失くしもの
昔からよく物を失くすのが青年のくせだった。ちょっとした小物から、会議に必要な大事な資料とありとあらゆるものを失くし続けた。しかし、その事を母に話すと数分後母が見つけてくれる。しかも、さっき探したと思われる場所にだ。まぁ、この現象はなにも俺だけに限ったことではないと思うが・・・。
いつまでたっても物を失くしてしまう青年は色々と対策を試みた。
メモにまとめる。
なるべく物は同じ場所にまとめる。
使ったらすぐに片付ける。
だが結果は恐ろしいほど効果がなかった。
ある日、青年は何かの病気なのでは?と思い病院に行くことにした。
医師からいくつか質問をされ、よく分からない機械に通される。それでも異常はなく原因は不明だった。
しかし、まったく進歩がないわけでもなかった。青年は一度失くしたものは二度と失くしていないことに気がついた。そして、一度物を失くしても母に相談すれば必ず戻ってくる。
母に疑念を持った青年はまだ失くしていないものを部屋の中から探した。押入れの中を探すと数日前に買った服がでてきた。他に失くしてない物もないので、青年はその服の襟の裏側に超小型カメラを取り付け様子を見ることにした。
カメラはネットを通して見える景色を青年の端末に送り込むことができる。そして、青年は服に変化があることを祈り眠りについた・・。
翌朝青年は朝一番に押し入れの中を確認した。そこに服は無かった。
青年は端末でカメラに映っている光景を見ようと電源をいれた。
そこには母と頭の大きなタコみたいなものが映っていた・・・。
「なるほど・・。地球にはこんな物質もあるみたいだな。」
「えぇ・・。でももう地球調査もできないみたい。ほら、息子に私達の存在がばれちゃった。」
青年は面食らった。
わけがわからなかった。
声が出なかった。
母の顔が歪んで見えた。
「そうか。それは仕方がない。ならば始末するしかないな。」
「息子の部屋はここの隣よ。」
ギシリギシリと音が近づいてくる。
なんだあのタコみたいな生物は?
なんで母さんと話している?
そもそも母さんってなんで失くしものをすぐ見つけたんだ?
これは母さんなのか?
「ぱっぱとやっちゃって。」
「か・・・あ・・・さ?」
消滅。