~ある日の茶会の死の行軍~
その日。無邪気な笑顔の彼女によって、彼らの一日は地獄?と化した。
「さあ皆♪、召し上がれ~♪」
「うぐぅ·········」
~ある日の茶会の死の行軍~
2月14日。エルダーテイルでバレンタインイベントが行われ。茶会の皆と共にイベントを遊び倒したカナミは女性だけを集めて内緒話を始めた。
「せっかくだから、皆にチョコを作ろうかなと思います!」
「そりゃ皆すごい喜ぶっしょ、アタイもソウジに作ろうっと」
「ちょっとナズナ、抜け駆けは許さないわよ」
「なんだよぅケチ、じゃあ詠と共作でいいよ」
「分かればいいのよ」
「まあ·····。義理とはいえ、少し工夫を凝らすのはいいかもしれませんね」
「でしょ♪でしょ♪」
こうして茶会の女性達による、皆へのプレゼント作りが始まり。各々創意工夫を凝らした料理が完成していった。そして········翌日
「今日は····。一体なんの用で集められたのかな?」
きょうの趣旨を、イベント打ち上げのようなものだと理解していたシロエに、カズ彦と直継は待ち遠しくて仕方ないと詰め寄る。
「分かってないな~、シロエ」
「そうだぜ、シロ」
「だから何が?」
二人は肩を組み、シロエに昨日が何の日だったのかと聞く。
「なにって、バレンタインだよね?」
「「その通り!!」」
「で、それがどうしたの?」
それがどうしたのだ?、と····シロエは本気で思っているらしく。二人は悲しい哀れむような表情でシロエを見だした。シロエはそれにカチンと来たのか二人に食って掛かる。
「さっきからなんなのさ二人とも!!」
「なんて可哀想な奴なんだシロエ·····」
「そう言ってやんなカズ彦····。今日がシロにとって初めてかもしれないんだから」
「なるほど、なら盛大に冷やかしてやんないとな♪」
「いい加減にしないと怒るよ二人とも!!」
既に怒り出しそうなシロエを、二人はまーまーと宥めると。シロエと肩を組み。
「時にシロエ君」
「バレンタインの事は知ってるよね♪」
「いきなりなに?····。そりゃ知ってはいるけど」
「昨日がそのバレンタインだったわけで♪」
「今日、女の子達に呼ばれた訳だよ♪」
「そうだね····」
「だったら!」
「当然!」
「「チョコレートが貰えるでしょう♪!!」」
「············え?」
シロエは呆気に取られる。しかし、そんなシロエに二人は。
「多分女性陣は『せっかくだし義理でもあげよっか』となり」
「皆で作った義理チョコを俺ら恵んでくれるはずなのだ!!」
「はぁ··········?」
シロエはテンションの高い二人について行けないでいると。後ろから二人に別の声が掛けられる。
「二人とも期待しすぎだし、どうせ10円のやつだよ」
「コラァ!!、さらっと夢を砕くなKR!!」
「遅かったねKR」
「ちょっとヤボ用」
「?」
「胃薬、買ってきた」
薬局の袋から買ったばかり胃薬を取り出すKRにカズ彦は。
「うむぅ、そうなる可能性もなくはない·····か」
「あれば大丈夫」
しかし、頷くKRの手から胃薬を奪い取った直継は。
「これは没収回収祭りだぜ」
「直継、しかしだなぁ・・」
「考えても見ろって、花見であんだけ美味い料理を持ってきた
インティクスが付いてて、失敗はしないだろう」
「そうか!!、それもそうだな直継!!」
「だから、女の子に失礼なこの胃薬は捨てる!!」
二人は俄然楽しみになってきたと意気揚々になり、胃薬を近くのゴミ箱へと投げ捨てる。シロエは勿体ないなぁと思って見ていた。
~数分後~
ソウジも遅れて合流し、少し待った頃。女性陣がそれぞれ紙袋を手に持ってやって来た。待ってましたとうるさい二人にインティクスが呆れているのが印象的だ。そして、料理もちこみでカラオケボックスへと行く。
「んじゃまあ、アタシらからね♪」
「ナズナと作ったから、あ!、ソウには別に用意してあるからね♪」
ナズナと詠が二人で作ったチョコは若干不恰好だったが結構美味しかった。しかし直継とカズ彦は。
「ソウジだけ別とは、怒り悔しい祭りだぜ」
「そう目くじらをたてるな直継、その恩恵で俺らにも義理だが
手作りチョコレートにありつけるんだ、許してやろうぜ♪」
「そうか、そうだな♪」
ナズナと詠はソウジに迫り、どっちが食べさせるかでモメ始めたので、気にしないでおく事にした。するとインティクスがシロエ達の目の前に大きな包みを差し出す。
「////折角作ったのですから、ありがたく食べなさい////」
