美樹が不満を露にして怒鳴り散らしている。どうやら神父には怖くて言えないためここで文句を言っているようだ。
真理
「どうするの?紗綾を助けに行くんでしょ?」
真理は不安そうに僕の顔を見る。
それは、僕の〃助けに行こう〃という言葉を待っている様でもある。
その様子から、紗綾を助けに行くと僕が言えば間違い無く付いて来るだろう。
問題は美樹の方だ、確かにジャミル神父の言い方には反発しているが、だからといって紗綾を助けに来てくれるかは疑問だ・・・じゃあ、ジャミル神父への反発を利用できる理由を・・・そうだ!
明案が浮かび僕は話を切り出した。
勇輝
「紗綾を助けに行こう。」
真理
「ホントですか!」
美樹
「はぁ?本気で言ってんの?」
予想通り、僕の一言の反応は対照的だった。
雲っていた表情がパッと明るくなった真理、反対になに言ってるのコイツみたいな険悪な表情になった美樹。
ここまでは、真理を引き込む段階、美樹を引き込むのはこれからだ。
勇輝
「だって悔しいでしょ?ジャミル神父に言いたい放題言われて。」
美樹
「それは・・・そうだけど・・・」
美樹の表情が少し緩んだ、もうひと押しかな。
勇輝
「じゃあ、紗綾を僕達だけで助けて、鼻を明かしてやろうよ!絶対あの神父は僕達だけじゃ何もできないって思ってるよ。」
美樹
「それもそうね、あのクソ神父に吠え面かかせる明案じゃない!」
紗綾を助けに行くというプラスの理由じゃ真理しか付いてこない。
なら、ジャミル神父の鼻を明かしてやるというマイナスの理由を抱き合わせしてあげれば良いだけ。
その証拠に、さっきまで否定的な反応だった美樹が非常に協力的な反応になった。
勇輝
「じゃあ、決まりだね。」
真理
「はい!」
美樹
「やってやろうじゃない!」
勇輝
「とりあえず日が落ちてから闇に紛れて潜入しよう。それまではここの人達から王宮内の情報をできるだ集めよう。」
こうして僕達は、日が落ちるのを待って王宮に潜入することになった。成功するかは分からないが、何もせずに紗綾を見捨てるよりはマシだと僕は思う。