第六話 PK
今日もアガーテとエッダを蹂躙する。
相変わらず無言で成すがままになっている。
欲望の赴くままに犯し続けた結果だ。
「おら、俺を楽しませろ!奴隷なんだろう?!」
怒鳴った所で変る訳は無いが・・・
それでも俺は、こいつ等を犯す事をやめない。
明日行う狩り(PK)に興奮しているのか。
俺の欲望は止まる事はなかった。
この世界に来たとき、俺は感激の余り嬌声を上げたものだ。
家族は俺を馬鹿にして哀れみ避ける。
仕事先では毎日しごかれて地獄のようだった。
同僚にも苛められていた。
見た目がアレなもんで、女性からは気味悪がられた。
もちろん彼女など出来た事はない。
そんな俺の楽しみは、異世界物の小説だ。
チート能力を授かり、ちょろインとイチャイチャする。
夢のような世界に憧れるだけが俺の支えだった。
チュートリアルが始まり、俺は小説の主人公のようになれると思っていた。
スキルも熟慮した。
火魔法をスキルP6も使って取り、魔法を使える俺最強とか考えていた。
残りでオーソドックスな剣術2と盾術2を取る。
絶対に生き抜くためにも、冒険者として活躍するためにも・・・
初戦闘でスライムを倒したときは感動した。
必死になって林を抜け、町に着いたら早速ギルドにも行った。
異世界の定番に歓喜し、俺は人生をやり直せると思っていた。
そう、主人公になれると信じて。
なのに。
俺は結局現実と変らない屑だった。
LVが10になってもステータスは何も特別ではなかった。
【名前】ダイチ・イチミヤ
【LV】10
【年齢】22才
【種族】人間
【状態値】HP64/64・MP66/66
【攻・防】120/40
【能力値】S21・V16・I22・A13・D16
【スキル】剣術LV2(0/6)・盾術LV1(0/4)・火魔法LV2(0/6)・鑑定・ストレージ
【固有スキル】なし
【スキルP】2
【所持金】93,100G
【装備】銅の剣ATK15/皮の鎧DEF8
ちょっと強い冒険者と同じ位でしかなかった。
小説のように甘くは無い。
稼ぎは武具に消え、ちょろインなど存在もしない。
LVが上がれば変る筈だ!
必死になるも変化は無い。
俺の妄想は吹き飛び、心は荒んでいった。
そんな俺の前に奴は来た。
そいつもまた、俺と同様に林から町に来た。
一目で同じ境遇の人間だと解る。
黒髪黒目、鑑定には見たことの無い種族名。
【種族】プレイヤー
俺は理解した。
この異世界における俺達の存在を。
俺は打算を持って奴に近付く。
同郷の誼を利用して、俺の為に活躍して貰うために。
上手く取り入り2人でPTを組み、一緒になってLVを上げた。
見る見る上がるLV。
そうさ、信用させ俺を引き上げるために利用したのだ。
媚び諂うように奴に仲良くした。
俺が生きていく為に。
奴は元々フェンシングをしていたらしく、『剣術』スキルLVが7に出来ていた。
しかも『剣術』スキルのお陰か、『身体強化』まで取得出来ている。
その為、ステータスの強化が異常なほど成されていた。
スキルPも違う。
俺がLV1につき1個なのに奴は2個出てくる。
俺と奴のステータスやスキルの違いを基に色々試し考察した。
どうも此処に来る前に、生きて来た成果がステータスに現れるようだ。
武道を嗜んでいた奴は、明らかに此処でも優秀だった。
関連スキルは自己で取得する可能性がある。
だが素質が無ければ取得は出来ない。
武道などした事の無い俺は、『身体強化』を取得できなかった。
ましてや武道関連は最初に取った以外全く駄目だった。
唯一魔法だけは2種まで取れたが、必要スキルPが半端なかった。
スキルの恩恵で強くなっていく奴。
片やどんなに頑張っても碌でもない俺。
突きつけられる現実。
奴のステータスは俺を遥かに越えていた。
嫉妬した、憎悪した、。
俺は雑魚でしかなく、奴は主人公である事に。
だから必死になってLVを上げ、奴を見返そうとした。
LVが上がる事で奴を見返せるかもと思い。
変れば俺のちっぽけなプライドが満たされると考え。
必死になって奴が休む日もモンスターに挑んだ。
せめてそれ位しか勝るものが無かったのだから。
それは突然だった。
俺はLV30になる。
驚きと歓喜が俺を満たす。
あのアナウンスがまた聞こえたのだ。
しかもPKが出来る・・・PKで自分以外の優秀な奴らを殺せる。
これはチャンスだ。
奴ももうLV29だ。
アナウンスまでは、LVUPから多少時間差がある。
30になった瞬間を狙えば俺でも殺せる。
幾ら腕が立つとはいえ、気を許している相手には隙が出来る。
不意打ちを掛ければ造作も無い。
だから!奴の象徴である『剣術』を奪ってやる!