「チョコレートケーキときたか♪」
「絶品感謝祭りだぜ♪」
「インティクスって、実はツン····」
KRは、そこまで喋って急に黙る、よく見るとインティクスにアイアンクローで頭をギリギリと絞められていた。KRがインティクスの手を必死にタップしていたのがなんだかおかしかった。そんな風に皆を見ていたシロエに。
「///シロエも食べなさい、当然義理ですが///」
「はぁ、では···ありがたく頂戴します」
インティクスが作ったケーキはチョコスポンジにチョコクリームを仕込んだ、中々に手の込んだ物だった、甘さも控えめでかなり美味しかった。シロエは食べ終えた紙皿をインティクスへと返すと、頭を下げ。
「ご馳走さまでした、すごく美味しかったです♪」
「///べっ、別に大した事では///」
「やっぱツン········。ギブ·····。頭割れるインティクス·····。
ゴメンなさい····もう言いませんので····。割れる····、マジで割れる···」
インティクスはKRの頭をアイアンクローで絞めながら器用に容器を片付けると。シロエ達の横へ並んだ。
「カナミのチョコ目当て?」
「それ以外に何があります?、KR」
そして、カナミが取り出したチョコレートは。
·····正直、想像を絶する物だった·····
なぜか、鼻を突く刺激臭がしてくる、その物体Zをニコニコと笑顔で差し出してくるカナミ。隣を見るとインティクスも流石に引いていた。すると直継が··。
「インティクスさんや」
「なんでしょうか」
「一緒に作ったのでは?」
「いいえ、全員別ですが」
「「のーーーーーーーーーーーーーーーーう!!!!!!」」
インティクスの言葉を聞いたカズ彦と直継は床を叩き、絶望を顕にする。
「なぜ!!、なぜ最後にこれなんだ!!!」
「最後がコレだと知っていれば、インティクスのケーキを残しておいたのに!!」
「私も失敗しました、せめて胃薬でもあれば」
インティクスのその言葉にカズ彦と直継の二人はKRへと振り返り。
「KR!!、俺が悪かった!!、だから慈悲を~!!」
「捨てたの直継でしょ···、諦めなよ」
「どうしたの皆、遠慮しないで食べて食べて♪」
その日·······。無邪気な笑顔のカナミによって。彼らの1日は地獄(笑)と化した。
「さあ皆♪、召し上がれ~♪」
「うぐぅ··········」
刺激臭のするカナミ作のチョコらしき物体Zを前に息を飲む面々。
「こいつぁ、過去最高難易度のイベントだぜ。クリアできる気がしねぇ···」
「この物体Zにどう立ち向かえばいいんだ····」
絶望に囚われた面々の中、勇敢な行動に出る人物が。
「私のカナミへの愛を、今!!、証明してみせます!!!」
「インティクス!!」
「よせーーーー!!!」
パク···· バタン!!! !?Σ(’□’;) ·····シーン·····
((((;’□’))))((((’□’;)))) ガクガクブルブル
インティクスはカナミへの愛に挑戦し帰らぬ人に·····。そしてカズ彦や直継とKRさえも、息絶えて·····。
「いや、皆死んでないから!!」
「はい、シロ君も♪」
「いや、あの、その·····」
「シロ君はビターなのがいいかもって、色々混ぜてみたの♪」
「色々ってなに!?」
「コーヒーとか、あとよくわかんないのとか♪」
「よく分かんない物はいれちゃダメ!!」
「シロ君、食べてくれないの?······」
シロエが頑なに拒否したせいか涙眼になったカナミに上目遣いで懇願され、困ったシロエは助けを求めようとしたが。
直継 ← カナミのチョコを食べて気絶中
カズ彦 ← 同じく気絶中
KR ← 気絶中
インティクス ← 気絶中
ソウジ&ナズナ&詠 ← 知らない間に何処かへいった。
「シロ君~····」
「あ~~~もう!!、どうにでもなれ!?」
涙眼で上目遣いで迫るカナミに押しまけたシロエはカナミのチョコを口に運ぶ。
バタン!!
「シロ君!!、しっかりして!!シロ君!!!」
倒れたシロエをガクガク揺さぶるカナミの声を朦朧とした意識の中で聞いたシロエは。
「味見は······して·····くだ····さい········ガクッ」
「シロくーーーーーーーん!!」
·····後日·····
リベンジに燃えるカナミは、インティクスの数回もの犠牲の上クッキーを完成させ。ホワイトデーに配ろうとしたが。シロエ以外受け取ってくれなかった。
·····余談·····
シロエとインティクスが
カナミ係に任命されたとか、されないとか。