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第四話 支援

 翌日、朝早くからイリスの登録とPT申請にギルド行く。

 相変わらず朝早くは人がいない、好都合だ。

 カウンターへ行くとフィリーネが受け付けてくれる。


「イリスの登録とPTを申請したい」


「え?もう奴隷を買われたのですか!?」


 驚くフィリーネ。

 薦めてきたのに何を言っているのやら。


「薦めてくれただろう?」


「え・・・確かに薦めましたけど、そんな女の子とは思っていなかったし、それに結構優良物件だと思ってた矢先に・・・ブツブツ・・・あの子に骨抜きにならないかしら・・・ック昨日もっとアピールしておけば・・・」


 ブツブツと言っているが気にしないでおこう。

 フィリーネの魂胆も解った。

 なら、俺にはそんな浮ついた暇はない。


「早く登録とPTを頼む」


「あ、えっとはいはい、登録ね」


 早々に妄想から抜けてもらい、イリスを冒険者登録する。

 あと、PTを申請してイリスと組む手続きをする。


「では、各自ステータス画面でPTが組まれた事を確認してください」


 言われるままにステータス画面を開く。


 【名前】ハヤト・ウネハナ

 【PT】イリス(LV5)

 【LV】24

 【年齢】16才

 【種族】人間

 【状態値】HP581/623・MP243/518

 【攻・防】958/338

 【能力値】S90・V82・I91・A89・D90

 【スキル】刀術LV5(0/6)・剣術LV1(0/2)・棒術LV3(0/4)・格闘術LV7(0/0)・身体強化LV5(0/6)・毒耐性LV3(0/4)・麻痺耐性LV1(0/2)・催眠耐性LV1(0/2)・索敵Lv3(0/4)・鑑定・ストレージ

 【固有スキル】采華一刀流

 【スキルP】22

 【所持金】31,100,100G

 【ラーニング】突進LV1(0/2)・噛み付きLV1(0/2)・毒針LV1(0/2)・鉄拳LV1(0/2)・マジックミサイルLV5(0/6)・スパイダーネットLV3(0/4)・水鉄砲LV5(0/5)・狐火LV5(0/6)・雷撃LV5(0/6)・三連撃LV3(0/4)・火炎剣LV2(0/3)・吸血の呪いLV1(0/2)・火炎LV5(0/6)・氷結LV5(0/6)・串刺しLV3(0/4)・ソニックブレイドLV3(0/4)・毒の息LV2(0/3)

 【装備】鋼鉄の刀ATK54/皮の鎧DEF8/魔法のマントDEF6


 名前の下に【PT】が追加され、イリスの名が出ている。


 登録は完了したようなので、今日の依頼を探す。

 今回はEランクを2個同時に受けた。

 内容はゴブリン退治とコボルト退治だ。


 2つ受けたのには訳がある。

 東の森にいる討伐モンスターが被っている事。

 後はランクを早々に上げる為に手っ取り早い方法だと思ったからだ。


 ギルドを出てイリスの装備を買いに武具店へ行く。

 イリスに合う武器と防具を買うためだ。

 これからPTで支援担当して貰うのだから。

 

 イリスは朝から緊張しているようだ。

 幾ら戦闘奴隷として売られていたからといって、戦闘経験がある訳ではない。

 あくまで戦闘ができる条件が見合った奴隷と言う事だ。


 一応、支援のレクチャーをしているから、そのように動くとは思う。

 が、期待しないでおこう。

 終始イリスは無言で俺の後を付いて来ていた。 


「イリス、必要な装備を言え」


「はいご主人様」


 素直に返事するが、顔は引き攣っている。

 今日の戦闘に頭が一杯なのだろう。

 それも、戦闘を何回かして慣れてくれるといいが。


 結局、店ではイリスに合った樫の木の杖と魔法のローブを買う。

 それらを装備させ、依頼をこなす為に東の森に行く。


 昨日と違い、東の森は静かだった。

 ゴブリンキングを倒した影響かもしれない。


 森を進み奥深くまで足を踏み入れる。

 何度も『索敵』でゴブリンをさがす。

 森の奥深く、少し開けた断崖付近にゴブリンを発見する。


「見つけた」


 依頼はゴブリンが5・コボルトが7だ。

 見つけたゴブリンは30体以上なので十分な数だ。


 岩場に洞窟があり、その中からゴブリンの反応がある。

 おそらく巣なのだろう。

 幸先がいい。

 