だって俺は、主人公になりたいのだから。
奴とPTをしながら時期を待つ。
ピロロ~~ン。
上がった!!
LVが上がり喜んで俺に報告しようとした奴は無防備だ。
俺も笑顔で素早く近付き、奴の喉元に剣を突き立てる。
驚愕に表情を歪ませ、血を噴きながら倒れる奴。
上手くいった、PTの場合相手を攻撃出来ないという心配は無かった。
何故なら、事前に奴に攻撃を軽く当てたからだ。
もちろん偶然を装って。
結果、見事に傷が出来ていた。
平身低頭謝って、直ぐに狩りに戻ったから奴は気付いていない。
普段プレイヤー保護が働いている事に。
俺は笑った。
奴を殺して、自分が主人公になれると思ったから。
直ぐにPK報酬画面が開き、スキル選択を表示する。
迷う事はない。
『剣術』LV7を選び取得する。
すると、何故かスキルPが増えていた。
そうか、そう言う事か。
PKできた者だけが知る事実。
率先してPKし合う為の餌がこれか。
奴の獲得スキルPが全て、俺に入ってきた。
全部で60P。
俺は『剣術』により鋭くなった感覚を頼りに『身体強化』を取得する。
そうか、そうか。
素質が無くとも、素質ある者から奪えば関連スキルも取得可能なのか。
しかも俺と奴では、スキルLVUPに必要な消費スキルPも違う。
俺のように素質が無い者は、スキルLVを上げるのに膨大なスキルPがいる。
持たざる者が持つものから奪い強くなれる。
はは・・・ははっははは。
いいぞ、いいぞ俺は絶対に主人公になってやる!
スキルを自由に弄れる事がこんなにも楽しいとは。
『身体強化』はLV5までだったがMAXまで上げる。
素晴らしい、ステータス強化が凄い。
俺は雑魚では無くなった。
人を殺しても喜びしか沸かなかった。
強くなれる。
嫌な奴を消せる。
俺を自己嫌悪させるものを無くせる。
あっちでは、苛められる者が苛める者に制裁を行うには手間が掛かりすぎる。
警察・裁判でやっと制裁できたかと思っても、加害者が断罪されるとは限らない。
しかも生きている以上、違う方法でまた被害者を追い詰めてくる。
泣き寝入りしかなかった世界。
居なくならないのだ。
殺人犯でも10年もしないで刑務所から出れる世の中だ。
だから此処は俺にとって最高の世界だ。
嫌な奴を殺して、永遠に目の前に現れないように出来るのだから。
それから、俺はもう1人のプレイヤーを殺すことが出来た。
何故か?
奴を殺した時に、取得できていたんだよ『暗殺術』を。
俺の素質は『暗殺術』に現れていた。
LV7に出来たのだから。
あっちではそんな経験も無いのに何故か出来るLV7。
俺の嫉妬が引き起こした行為がそうさせたのか?
それともこの世界での経験も生きてくるのだろうか。
これからはもう俺は雑魚じゃない。
俺は、雑魚じゃない!!!
