~彼と彼女の雪祭~ 《番外篇》
以前活動報告で通知したように番外篇をA'sへと転載しました。
アキバの街にも雪が振り、辺り一面を雪化粧で白く覆うと。シロエは今年もスノウフェルの季節がやって来たんだなと思う。外では大地人の子供逹が雪玉を作って投げ合っては雪合戦を楽しんでいる。
「懐かしいな・・・・」
「主君?」「シロエさん?」
円卓会議の仕事から戻ってきたシロエとミノリを迎えに来たアカツキは。シロエの呟きに首を傾げる。
ミノリもそれは同じだったようで。同様に首を傾げていた。そんなシロエに、パシャーンという音と共に。雪玉が何個かぶつけられる。そして投げつけた人達からこんな声が聞こえた。
「ロリコンもげろ」「二股乙」「どっちかよこせ~」「見せつけんなよなぁ」
天秤祭以降、こういったやっかみは以外と多い。シロエは自分が巻いた種だからと諦めていたが。アカツキやミノリはそうじゃないらしく。雪玉を作っては投げ返し始めている。流石に女の子二人に雪玉を投げ返す訳にはいかない彼らは。慌ててその場を去っていく。その光景をみてシロエは苦笑いを浮かべた。
「ほんと、アノときと一緒だな~」
それは大災害が起きる数年前の出来事であった。
《~彼と彼女の雪祭~》
スノウフェル。それはエルダーテイル全域で行われる冬季イベントであり。ヤマトでも当然イベントが行われていた。<茶会>はいつものように全員ではなく。7~8人前後でこのイベントに参加するべくエッゾ帝国まで足を伸ばしていたのだが。
「見て見てシロ君♪。おっきな仮免ライダーの雪像があるよ~♪」
「見てますよ。それで、イベントに参加するにしても。残りの人数はどうするんですか?」
「ブラブラしてれば見つかるって♪」
そんなカナミの言葉にシロエは溜め息を付きながら辺りを見回す。参加しようとしているイベントはハーフレイドなので。確かに適当にブラついている人に声をかければ人数は集まりそうだった。そんなに考えを巡らせていたシロエにパシャーンと雪玉が当たる。振り返れば、カナミが笑顔で雪玉を投げていた。
「ほらほらシロ君♪。雪合戦出来るよ~♪」
「いや、そんな事してる場合じゃ・・・・」
「え~。だって私達の住んでる所じゃ雪合戦なんて出来ないじゃない」
可愛らしくむくれたカナミの言う通り。シロエやカナミ逹が住んでいる関東の辺りでは。雪は積もるが、泥が直ぐに混ざってしまって色が変わったり。遊ぶ場所が限られているので。雪合戦の様な若干大規模な遊びは出来なかったりする。シロエもそれは理解してはいるが、今はレイドに参加してくれる人を探さないといけないので。カナミを宥めようとするが。
「シロエ!!カナミが雪合戦をすると言ってるんですからするんですよ!!」
「あの・・・インティクス。『出来るよ~♪』、って言ってただけでやるとは言ってなかったような・・・」
シロエは困って直継に助けを求め振り返ると。直継はソウジロウに「喰らえ。このモテモテ王子め!!」と雪玉をパシャパシャとぶつけていた。ソウジロウはゲーム内の事なので気にしていないようだが。次の瞬間。シロエの眼を疑うような光景が巻き起こっていた。直継が投げた雪玉1個に対して24個もの雪玉が帰ってきたのだ。どうやら近くにいたソウジロウのファンが雪玉を投げ返したらしい。直継はそれにムキになってしまい。雪玉を連続でソウジロウに投げていた。直継はかなり頑張って操作しているらいく。カチカチというマウスのクリック音がけっこう聞こえる。しかし。のほほんとするソウジロウとは裏腹に。ナズナ。詠。沙姫。そして・・・・・。さらに増大したソウジロウのファン×96人から雪玉を投げつけられ始める。その対比はまさに。雪が3で人が7であった。
「死ねおパンツ絶対防壁!!」「ソウジロウ様の仇!!」
「いや死んでませんから」
という、ソウジロウ声は聞こえるが、画面内ではソウジロウの姿は確認できない状態だった。シロエは直継に助けを求めるのは無駄だと判断し振り返ったが。そこにカズ彦とKRの姿は既に無くなっていて、代わりに
~巻き込まれると面倒だから落ちる。《KR》~
~フレ呼んでるからソッチとイベント行くわ。《カズ彦》~
と・・・書かれたメールがシロエに届いていた。これにはシロエも参っていた。
(あの2人・・・・・。僕に押し付けて逃げたな~!・・・・・)
色々諦めて溜め息をつくシロエにまたもやパシャーンと雪玉が当たる。カナミが笑顔で手を振り。
「シロ君、は~や~く~♪」
「シロエ。早く来なさい」
カナミとインティクスに其々手を引かれて引っ張られるシロエ。そんなシロエにパシャーンと、別の方角から雪玉が当たる。シロエが振り返ると。どこかで見た事あるような人達がシロエに。
「2人とか、MAJIDEもげろ!!」
「眼鏡割れてしまえ!!」
「見せつけんなでゴザルよ」
シロエとしては、2人とはそんな仲でもないので。変なやっかみは止めてほしいのだが。今のシロエは周りから見れば。女性2人とキャッキャウフフしてる様にしか見えないのであろう。そして・・・。爆弾娘が爆発するための火種としては十分だった。
「私達<茶会>に喧嘩売った事、後悔させてやりましょう♪」
「カナミの仰せのままに」
「ちょっと!!カナミ!?、インティクスまで!」
そこからは猛烈な雪玉の投げ合い。まさに雪合戦であった。まだそれだけなら良かったのだが。いつしかヒートアップし始めた雪合戦は。タウンの他の冒険者を巻き込み始め。いつしかタウン全体を巻き込む大規模な雪合戦(笑)となってしまっていたのだった。結局その日は1日中雪合戦で。カナミもノリノリで。
「相手陣形を突破する作戦、ヨロシクね♪」
「それも僕が考えるの!?」
「つべこべ言わずに考えなさいシロエ!」
「頼りにしてるわね、シロ君♪」
こうしてタウン全体を巻き込んだ雪合戦は数日に及び。シロエ逹は結局、スノウフェルイベントには、期間中1回も行かなかった。後日話を聞いたにゃん太からは。
「青春ですにゃ~♪、我輩も用事がなければ交ざりたかったですにゃ」
「いや・・・。笑い事じゃなかったんですけど・・・班長」
「それも若さ故の特権ですにゃ」
「そうなのかな?」
「シロエちは、楽しくなかったですにゃ?」
「どうだろう・・・・。多分楽しかった・・・・のかな」
「それならばよかったですにゃ♪」
「二人とも~♪、なにしてんの~、置いてくよ~♪」
「だそうですにゃ、行きますかシロエち」
「そうですね」
2人は急いでカナミのもとへ合流したのだが。
「お~そ~い!、それじゃあ今日も冒険にぃ~しゅっ・・・ぱ~~つ♪♪」
そして・・・・彼女逹はいつもの様に、気の合う仲間逹と共に、
まだ見ぬ光景を目指して冒険へと旅立つのだった。
因みに・・・・・この時の雪合戦が発端となり。
それ以降・・・スノウフェルの季節になると、雪玉を投げ合う人達が増えたのだとか。
その事は・・・・・、シロエ逹の知る所ではなかったが。