 イリスにゴブリンを見つけた事を知らせ、巣に近付く。

 緊張のし過ぎか、イリスの動きはギコチない。

 最悪、1人で何とかするしかないな・・・ 


 断崖に近付き、距離を測りってゴブリンの巣を木陰から伺う。

 『索敵』で確認する限り、見張りの2体以上は洞窟の中だろう。

 どうやって燻り出すか。


 横を見やりイリスを囮に使うかとも思ったが、たぶん無理だろう。

 それに・・・まあよそう、奴隷といえそこまでさせるのも酷だろう。

 まずはゴブリンを巣から引き摺り出す事だ!


 俺は巣の前に身を乗り出し、見張りをしているゴブリンの注意を引く。

 ゴブリンは俺を見て奇声を上げ襲って来た。

 襲ってくるゴブリンに向かって『スパイダーネット』を放つ。

 2体のゴブリンは蜘蛛の巣に絡まれ、地面に倒れる。


 ゴブリンは蜘蛛の糸に絡まれ、身動きが取れない。

 動きの取れないゴブリン目掛けて、装備しているミスリル棍を振り下ろす。

 

 ゴキュ!!


 鈍い音がして、ゴブリンの手は潰れ骨が砕ける。


「ギョェェッェェェエ!!」


 ゴブリンは苦痛の声を上げ、必死に何か叫んでいる。

 続けて腕・足・腿などを叩き潰しながら2体のゴブリンを痛めつける。

 痛め付ける度に、悲鳴を上げるゴブリン。


 悲鳴を聞きつけたのか、洞窟の穴からゾロゾロと他のゴブリンが出てくる。

 しめた!

 思った通り、ゴブリンの悲鳴に仲間が出てきたようだ。


 ゴブリン達は俺を見て奇声を上げる。

 そして地面に伏す仲間を確認すると、怒り狂ったように突進してきた。

 掛かってくるゴブリンは5体。

 これにも『スパイダーネット』を放ち絡め取る。


 『スパイダーネット』を避けたゴブリンがショートソードを振り上げて迫ってくる。

 攻撃を難なく避け、ミスリル棍で足払いをかける。

 足を払われたゴブリンは後ろ向きに転倒してもんどりを打つ。


 倒れたゴブリンに向かって『スパイダーネット』を放ち地面に縫い付ける。

 後は同じだ、悲鳴を上げさせ、仲間を呼ばせる。

 ミスリル棍を振りかざした所で、俺の右脇が痛む。


「ック!」


 振り返るとゴブリンが俺の脇腹に剣を突き立てていた。

 くそ!


 どうやら『スパイダーネット』の網を抜けたものがいたらしい。

 右手でミスリル棍の下手を持ち、左手で反対の棍先を押し込み後ろに向かって突く。

 勢い良く後ろに飛び出す棍撃は、見事にゴブリンの頭を貫通する。


 事切れたゴブリンが倒れると、刺さっていた剣も抜ける。

 血が噴出し、力が抜ける。

 後ろを振り返り、イリスの支援を期待したが無駄だった。

 イリスは腰を抜かしガタガタと振るえ座り込んでいる。

 

「駄目か」

 