スキルを奪い強くなれば稼ぎも良くなる。
そうなれば、ちょろインも要らない。
奴隷を買い欲望を吐き出せばいい。
だって、その方が俺は王様で居られるから。
俺は此処で好きに生きてやる!
今日来た馬鹿も俺の餌食だ。
【名前】ハヤト・ウネハナ
【PT】イリス(LV5)
【LV】24
【年齢】16才
【種族】プレイヤー
【状態値】HP581/623・MP243/518
【攻・防】958/338
【能力値】S90・V82・I91・A89・D90
【スキル】刀術LV5(0/6)・剣術LV1(0/2)・棒術LV3(0/4)・格闘術LV7(0/0)・身体強化LV5(0/6)・毒耐性LV3(0/4)・麻痺耐性LV1(0/2)・催眠耐性LV1(0/2)・索敵Lv3(0/4)・鑑定・ストレージ・ラーニング
【固有スキル】采華一刀流
【スキルP】22
【所持金】31,100,100G
【装備】鋼鉄の刀ATK54/皮の鎧DEF8/魔法のマントDEF6
また、俺の邪魔をしそうなステータスの持ち主だ。
だからこそ潰してやる!
潰したら『格闘術』でも奪い取るか?
それとも『索敵』もいいな。
俺は2人の人間を殺していた。
だから慢心していたのだろう。
それと、ウネハラの持つラーニングに全く警戒していなかった。
次の日俺は堂々と街の中に居た。
暗殺など微塵も感じさせないように。
正々堂々の勝負を仕掛けると思わせる為に。
そして、夜の闇の中、ウネハナを待ち構え『暗殺術』で奇襲をかける。
だが、奴は俺の動きを読んでいた。
しかも『暗殺術』で気配を解らなくしているのに攻撃を避けた。
何故だ!
俺は最強だ!
俺は王様だ、何故大人しく殺されない!
俺は死ぬ瞬間まで、勝利を確信していたのだ。
プレイヤーは俺の為の餌だと。
壊れていたのか?
そう言えば奴の名前はなんて言ったっけ?
ケイイチ?
そうケイイチ・タカスギ。
そうだ、ケイだ。
薄れ行く意識の中で俺は呼びかける。
ケイ、俺なんでこうなったのかな?
瞼が閉じてきて、視界がぼやける。
最後に見たのは、悲しそうな目をした、ウネハナと言う少年の顔だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目の前で倒れる男に手を合わせる。
やはり殺し合いは避けれなかった。
「ご主人様、どうして手を合わせているのですか?」
「ああ、これは俺の国の死者への礼儀作法だ」
「そうですか・・・襲撃者に手を合わせるなんて、変な礼儀作法ですね」
そうか。
この世界では、襲ったからと言って相手を弔う事はないのか。
「変かもな?でも俺の国ではどんな人間でも死者への礼儀は欠かせないのさ。たとえ相手を憎んでいたとしてもな」
「・・・そうですか。じゃあご主人様がそうするなら、私も一緒に」
俺を真似してダイチに手を合わせるイリス。
2人して手を合わせ終わり、事の顛末をギルドに報告に行く。
出来ればPKなどしたくなかった。
ダイチの亡骸を振り返り、PKの経緯を思い出す。
町には慎重に戻り、ダイチの動向を『索敵』で常にマークしていた。
黒点は他にはない。
ダイチにだけ集中すれば良かった。
町に入っても黒点は動く気配が無い。
俺を侮っているのか?
それとも自信たっぷりなのか?
