第一話 森
ピクシーの攻撃が来る。
俺は身構えて気を体に張り巡らせ、衝撃に耐える。
『マジックミサイル』が俺に当たり弾ける。
弾けた瞬間、眩い光が周囲を照らす。
スキルを放ち周囲が明るくなる瞬間が狙い目だ。
ピクシーの隙を突き、間近に迫って短剣を振るう。
ピクシーは真っ二つになって光の粒子となり消えていった。
ドロップは妖精の粉だ。
拾い上げて『ストレージ』に納める。
戦闘が終了しても危険が去った訳ではない。
直ぐに『索敵』で周りを確認する。
どうやら敵は今のところ居無いようだ。
俺は、そのまま森の中をゆっくりと進む。
行く当てもなく、行き先も定まらないまま俺はとにかく先へと進んでいる。
森を抜け、人里を探し俺の今居る状況を確認したいのだ。
進行方向に居る敵は出来るだけ倒し、Lvも上げている。
森を抜けるにはLvが高い方が安全だし、何よりも強くなっている実感が沸く。
暫く進み、日が落ち始めたので野営の準備に入る。
道中で拾う枯れ木を『ストレージ』から取り出し、『狐火』を使って焚き火を起こす。
兎の肉も『ストレージ』から取り出し、焚き火の側に挿して串焼きにする。
野営にも慣れてきた。
親父と一緒に山篭りと称してサバイバルもどきをしていた事が功を奏している。
『水鉄砲』を使い、短剣で削った木の器に向かって注ぎ水を飲む。
水の勢いはLv2だと殴られた程度の威力があるが、意識すれば弱めに出来た。
ラーニングによって取得したモンスターのスキルは役に立っている。
これがなかったら森の中で、脱水か栄養失調で死んでいただろう。
今までの戦闘で獲得できたスキルは幾つかある。
毎日夕食時になると必ずステータス画面とストレージのチェックを忘れない。
【名前】ハヤト・ウネハナ
【LV】14
【年齢】16才
【種族】人間
【状態値】HP106/294・MP56/261
【攻・防】442/153
【能力値】S57・V49・I58・A56・D57
【スキル】刀術LV5(0/6)・剣術LV1(0/2)・棒術LV3(0/4)・格闘術LV3(0/4)・身体強化LV1(0/2)・毒耐性LV1(0/2)・麻痺耐性LV1(0/2)・催眠耐性LV1(0/2)・索敵Lv1(0/2)・鑑定・ストレージ
【固有スキル】采華一刀流
【スキルP】53
【所持金】100G
【ラーニング】突進LV1(0/2)・噛み付きLV1(0/2)・毒針LV1(0/2)・鉄拳LV1(0/2)・マジックミサイルLV1(0/2)・スパイダーネットLV1(0/2)・水鉄砲LV3(0/4)・狐火LV2(0/3)・雷撃LV1(0/2)
【装備】短剣ATK10/羽織DEF2/袴DEF2
結構スキルは増えている。
剣術系は扱う武器で勝手に取得しているようだ。
拾った短剣を使ったら増えていたので確実だろう。
短剣はゴブリンを倒したときに手に入れた物だ。
身体強化は采華流柔術の影響か、気を意識して防御したときに取得出来ていた。
パッシブスキルなのか取得してから、力が常に漲っているのが解る。
索敵は身体強化で感覚が鋭利になったせいで、気配に敏感になった日に取得を確認した。
常時/任意に切り替えが出来、意識が無くとも何かあれば危険を察知できるので便利だ。
ラーニング関係は以外に面倒な事が解った。
モンスターのスキル攻撃を実際に受けなければならないのだ。
体に当たる必要は無いようだが、見るだけでは取得に至らない。
一度、モンスター同士の戦闘に出くわし、隠れて見ていたがステータス画面には反映されていなかった。
スキルは取得する時には一切スキルPを消費しない点がありがたい。