 俺は、ストレージから薬草を出しかっ食らう。

 傷が塞がるまで食べ続け、力が戻った所で止める。


 イリスは放置して、先程同様ゴブリンを痛めつけ出した。

 悲鳴に釣られて出てくるゴブリン。

 今度は油断せず、確実に1体1体『スパイダーネット』で絡め取る。


 それからあっという間に洞窟内のゴブリンは、全て捕らえられ地面に転がった。

 動けないゴブリンに向かって『火炎』を放つ。

 火炎放射器のように手から出る炎は、転がるゴブリンを容赦無く燃き尽くす。

 動けないゴブリンは成すがままに焼かれ、光となって消えていった。


 合計で34体のゴブリンを焼き尽くすと、ピロロ~ンっと音が鳴る。

 どうやらLVが上がったようだ。

 ピロロ~ン

 ピロロ~ン

 ピロロ~ン

 ピロロ~ン

 ピロロ~ン


 ん?何故連続で聞こえる。

 俺のLVUPじゃないようだ。

 振り返ると、まだイリスが青い顔で震えながら、驚愕の表情で腰を抜かしている。


「どうした?LVが上がったのだろう?」


「・・・・・・・」


 ガクガクと震えながら俺を見るイリス。

 仕方なく、ステータス画面で確認する。


 【名前】ハヤト・ウネハナ

 【PT】イリス(LV11)

 【LV】24


 上がってるじゃないか。

 俺が確認してどうする。


 イリスは相変わらず震えて役に立たない。

 仕方なく俺が、ゴブリンのドロップを拾いに戻る。

 アイテムを全て拾い終わり、腰を抜かすイリスを抱きかかえてその場を後にする。


 お姫様抱っこでイリスを抱えながら、安全そうな場所で一息入れる。

 イリスはまだ震えていた。


「少し休もうか」


 俺がそう言うと、ビクッと肩を竦ませ固まってしまった。

 初戦闘で腰を抜かし、俺に適切な支援を出来なかった。

 これは無理かな。

 イリスはもう戦闘出来ないかもしれない。

 この戦闘がトラウマになった可能性がある。


 イリスの状態を確認する為にも、休息して暫く様子を見る事にした。

 ストレージからコップと水を出して注ぐ。

 ギルドで購入した物で、PTで野営をする時用に購入しておいた物だ。

 

 イリスに水を注いだコップを差し出す。

 震えながら受け取り、ゴクゴクと飲み始める。

 緊張で喉が渇いていたのだろう、無理も無い。

 俺も水を飲み、森を眺めていた。


 暫くたって震えも治まったのか、イリスが俺に尋ねてくる。

 相変わらず青い顔だ。


「ご主人様の・・・わ・・・私は何も・・・何もでき・・・」


「そうだ」


 口が振るえている。

 泣き声なのか、語尾もハッキリもしない。

 

「あの・・・ご主人様のスキルは・・・魔物のものじゃないのです・・・か?」


「そうだ」


「まさか・・・ご主人様は・・・魔物・・・?」


 目が恐怖に満ちている。

 たぶん怖いのだろう・・・

 だが、ラーニングを使うと魔物と勘違いされるのか?


「いや、人間だよ。でないとギルドに登録できないだろ?」


「へ?あ・・・ああそうですね・・・でも・・・」


「なんだ?」


「人間が魔物のスキルを使うなんて聞いた・・・事がありません」


「俺には出来る、それだけだ。俺を信じろ」


 暴論だが命令にすれば抗えないだろう。


「は・・はあ」


 理解したようなしたくない様な顔をするイリス。

 それでもまだ目に恐怖を浮かべて思案している。

 まだ何かか言いたいようだ。

 イリスは、恐る恐る俺に意見してきた。


「モンスターとはいえ、あのような仕打ちは・・・酷いのでは?」


「戦場で酷いも何も無い。モンスターは殺しに掛かってくる。殺される前に殺すだ。それに殺す方法に卑怯もへったくれもないと思うが」


 俺の言葉に絶句するイリス。

 自分の甘さに赤面して、唇をかみ締める。

 まあ、イリスの気持ちも解らなくはない。

 でも、相手はモンスター、殺される前に殺さねばこっちが危ないのだから。


「言いたい事は解るが死ぬのはごめんだからな」


「・・・・・・はい」


 気を使い声を優しくして言った甲斐があったのか、気丈に立ち上がり頭を下げるイリス。


「申し訳御座いませんでしたご主人様。次はちゃんとお役に立ちます。文句も言いません。どうか見捨てないで下さい!どうか!」


「いや、次ちゃんとすれば良い」


 頭を上げたイリスの目には涙が溜まっていた。

 奴隷である以上、主に役立ってこそ。

 役立たずで捨てられた奴隷の運命はどうだったっけ?