ダイチも『索敵』で俺を警戒しているのか。
どんな手段かは解らないが気を許す事はできない。
日も暮れ始める町は暗くなっていく。
相変わらず黒点は動かない。
襲撃を警戒しながら夕食に向かう。
終始無言でピリピリと緊張感を漂わせる俺に、イリスは声を掛けてこない。
心配そうな目はするものの、言葉が出ないのだろう。
無言のまま食事をする。
異様な雰囲気だったろう。
定員の声も上擦っていたしな。
食事も終わり、真っ暗になった町にでる。
その時、ダイチの黒点付近に居た青点2つが動いたのだ。
アガーテとエッダと表示されるそれは、迷う事無くこっちに来る。
どうやって俺を監視していたかはこの際どうでもいい。
『索敵』か、それとも尾行を雇っているのか。
考えても意味が無い。
俺は、すぐに店から離れ、周囲に配慮できそうな人気の無い裏路地へ入る。
アガーテとエッダを待ち伏せる。
現れた2人は、俺を見て慇懃に礼をして話しかけてきた。
「ウネハナ様、お初に御目に掛かります。我が主イチミヤが是非ともお話がしたいと申しております」
「話だけか?」
「いえ、その前にお楽しみをご用意いたしましたのでお受け取りくださいませ」
「受け取る義理が無い」
「そう仰らずに、今までさぞ若い肉体を持て余しておいででしたでしょう」
色仕掛けか?
娼館にでもいけというのか?
「色町で病気など心配する事無く、まずは存分に私共のご奉仕を受けていただき、主の誠意を受け取ってきたいと」
「何を言っている」
突拍子も無い経緯に警戒感を強める。
アガーテとエッダは俺を気にする事なく衣服を脱ぎ捨てていく。
「どうぞご覧下さい。私共は何も持っておりません。さあお好きにして下さいまし」
そういって一糸纏わぬ姿で俺に抱きかかってくる。
腕を取りしな垂れ、俺に媚を売るように見詰める。
「ご・・・ご主人様・・・私は宿に・・・帰ったほうが」
イリスは赤面しながら後ずさりして距離を置いていた。
俺が女性を抱くからと、この場を離れようと考えたのかもしれない。
「いや、いつでも『サンクチュアリ』を出せるようにしておけ」
「ええ!?あ、はい」
俺の言葉で察したのか、赤面は収まる。
「まあ物騒な事を、私共は何も致しません。ただ抱いて下されば・・・」
アガーテとエッダは尚も俺に媚びて来る。
体を弄り、俺がその気になるように。
つい俺は2人に意識が向きすぎていた。
気付けば黒点は消えていて、MAPの何処にも表示されない。
「っつ、しまった!」
罠に嵌められた。
『索敵』から逃げおおせるスキルがあったのか!
気を引き締め周囲を伺う。
どこにも気配はない。
罠と知り、俺がアガーテとエッダを振り払おうとする。
だが、必死に掴みかかり離れない。
顔を見ると、2人は途端に得も言われぬ恍惚の表情をする。
「これで開放される・・・やっと死ねる・・・嬉しい・・・」
そういったかと思うと、2人は光り輝き爆発した。
爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる。
耳鳴りが響き眩暈が襲う。
吹き飛ばされて体も痛い。
痺れて思うように動かない体。
そこに爆発したアガーテとエッダの肉片が纏わり付いている。
肉片が邪魔で余計に動きが取れない。
くっそ!なんて事を!
イリスは?
心配になりイリスを探す。
俺と離れていた為、無事のようだ。
さっき宿に帰ると、来た道を少し戻ったのが幸いした。
「イリス!『サンクチュアリ』と『ホーリーバリア』を2重展開しろ!」
イリスに指示を出し、俺は『耳障り』を周囲一帯に向かって放つ。
念の為に『あまい息』と『毒の息』を展開する。
俺が立ち上がろうと頭を右に振った瞬間。
頭のあった場所に短剣が突き刺さった。
「あれ?外した?」
そこには短剣を手に、俺を見下ろすダイチがいた。
「う~んそうは動けないだろうし次で終わるだろう」
ダイチは2撃目を俺に向かって放つ。
今度は的の大きい胴に向かって。
「あれ?はずれる?なんで?」
困惑するダイチ。
「なんでだよ!なんでだよ!なんで死なないんだよコノ野郎!!」
無茶苦茶に短剣を突き立てるダイチの攻撃は、俺に当たらない。
全てあらぬ方向に短剣が向かっていくからだ。
『耳障り』に犯され思い通りに動けないのだ。
「どうしてこんな事を!それに・・・PKの為だけにアガーテとエッダを捨石にしたのか!」
「っは!もう要らなかったんだよあんな人形!お前を殺したら、また違う奴隷を楽しむさ!!はっはは!」
狂ってやがる。
このままでは、俺は殺される。
そしてイリスまで!