俺のLvが幾つまで上がるか解らない状況では、迂闊にスキルPを使ってしまう事が躊躇われる。
なので、今の所スキルPは温存している。
耐性スキルは解毒を行った時に付いたようだ。
芋虫のモンスターに触れた時、毒に掛かったようで、もう駄目かと思ったものだ。
あの時は焦った。
毒になり眩暈と疲労感が襲ってくる感覚は今でもゾッとする。
死を覚悟したが、『鑑定』で見つけた毒消し草に噛り付き事なきを得た。
それからは草木に『鑑定』を行い、痺れ草や眠り草を探して服用し、毒消しで解毒をした。
麻痺耐性や催眠耐性はこれで取得したのだ。
ステータス画面を眺めながら、【スキル】をタッチしてみる。
やはり何も起きない。
チュートリアルに出てきたスキルは、もう出す事が出来ない様だ。
ラーニングを勝手に取得させられたので、今更なのだが変更が効くか試したかった。
魔法を取得していれば、もう少しマシな野営が出来たのではないかと後悔しているから。
ステータス画面を閉じ、ストレージを確認する。
ストレージは目の前に水面のような膜が出てきて、その中に手を入れることで使える。
手を入れれば中のリストが頭に浮かび、取り出したい物を念じると手に掴むことが出来る。
倒したモンスターがドロップする物は全てストレージに入れた。
片っ端から突っ込んでいたにも拘らず、幾らでも入る。
ストレージは容量が無制限なのかもしれない。
後、入れたものは腐らないし、痛まないようだ。
初日に倒したラビットは、兎の肉を落とす。
これを入れてから数日経っているのに、未だに拾った時のまま新鮮なのだ。
ストレージには兎の肉を初め、狼の肉や蜘蛛の足、妖弧の毛皮などモンスターのドロップが多い。
後は見つけた薬草類に枯れ枝や、人間タイプが装備していた武具がある。
ゴブリンなどが装備していた物で、お世辞にも良い物ではないが。
一通り中を確認して、程よく焼けた兎の肉を頬張る。
癖が無い訳ではないが、食べるには問題ない。
塩気が無いのが頂けないが食べなければこの森を抜けれないだろう。
俺は暗くなって来た森で、索敵を常時にして眠りに着く。
今日も夜襲があるだろう。
最近は慣れてきて浅い眠りでも耐えられるようになってきている。
モンスターの襲撃を想定して、座ったまま眠りに付いた。
更に数日が過ぎ、森の置く深くまで来ている。
木々の間隔が狭くなり、太陽の光も届き難いのか薄ら暗い。
もう方向など解らない。
遭難しているのと同じだろう・・・だが生きて森を出る!
俺は必死に気を引き絞り森を進んでいく。
索敵にモンスターの気配を捕らえる。
『鑑定』で敵のステータスを確認する。
【名前】バウンディナイト
【LV】15
【状態値】HP1,524/1,524・MP750/750
【攻・防】154/300
【スキル】剣術LV4・三連撃LV3・火炎剣LV2
拙い、かなりの強敵だ。
身を隠しやり過す事を決め、木陰に隠れる。
バウンディナイトは何かを察知しているかのように、当たりを伺いながらこちらに向かってくる。
見付かれば戦闘は避けれない。
出来ればLvが上でスキルLvも高いモンスターは避けたい。
森を抜けるにしても安全マージンをちゃんと取っておかないと死は直ぐそこに来るだろう。
俺は息を殺してバウンディナイトが過ぎ去るのを待つ。
俺の隠れている木陰の近くを腐臭が漂う。
直ぐそこにまでバウンディナイトは来ている。
腐臭が強くなり、息が苦しい。
吐き気が喉を締め上げる。
尚も息を殺して気配を絶っていると、異様な風きり音が聞こえた。
咄嗟に身を沈めその場から離れる。
俺の隠れていた木が見事に切断され倒れていく。
見付かった!