 契約書に何か書いていたな。

 確か、酷い状況になると書いてあったような・・・

 イリスの嘆願はそういった事から来ているのだろう。


 次から頑張ると言うならトラウマもないだろう。

 戦闘を継続して、様子見かな。

 イリスが立ち直ったようなので次はコボルトを探す。


 コボルトはゴブリンとは違い群れて行動していない。

 犬なのに群れないところは変な話だが。


 森を進み、コボルトを見つけては1体づつ仕留めて行く。

 1体1なので苦戦はない。

 イリスも相手が1体なら何とか支援の魔法も掛けられた。


 俺がコボルトに向かうと『プロイテクション』を掛けれるようになる。

 コボルトとの戦闘をこなすほど、『ヒール』と『デフレクション』も適時掛けれるようになった。

 ふむ、必死さは仕方ないが、これで俺も安心できる。


 

 『プロイテクション』は、味方のDEFが上がり、防御力が100ほど加算される。

 『デフレクション』は、敵のDEFが半分になり、コボルト程度なら素手の当て身で、倒せる位だ。


 7体のコボルトを倒しきり、ドロップを拾い森を出る。

 途中ピクシーやウルフにも出会うが、難なく撃退できた。

 ピクシーの『マジックミサイル』も『プロイテクション』があるとありがたい。

 HPの減りが少なく、必ず当たってしまう『マジックミサイル』対策には十分だった。


 ギルドに戻り依頼の終了確認をする。


「また早いですね~ハヤトさん」


「確認を頼む」


「はい、お待ちください」


 フィリーネに依頼の完了を確認してもらい報酬を貰う。

 拾ったドロップも清算する。


「ちょと早いですが、ハヤトさんはもうEランクになります。次からはDランクも受注でき、迷宮にも行けます」


「迷宮もあるのか?」


「はい、Dランクからは迷宮での活動が許されます。迷宮での討伐内容とドロップ次第でランク査定もされますので安心して下さい」


「わかった」


 迷宮は明日でいいだろう。

 2件の依頼は午前中に終わったので、食事後も依頼をこなす。

 午後からは同じ討伐系の3件の依頼を受ける。


 イリスの支援は様になってきて戦闘にも慣れてきたようだ。

 宿に戻り装備の点検を済ませ、イリスを『鑑定』する。

 LVも上がり、最終的にはこうなった。


 【名前】イリス・ビュルクナー

 【LV】18

 【年齢】15才

 【種族】エルフ

 【状態値】HP36/36・MP51/51

 【攻・防】32/17

 【能力値】S11・V12・I17・A12・D15

 【スキル】風魔法LV2・水魔法LV2・神聖魔法LV3

 【固有スキル】精霊魔法

 【所持金】0G

 【装備】樫の木の杖MATK15/魔法のローブDEF5


 俺のステータス上昇と明らかに違う。

 そういえばダークエルフのアリスも低い数値だった。

 それにスキルLVの横には(?/?)が無い。

 俺の予想を確認する為にイリスに問いかける。


「イリス、スキルPも溜まっただろう?どれかLVを上げてみてくれ」


「え?スキルP・・・?ご主人様、スキルは自分でLVを上げる事などできませんが・・・」


「あ、そうかそうだな今の事は忘れてくれ」


「はぁ・・・わかりました」

 

 やはりステータスは自分で操作できるものでは無い様だ。

 この世界で俺は、かなり異常な存在だと確信する。

 何故かはまだ解らないが。


 今日もベットを別にして、眠りにつく。

 明日からは迷宮だ。

 何としても帰る手立てを掴むまで死ぬわけにはいかない。

 横に寝るイリスが、悲しそうに俺を見ているのにも気付かず深い眠りに落ちていった。

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