「心配するなよ~あの奴隷も可愛がっってやるからよ~」
「やめろ・・・」
「ああああん!馬鹿いうな!死に損ないが!」
猛り狂うダイチに、俺は覚悟を決めて『雷撃』を打つ。
身動きが取れず、辛うじて動くのは右腕のみ。
少しだけ手を挙げ、ダイチに向けて差し出す。
手のひらから放たれた『雷撃』は、ダイチの持つ短剣目掛けて降り注ぐ。
『雷撃』は発動までのタイムラグが無いので相手の虚を付き易い。
幾重にも重なる雷の滝は、ダイチの短剣を通してその身を焼いた。
落雷に打たれたようにビリビリと痙攣している。
相当のダメージを受け、へたり込むダイチ。
その身は黒く焦げ、煙を上げている。
「あ?なにこれ?・・・俺が殺されちゃうの?ふは!ないわ~ないない・・・グハ!」
吐血を吐き、呆然とするダイチ。
「え?毒?『毒の息』か?ええ?お前・・・そうか、ラーニング・・・そうだった・・・の・・・か」
平衡感覚が狂っていた事も、毒に掛かっていた事も気付いていなかったらしい。
ラーニングを今わの際に悟ったのだから観察眼もあったのだろう。
それなのに慢心からか油断していたんだと思う。
でなければ、小細工などしなかったろう。
『索敵』に掛からないスキルで、俺を刺せば終わったはずだ。
何かに狂い自らを過信させた末路か・・・
哀れなダイチは地面に突っ伏し、虚ろな目で俺を見ながら息を引き取った。
その目を見ながら、俺は自らに問いかける。
何時か俺もこうなるのか?
イリスの諫言に救われた俺は、まだマシなのか?
「ご!ご主人様!ご無事で!」
「ああ、何とかな。『ヒール』を頼めるか」
「はい!はい!もちろんです!座ってください。今癒しますから」
身動きが取りにくい俺は、よろめきながら座る。
すかさずイリスが背中越しに抱き付きながら、体全体で『ヒール』を掛けてくれる。
そんな芸当できたっけな?
今はいいだろう。
イリスの暖かさと『ヒール』の癒しがとても嬉しかった。
癒されながら目の前に出たPK報酬画面を見ている。
報酬スキルが並び選択を迫って来る。
こんな事の為にPKなんて・・・
選ぶのを躊躇してても一向に消えないPK報酬画面。
こんな事態がまた起こるかもしれない。
だったら俺のする事は!
意を決して『暗殺術』を選ぶ。
自分には無いものを強化するのだ。
生き残る為に必要な事をするのみだ!
スキルが入り込んできて『暗殺術』が理解できた。
そうか『クローキング』が正体だと。
『索敵』を脱がれたものは、これだったのか。
こんなものがあるからダイチは・・・
俺は追加で入ってきた31PのスキルPを受け入れる。
もう何があっても結果は変らない。
人を殺したのだから。
PK報酬画面が閉じ、今回の殺し合いが終わりを告げる。
「ありがとうイリス。もう十分だ」
「グズ・・・ばぁい・・・ごじゅじんざま」
いつ間にやら泣いて顔面崩壊している。
イリスを見て笑いがこみ上げる。
気分が少し晴れ、また冷静さが戻ってきた。
「こういう場合はどうしたらいいんだ?」
「グズ・・・ばぁい・・・ぞの、ギルドに報告をするのです」
「解った」
立ち上がり、死んだダイチを見下ろす。
俺は自然とダイチに手を合わせていた。