第9話 温もり
♪~μスカイチャイム~♪
スノウ(車内放送)
「本日は、SKBEの特別列車Snow Expressにご乗車頂きありがとうございます。列車は間もなく次元軌道侵入の為の加速に入ります。お立ちのお客様は、危険ですので席にお戻り頂きますようご理解とご協力をお願い致します。」
♪~μスカイチャイム~♪
♪~チャイム(JR北海道)~♪
自動放送
「この先揺れる事があります、席をお立ちのお客様はご注意下さい。この先、基幹本線に入ります。」
♪~チャイム(JR北海道)~♪
駅を出発した列車は、複雑なジョイント音と共に車体を揺らしながら次々と渡り線を渡り長いスラブ軌道の直線に入った。
ゴォォォというバラストの無いスラブ軌道特有の豪快な走行音を響かせ列車は加速し、ついにふわりとその車体が浮かび上がった。
その瞬間、窓の外が眩しい閃光に包まれホワイトアウトした。
そして、その光りが収まると、窓の外には次元のうねりと言って良いのか分からないが、とにかく何かがうねりながら流れる濁流の様な不思議な景色が広がっていた。
その景色に見とれていると、私の乗る列車のすぐ隣をスカイブルーの流線型蒸気機関車に牽引された深緑色の列車がゆっくりと追い抜いて行く。
向こうの列車に乗っていた、旧日本軍の兵隊さんみたいな人と目が合ったので、手を振ってみたら向こうもちょっと恥ずかしそうに手を振ってくれた。
そして、更に列車が追い抜いていって、最後尾の流線型の展望車に〃あじあ〃って書かれてたのにはビックリした。
小学生の時の歴史の教科書に載ってたやつだったしね。確か満州国っていう国を走ってたんだっけ?
ここだけ、先生が変な汚いコピーのプリント持ってきて教科書使わんかったんだよね・・・それ質問したら何故かめっちゃ怒られたし。
何が、"この教科書は歴史を冒涜しているのが分からんのか!"だよ、知らんがなぁ・・・
あの教師なんで子供相手にガチギレしてたんだろうね・・・痛々しいわぁ・・・(笑)
まぁ、話を戻して、満州国・・・どんな国だったんだろうね。
コンコン・・・
未知の国への思いを馳せてたら、ドアがノックされた。
スノウ君かな?そう思い、ドアを開けた瞬間、腕をホールドされた。
ギャアって叫びたいぐらい腕を捻り上げられ、私は身動きが取れなくなった。てか動くと痛いんです。
私をホールドしやがった奴は、真っ黒なフード付きのマント姿で、十字架のネックレスを着けている。
顔は、フードを深々と被っているので確認できない・・・
フード男
「おい、邪神は何処にいる?」
えっと、状況的に友好的な人じゃないよね?
てか、めっちゃ敵意剥き出しだしこの人・・・
フード男
「答えろ!知っている筈だ!!」
痛い!痛い!折れちゃいます!私の腕はそっちには曲がらないんです!!
てか、何なの?猛烈に理不尽なんですけど!
って捻るな!!
もう、何が何だか分かんないよ!何で私が痛い思いをしなきゃいけないの?涙で多分顔くっしゃくしゃだよ多分・・・このクソオヤジマジで死ね!!
てか、誰でも良いから助け・・・
ザシュッ・・・
フード男
「ウグッ」
肉切り音と共に、私の身体は誰かに抱き抱えられ、男から距離を取るように移動した。。
リアン
「怪我は無いか?」
助けてくれたのはリアンさんみたいです。
私の怪我を心配してくれてるみたいなので・・・多分大丈夫なはずと、私が自分の腕を確認した瞬間、凍り付いた。
だって・・・腕に・・・切られた男の腕がくっついてたとか、本気で無理です。
グロ耐性は無いと前から言ってるでしょ!!
なんか、スゥって自分の血の気が引いてくのが判ったよ。
取り敢えず、気分が悪くなってきたから、リアンさんにしがみついて現実逃避しよう。
このまま、意識を手放せば次に起きた時はふかふかのお布団の中に居ると思うし・・・
辛い現実と闘うのは難しいです。
う・・・本格的に気分が悪くなってきた・・・もう無理・・・
リアン
「お・・・おい、大丈夫か?しっかりしろ!」
リアンさんが凄い心配してくれてるみたいです。
さっき会ったばかりなのに・・・
そう言えば、こんなに心配してくれてる人って今まで居なかったな・・・うう、何だか私の人生のショボさに泣けてきたよ・・・
と、ここで私は意識を手放すという現実逃避手段を行使した。
薄れ行く意識の中で、リアンの〃死ねこの変態クソオヤジ〃という叫び声と、銃を乱射する音が聞こえたが取り敢えず気にしないようにしよう。
それにしても、温かいなぁリアンさん・・・
そうして、私の意識は闇に沈んでいった。