もう逃げる事は出来そうに無い。
戦う決意をして構えを取る。
短剣を使う事も考えたが、剣術Lv1の付け焼刃では歯が立たないだろう。
ステータス画面を開き、格闘術をLV7まで一気に上げる。
躊躇していては殺される。
Lv7の効果が出たのか、相手の動きが手に取る様に解り、動きも良く見えるようになった。
バウンディナイトは剣を構える。
「来るか!」
必殺の一撃を放つバウンディナイト。
俺は後ろに下がり剣を避け、『スパイダーネット』をバウンディナイトの足元に放つ。
手の先から蜘蛛の糸が出て、絡み付き動きを鈍らせる。
糸で動きが鈍くなっても剣先は鋭い。
バウンディナイトの斬撃を交わしながら『狐火』を展開する。
周囲に10個の炎が揺らめき、10個全てが全方向からバウンディナイトに襲い掛かる。
炎が纏わりつき、バウンディナイトは体を燃え上がらせる。
それでもバウンディナイトは攻撃を繰り出してくる。
俺は避けながらも『雷撃』で追撃を掛け続ける。
格闘術LV7により攻撃は避けれるが、掠れば衝撃は大きい。
手足に傷を負いながらも『雷撃』で必死に抵抗する。
気付けばMPも底を付きそうだ。
最後の『雷撃』を放つと、ようやくバウンディナイトは光となって消えた。
息を荒げ、力を出し尽くした俺は、その場に座り込んだ。
MPが持たなければ、もう追撃は出来なかっただろう。
ギリギリの勝利だった。
暫く座り込み、息を整える。
楽になってきたので、ストレージから薬草を取り出し噛り付く。
受けた傷は徐々に塞がり始め、癒していく。
此処に居るのは危険。
突き進むにもMPが無い。
少し後戻りして昨日野営した場所で、早々に休息する。
此処からは慎重に進まないといけない。
俺は、浅い眠りにつきMPの回復に努めた。
あれから何度かバウンディナイトと遭遇しながら森を進む。
初戦のバウンディナイトととの戦闘を振り返り、ラーニングで得た攻撃スキルを上げてある。
自然系のスキルの重要性を感じたからだ。
【ラーニング】突進LV1(0/2)・噛み付きLV1(0/2)・毒針LV1(0/2)・鉄拳LV1(0/2)・マジックミサイルLV5(0/6)・スパイダーネットLV3(0/4)・水鉄砲LV5(0/5)・狐火LV5(0/6)・雷撃LV5(0/6)・三連撃LV3(0/4)・火炎剣LV2(0/3)・吸血の呪いLV1(0/2)・火炎LV2(0/3)・氷結LV2(0/3)・串刺しLV3(0/4)・ソニックブレイドLV3(0/4)
Lv20のブラッディナイトに出会ったときは肝が冷えたが、何とか乗り切った。
森の中心には、ナイト系のモンスターが多く剣技も幾つか取得したが、武器の無い身では意味が無い。
だから地水火風に属するスキルを上げている。
ゴーストも出没した。
物理攻撃が効かず、『狐火』や『火炎』をラーニングしていなければどうなっていたか。
返す返すも自然系スキルは重宝する。
あとスキルの威力はLV5にした途端、凄まじく強くなっている。
『狐火』などは最初の1個で低LVなら消滅させる事が出来る。
しかも纏える火の数は20個になった。
『雷撃』や水鉄砲は単体威力が増し、『雷撃』は雷の如く、『水鉄砲』は水カッターの如き威力だ。
俺は、何度も戦闘と撤退を繰り返し、ようやく森を抜ける所まで来た。
何故そう思うか?
木々の感覚が空き始め、モンスターが最初に出くわしたラビットを見るようになったからだ。
遠くに道も見える、だが慌ててはいけない。
この森で多くの事を学び、危険に対する用意周到さも身に染みて解ったから。
後一回の野営で道に辿り着ける位置に陣取り、野営を準備して英気を養う。
やっとこの森から出られる。
最後になるだろう何時ものステータス画面とストレージを確認する。
【名前】ハヤト・ウネハナ
【LV】24
【年齢】16才
【種族】人間
【状態値】HP581/623・MP243/518
【攻・防】895/319
【能力値】S90・V82・I91・A89・D90
【スキル】刀術LV5(0/6)・剣術LV1(0/2)・棒術LV3(0/4)・格闘術LV7(0/0)・身体強化LV5(0/6)・毒耐性LV1(0/2)・麻痺耐性LV1(0/2)・催眠耐性LV1(0/2)・索敵Lv3(0/4)・鑑定・ストレージ
【固有スキル】采華一刀流
【スキルP】27
【所持金】100G
【ラーニング】突進LV1(0/2)・噛み付きLV1(0/2)・毒針LV1(0/2)・鉄拳LV1(0/2)・マジックミサイルLV5(0/6)・スパイダーネットLV3(0/4)・水鉄砲LV5(0/5)・狐火LV5(0/6)・雷撃LV5(0/6)・三連撃LV3(0/4)・火炎剣LV2(0/3)・吸血の呪いLV1(0/2)・火炎LV5(0/6)・氷結LV5(0/6)・串刺しLV3(0/4)・ソニックブレイドLV3(0/4)
【装備】ショートソードATK21/羽織DEF2/袴DEF2
火炎をLV5に、氷結もLV5に上げる。
身体強化をLV5に索敵をLV3へと上げておく。
これでかなり充実したスキル内容になったと思う。
ストレージは相変わらず、今まで拾った物が沢山入っている。
確認の後、兎の肉を食べ、眠りに付く。
明日こそは森を抜ける!