第25話 牛さん事件
重連のEF63型電気機関車を先頭にSnow Expressは、神殿の地下に向かうトンネルを下っている。
トンネルはループ線になっていて緩やかな右カーブが延々と続いている。
ラズロット
「ごぉぉぉぉ♪」
リズロット
「ダンダン、ダンダン♪」
ラズとリズは、枕バネの空気を抜いた車輌独特の走行音を楽しそうに真似している。
レールからの震動や衝撃がダイレクトに車体に伝わる感覚は独特で、不思議な感じがして面白い。
スノウ君の話では、このループ線が1時間くらい続くそうな・・・まぁ飽きるよね。
と言う事で、私とラズとリズ30分後には食堂車で時間を潰しておりました。
愚姉?列車に乗るなり自分の部屋に引きこもっております。私が言うのも何だけど、どんだけ怠惰な生活を謳歌してるんだよ!しかもそれで出るとこ出て引っ込む所引っ込んでるベストスタイルだし!
何やっても小学生体型から抜け出せない私への嫌みか!まぁ肥んないだけマシだけどさぁ・・・
食堂車に入ると、フィロがテーブル一杯のスイーツを用意して待っていました。
フィロに一人で準備したのか聞いてみたら、〃蔦の触手使えば簡単だぞ〃と胸を張って答えてくれました。頬っぺたにクリームが付いてて可愛いです。
取り合えず、なでくりまわしておきましょう。ラズとリズも撫でてたけど、この二人の魔力も美味しいので嫌がらないようです。
ちなみに、私の魔力が〃濃厚な味わい〃で、ラズとリズの魔力には〃喉こしさわやか〃が加わるんだとか・・・ビールのCMで見たことある気がする。
それにしても、テーブル一杯のスイーツ・・・絶対に食べきれる量じゃ無いよこれ・・・かといって残すのもフィロが可哀想だし・・・
もうあの怒られてるチワワみたいな泣きそうな顔は見たくないよ・・・って思ってたら、ラズとリズがブラックホールが如くスイーツを吸い込んでいきます。
食べる速度じゃありません、もう吸い込んでるレベルです。あの私よりはるかに小さな身体の何処にあの量が吸い込まれていくのかが疑問です。
もしかして、胃袋の中が異空間になってるとか・・・食べる時に一杯食べといて後からゆっくりと消化する感じの使い方って異世界トリップの小説でも見たこと無いし斬新だと思う。
でも・・・どう見ても牛の胃袋だよねそれ・・・
ラズロット
「牛の胃袋とは失礼なのです!」
あ、牛の胃袋にラズが反応した、そういえば考えるだけで伝わっちゃうんだったね。
失礼とか言うけど、食べてる量は牛も真っ青だと思うよ。
リズロット
「牛言うななのだ!」
何かケーキが飛んできた・・・当然避けたけど・・・うーん牛かぁ、牛さんフード付きの子供服着てる姿を想像してみた・・・・・ぷっ
ラズロット&リズロット
「変な想像するな!」
何か一杯飛んできたので、再び全部回避・・・
スノウ
「ちょっと!食堂車で何やってるの!」
スノウ君に見つかり、到着まで3人揃って正座でお説教される羽目に・・・
でもさ、主な原因ってラズとリズだよね?私巻き込まれただけじゃ・・・てスノウ君に言ったら〃その二人の暴走を止めるのも黒剣士のお仕事でしょ!〃って余計に怒られた。
ちょっと待って、そんな業務内容聞いてないよ?
確か、〃一緒に旅行に付いていくだけの簡単なお仕事〃だったはずだよね?
スノウ君に聞いてみたら、〃そんな楽なお仕事あるわけ無いでしょ!〃っておまけで怒られた。
おのれ邪神!図ったな!
そして愚姉!こうなると分かってて私に丸投げして部屋に引きこもってやがったんだな!
後で覚えてやがれ愚姉!
私の心の叫びを他所に列車は地下に向かうのであった・・・