第1話 あの世じゃない?
しばらく闇の後、突然私の意識は再び覚醒した。
ついにあの世にたどり着いたか・・・そう思いながら私はゆっくりと目を開く。
すると、開いた目には、真っ暗な森の気色が写しだされた。
耳には何処からともなく獣の不気味な鳴き声が届く・・・
一言で表すなら
〃今にも(幽霊が)出そう〃
と言うべき状況である。
私は幽霊とか怪物とか、とにかくそういった怖いものが極端に苦手だ、さらに問題なのはここが屋外である点・・・
何故なら、私は極度の人見知りの引きこもりで外は恐怖の場所なのである。
つまり、二つの恐怖の相乗効果により極限の恐怖空間となった世界のど真ん中に放り出され、身動きする事すらできない状態である。
さらに悪いことに、この状況に対する拒否反応が吐き気となって私を苦しめていた。
もうダメだと、グッタリする私の耳に森の音とは違う人工的な音が聞こえてきた。
ガラガラガラというディーゼルエンジンのアイドリング音である。
とにもかくにもこの恐怖の空間から逃れたかった私は、その先で人に出会う危険性をすっかり忘れ、ほぼ皆無の勇気を振り絞って立ち上がり、音のする方にフラフラとゾンビのような足取りで歩き始めた。